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四の罪状

特別なる力

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――闇の仲介室内。少女はジュウベエを抱き抱えながら上機嫌の模様。


ジュウベエもまた、抗う事はせずその身を委ねていた。


「…………」


「う~ん……」


それとは対称的に、幸人と時雨の二人は資料を片手に神妙な面持ち。


琉月から二人へと渡された資料には少女の、コードネーム『悠莉』の情報が網羅されていた。


―――――――――――


※コードネーム『悠莉』


※本名 不明。


※年齢 十三才。


※位階級 執行部門S級エリミネーター(狂座三十三間堂 第十三位~No:13)


※保有異能 ???


※推定臨界突破レベル~現147パーセント――




「うん……確かに良い実績ではあるけど、次期SS級最有力候補と言うには、ちと次期早々過ぎない?」


一通り資料に目を通し、否定的な意見を口にしたのは時雨だ。


「確かに……な」


幸人も珍しく時雨と意見が一致している。彼も資料からの判断では時雨と同感だったのだろう。


数字や実績のみを取れば、S級には悠莉以上の者は多数存在している。


それらを差し置いて尚、何故この少女が次期SS級最有力候補として、琉月が二人を呼んでまで推薦したのか?


「では御言葉を返すようですが、御二人方は彼女位の年の頃はどうでしたでしょう?」


琉月はその理由を語り返す。その傍らには悠莉が、この話には興味が無いのか、ジュウベエと何やら楽しそうに密談の真っ最中だ。


「まあ、そりゃあ……ね」


「…………」


時雨は琉月の問いに言葉を濁す。幸人も同様。


彼等が悠莉位の年の頃には、S級処かエリミネーター、狂座に在籍していない可能性の方が高い。


それを考えると少女で在りながら、この歳でS級エリミネーター三十三間堂に名を列ねる悠莉が、如何に驚異的であるかを琉月は遠回しに言っているのだ。


しかしまだ不確定要素は有る。


「それにこの保有異能が不明ってとこがね……。何かヤバめの力なの?」


そう。一番肝心な項目が正に悠莉の持つ能力、それが不明な点もまた怪しい。


「まさか特異点とか!?」


一般的な後天性異能なのか、はたまた特異点と同様、先天性異能なのかを。


「彼女の力は……そのどちらでもありません」


しかし琉月はそのどちらでもない事を、何やら含みを以て答えていた。


「えっ!?」


「どういう事だ?」


二人の疑問の声は当然――


“隠している?”


いや隠す意味がない。ならば考えられる事は、悠莉という少女の持つ力は、そのどれにも属さない力だという事か。


「彼女は通常の異能者とも、御二人方特異点とも異なる、悠莉のみが持つ特別な力……とでも言いましょうか?」


琉月も例えを言いあぐねている感があるのは、上手く説明出来ないのだろう。


「実際見て頂いて、判断なさった方が早いと思われます……。悠莉?」


琉月はジュウベエと密談中の悠莉を、穏やかな口調で呼び掛ける。


「は~い」


悠莉はその呼び掛けにすぐ反応。少女の腕にはすっかり懐柔されたのか、だらしなく身体を伸ばしたジュウベエの姿が。


「くくっ……」


幸人から溢れた微笑。それがまたなんとも言えぬ、微笑ましい構図に見えたからだ。


「悠莉……これからお仕事です。大丈夫ですか?」


「うん全然オッケ~。楽勝だよ~」


二人の間で交わされる密約。それはまるで遊びにでも赴くようなノリの軽さ。


「え? 今からぁ!?」


時雨にとっては完全に予想外。というより彼にとっては、本来は酒席を設けるつもりだったのだから。


そこに何時も通りの依頼である。


「丁度良い依頼通達が一件有りますので……」


元よりそのつもりだったのか、琉月が別資料を数枚取り出していた。
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