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第2章 帰依

一話 リハビリ

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ーーあの死闘から一月余り。


ユキの身体の傷は、日常生活に支障が無いレベルにまで回復していた。


その間に狂座が攻めて来る事は無く、束の間ではあるが、一時の平穏を過ごしていた。


「それでは行ってきます」


ユキは右手に手籠を持ち、背後のアミに伝える。


「気をつけてね。でも、まだあまり無理はしない事」


日常生活に支障は無いとはいえ、まだまだ戦闘を行うには厳しい。


アミの心配をよそに、ユキは笑顔で振り向き返す。


「大丈夫ですよ。食糧を採ってくるだけですから。それに何時までも休んではいられませんよ。リハビリの意味も込めて、必要な事です」


「それはそうだけど……」


とはいえ、ユキの意見に一理有る事も確かだ。自分から何かをしたいという彼の考えを、尊重したい気持ちもある。


「じゃあ、あまり遅くならない様にね。いってらっしゃい」


少し迷っていたが、アミは笑顔でユキを送り出す事にした。


「はい。行ってきます」


ユキは笑顔で踵を返し、そっと家を後にし森へと向かうのだった。


ーーユキは森を少し歩いた先にある川へと向かう。


まだまだこの季節、寒さは厳しい。冬の山菜はそれ程多くない上、獣も冬眠中である事を踏まえると、採ってくるのはやはり川魚に限る。


川へと向かう途中、ユキは考えていた。当主直属部隊、アザミの強さを。


アザミが変に情けを掛けなければ、あの闘いは確実に自分が敗れていた事。


それに部隊というからには、アザミ以外にも強敵が存在する事は間違い無い。


今は平穏かも知れないけど、いずれ闘いは避けられない。


それにアザミや四死刀以上の力を持つとされるーー“冥王”と謂われる者。


冥王の復活だけは阻止せねばならない。


その為には、完全に闘える身体に戻るまで、力を蓄えておく事が最重要課題。


「……つっ!」


ユキはアザミとの闘いで負った腹部を押さえる。あれだけの傷、そう簡単には完治しないだろう。


「あと……もう少し」


誰にも聞こえる事無く、ユキはそう呟いていた。
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