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三の罪状

決着の定め

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それはまるで水風船に針を突き立てたかの様な――


“パァ-ン”


筆舌にし難い破裂音と共に、世良の膨張した五体は木っ端微塵に霧散していた。


豪華な室内は一瞬にして、ペンキをぶちまけたかのように、赤飛沫に染まる。


しかし時雨自身に血痕は届いていない。


恐らく時雨の周りを包む、赤い霧状が防御膜の役割を果たしているのだろう。


「汚ねぇ花火だ事……」


遺骸の欠片さえ残らず血痕となった“モノ”に、時雨は吐き捨てる様に呟いていた。


「しかしまあ、どんな屑でも血の色だけは等しく赤いのは皮肉だな……」


それは文字通りの皮肉。


どんな善人も悪人も、血の色だけは同じだと。


彼は一瞥する事もなく振り返る。


「さて、仕事も終わった事だし、俺は琉月ちゃんのとこに報告に行くからよ。後は適当にやってくれや」


時雨のそれは報告と言うよりは、早く琉月とのプライベートに持ち込みたいだけだろう。


両手をジーンズのポケットに突っ込みながら、小走りで雫の傍らを通り抜けようとした瞬間――


「あっ! そうだった」


不意に彼は動きを止め、横目で腕組みしたままの雫を見据える。


「今回も邪魔が入ったけどよ……いつかお前とは決着(けり)はつけてやるから」


それは再戦の約束。性格こそ正反対と云えど、似た者同士だからこその、決して御互いが譲れぬ天敵同士。


「フン……何時でも来い」


二人の決着の定め。それは雫もまた同じ。


「それじゃあな。さあて琉月ちゃんと……うひゃひゃ」


たが時雨にとっては、今はそっちの方が重要の模様。


彼は雫と同じく、まるで煙の様に一瞬でこの場から姿を消していた。


この場に息づく者は、雫とジュウベエのみ。


「それにしても変な奴だけど、面白い奴でもあったな」


臭気の充満する部屋内で、ジュウベエが改めて惨状を見渡す。


「しっかし凄ぇ力だな……。お前と同じSS級なだけあるわ」


呆れを通り越して、それはむしろ感心か。


「で、どうよ幸人? 次アイツと闘ったら、勝てそうか?」


ジュウベエはそう雫の左肩より、興味津々に聞きたてる。


見立てでは二人は、ほぼ五分五分。


「……あいつがどれ程強くなろうが、最後に勝つのは俺だ」


当然雫は己の勝利を信じて疑わない。それは時雨も同じだろう。


“でも認めてはいるんだな……”


ジュウベエが真っ先に感じた事がそれ。


同じ領域にあるからこそ、その力は認めた上で自分の方が強いと信じて疑わない。


二人の過去に何があったのかジュウベエも知らなかったが、今回久々に彼の激情を見た気がした事の方が重要だった。


“十年ぶり……か?”


「もう此処に用は無い。後は本部が処理するだろう。さあ帰るぞ」


そんなジュウベエの思考を他所に、雫もまた立ち去ろうとする。


彼の介添え役の仕事も終わったのだ。


「おっ……おう! て事で帰ったら飯な?」


「まだ食う気か……」


談笑もそこそこに、二人の姿もまた煙の様に其処から消えていったのだった。

















※三の罪状 “終”


~To Be Continued
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