9 / 55
第2章 帰依
一話 リハビリ
しおりを挟む
ーーあの死闘から一月余り。
ユキの身体の傷は、日常生活に支障が無いレベルにまで回復していた。
その間に狂座が攻めて来る事は無く、束の間ではあるが、一時の平穏を過ごしていた。
「それでは行ってきます」
ユキは右手に手籠を持ち、背後のアミに伝える。
「気をつけてね。でも、まだあまり無理はしない事」
日常生活に支障は無いとはいえ、まだまだ戦闘を行うには厳しい。
アミの心配をよそに、ユキは笑顔で振り向き返す。
「大丈夫ですよ。食糧を採ってくるだけですから。それに何時までも休んではいられませんよ。リハビリの意味も込めて、必要な事です」
「それはそうだけど……」
とはいえ、ユキの意見に一理有る事も確かだ。自分から何かをしたいという彼の考えを、尊重したい気持ちもある。
「じゃあ、あまり遅くならない様にね。いってらっしゃい」
少し迷っていたが、アミは笑顔でユキを送り出す事にした。
「はい。行ってきます」
ユキは笑顔で踵を返し、そっと家を後にし森へと向かうのだった。
ーーユキは森を少し歩いた先にある川へと向かう。
まだまだこの季節、寒さは厳しい。冬の山菜はそれ程多くない上、獣も冬眠中である事を踏まえると、採ってくるのはやはり川魚に限る。
川へと向かう途中、ユキは考えていた。当主直属部隊、アザミの強さを。
アザミが変に情けを掛けなければ、あの闘いは確実に自分が敗れていた事。
それに部隊というからには、アザミ以外にも強敵が存在する事は間違い無い。
今は平穏かも知れないけど、いずれ闘いは避けられない。
それにアザミや四死刀以上の力を持つとされるーー“冥王”と謂われる者。
冥王の復活だけは阻止せねばならない。
その為には、完全に闘える身体に戻るまで、力を蓄えておく事が最重要課題。
「……つっ!」
ユキはアザミとの闘いで負った腹部を押さえる。あれだけの傷、そう簡単には完治しないだろう。
「あと……もう少し」
誰にも聞こえる事無く、ユキはそう呟いていた。
ユキの身体の傷は、日常生活に支障が無いレベルにまで回復していた。
その間に狂座が攻めて来る事は無く、束の間ではあるが、一時の平穏を過ごしていた。
「それでは行ってきます」
ユキは右手に手籠を持ち、背後のアミに伝える。
「気をつけてね。でも、まだあまり無理はしない事」
日常生活に支障は無いとはいえ、まだまだ戦闘を行うには厳しい。
アミの心配をよそに、ユキは笑顔で振り向き返す。
「大丈夫ですよ。食糧を採ってくるだけですから。それに何時までも休んではいられませんよ。リハビリの意味も込めて、必要な事です」
「それはそうだけど……」
とはいえ、ユキの意見に一理有る事も確かだ。自分から何かをしたいという彼の考えを、尊重したい気持ちもある。
「じゃあ、あまり遅くならない様にね。いってらっしゃい」
少し迷っていたが、アミは笑顔でユキを送り出す事にした。
「はい。行ってきます」
ユキは笑顔で踵を返し、そっと家を後にし森へと向かうのだった。
ーーユキは森を少し歩いた先にある川へと向かう。
まだまだこの季節、寒さは厳しい。冬の山菜はそれ程多くない上、獣も冬眠中である事を踏まえると、採ってくるのはやはり川魚に限る。
川へと向かう途中、ユキは考えていた。当主直属部隊、アザミの強さを。
アザミが変に情けを掛けなければ、あの闘いは確実に自分が敗れていた事。
それに部隊というからには、アザミ以外にも強敵が存在する事は間違い無い。
今は平穏かも知れないけど、いずれ闘いは避けられない。
それにアザミや四死刀以上の力を持つとされるーー“冥王”と謂われる者。
冥王の復活だけは阻止せねばならない。
その為には、完全に闘える身体に戻るまで、力を蓄えておく事が最重要課題。
「……つっ!」
ユキはアザミとの闘いで負った腹部を押さえる。あれだけの傷、そう簡単には完治しないだろう。
「あと……もう少し」
誰にも聞こえる事無く、ユキはそう呟いていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる