30 / 69
三の罪状
ランクS依頼
しおりを挟む
「――うめぇっ!」
ガリガリボリボリの咀嚼音。
余程旨いのか、ジュウベエは歓喜の雄叫びを上げている。
よくもまあ毎日毎日、金のスプーンばかり飽きが来ないものだ。
「これぞ神の黄金比率!」
猫の嗜好と味覚は人間には理解出来ないが、それは御互い様だろう。
「ラララ入るよ入るよ何処までもぉ~」
訳の分からない鼻唄混じりにご機嫌のジュウベエは、人間に直せば相当な老猫ではあるが、その旺盛な食欲は止まる事を知らない。
“もうすっかり何時も通りか”
これは何時までも引き摺らない、ジュウベエの良い処なのだろう。見習うべきである。
――夕食時。何時も通りの風景。
何度目かのおかわりで無我夢中なジュウベエをよそに、幸人は新聞に目を通し、世間状況を把握中だ。
相変わらず明るい二ュースは少ない。
汚職だの殺人等、目を覆いたくなる出来事が、世界中で蔓延している。
それらは日々、減少処か増加の一方を辿っていた。
時々、狂座の存在意義が分からなくなってくる。
「はぁ……」
新聞記事の片隅の面には、『不審死相次ぐ。突然の窒息死』とあるが、思考中の幸人の目には止まらなかったようだ。
「ふぅ……満腹満腹」
すっかり平らげてご満悦のジュウベエは、幸人の元へとすり寄って来る。
腹八分処か、腹十ニ分にならないと気が済まないジュウベエを横目に、幸人は飼い主として不安になってきた。
“いずれ俊敏さの欠片も無い肥満猫に”
それは不味い。左肩が凝ってしまう。
「オレは簡単にゃ太りゃしねぇよ」
「……はい?」
心を読まれたのか、幸人が不意を突かれた様に固まる。
そしてジュウベエは、そのまま固まった主人の膝元へ飛び乗った。
「うっ!?」
ズシンとのし掛かる重みは、明らかに重くなっていく予感を実感する。
「それにきつくなるのは、オレじゃなくお前だし」
「こっ……こいつ」
間違ってはいないが、“その時はヨロシク”態度に、呆れてものが言えなかった。
それでも穏やかな一時だった。
「ああそうそう、依頼が来てたぜ」
しかしあっさりと破られる。ジュウベエの一言によって。
「……それを早く言えよ! 乗っかかる前に」
「黙らっしゃい! オレの食中食後の一時は、絶対不可侵のエタニティタイムなんだよ。神だろうが何だろうが邪魔はさせねぇ」
また何処ぞのアニメか何かで、影響を受けて来たのだろう。
多分“エタニティタイム”を『絶対時間』にかけているのだろうが、微妙に意味が違う語呂合わせ。
ジュウベエはアニメ鑑賞が趣味という奇特な猫だ。ある意味、人間よりも人間臭い。
「全く……」
幸人は呆れながら、重みのあるジュウベエを横に退かし、簡易机に向かいパソコンの主電源を入れた。
椅子に座り依頼ランクを確認しようとするが、どうも最近、気が乗らない。
「おおっ!!」
左肩に飛び乗って来たジュウベエが、目を丸くさせて声を上げた。やはり重くなっている気がしたが、そこは敢えて黙認が正しい。
液晶画面に表示されている依頼ランク。
「ランクS……こりゃあ大物取りだぜ!」
心なしかジュウベエの声が生き生きとしてきた。
“ランクS”
狂座の依頼ランクに於いて、ランクS以上はこれまでとは全く異なる意味合いを持つ。
ランクAまでは差はあれど、個人企業レベルの私怨依頼。
ランクSからは国家レベル。もはや個人でどうこうなる次元の問題では無い。
国家滅亡の危機的状況から、国家反逆の危険分子の消去掃討まで、ランクS依頼は様々な分野に渡る。
だが共通しているのは――
“桁外れの危険度と破格の報酬”
何故ならランクS以上の依頼金は――
国が支払うからだ。
ガリガリボリボリの咀嚼音。
余程旨いのか、ジュウベエは歓喜の雄叫びを上げている。
よくもまあ毎日毎日、金のスプーンばかり飽きが来ないものだ。
「これぞ神の黄金比率!」
猫の嗜好と味覚は人間には理解出来ないが、それは御互い様だろう。
「ラララ入るよ入るよ何処までもぉ~」
訳の分からない鼻唄混じりにご機嫌のジュウベエは、人間に直せば相当な老猫ではあるが、その旺盛な食欲は止まる事を知らない。
“もうすっかり何時も通りか”
これは何時までも引き摺らない、ジュウベエの良い処なのだろう。見習うべきである。
――夕食時。何時も通りの風景。
何度目かのおかわりで無我夢中なジュウベエをよそに、幸人は新聞に目を通し、世間状況を把握中だ。
相変わらず明るい二ュースは少ない。
汚職だの殺人等、目を覆いたくなる出来事が、世界中で蔓延している。
それらは日々、減少処か増加の一方を辿っていた。
時々、狂座の存在意義が分からなくなってくる。
「はぁ……」
新聞記事の片隅の面には、『不審死相次ぐ。突然の窒息死』とあるが、思考中の幸人の目には止まらなかったようだ。
「ふぅ……満腹満腹」
すっかり平らげてご満悦のジュウベエは、幸人の元へとすり寄って来る。
腹八分処か、腹十ニ分にならないと気が済まないジュウベエを横目に、幸人は飼い主として不安になってきた。
“いずれ俊敏さの欠片も無い肥満猫に”
それは不味い。左肩が凝ってしまう。
「オレは簡単にゃ太りゃしねぇよ」
「……はい?」
心を読まれたのか、幸人が不意を突かれた様に固まる。
そしてジュウベエは、そのまま固まった主人の膝元へ飛び乗った。
「うっ!?」
ズシンとのし掛かる重みは、明らかに重くなっていく予感を実感する。
「それにきつくなるのは、オレじゃなくお前だし」
「こっ……こいつ」
間違ってはいないが、“その時はヨロシク”態度に、呆れてものが言えなかった。
それでも穏やかな一時だった。
「ああそうそう、依頼が来てたぜ」
しかしあっさりと破られる。ジュウベエの一言によって。
「……それを早く言えよ! 乗っかかる前に」
「黙らっしゃい! オレの食中食後の一時は、絶対不可侵のエタニティタイムなんだよ。神だろうが何だろうが邪魔はさせねぇ」
また何処ぞのアニメか何かで、影響を受けて来たのだろう。
多分“エタニティタイム”を『絶対時間』にかけているのだろうが、微妙に意味が違う語呂合わせ。
ジュウベエはアニメ鑑賞が趣味という奇特な猫だ。ある意味、人間よりも人間臭い。
「全く……」
幸人は呆れながら、重みのあるジュウベエを横に退かし、簡易机に向かいパソコンの主電源を入れた。
椅子に座り依頼ランクを確認しようとするが、どうも最近、気が乗らない。
「おおっ!!」
左肩に飛び乗って来たジュウベエが、目を丸くさせて声を上げた。やはり重くなっている気がしたが、そこは敢えて黙認が正しい。
液晶画面に表示されている依頼ランク。
「ランクS……こりゃあ大物取りだぜ!」
心なしかジュウベエの声が生き生きとしてきた。
“ランクS”
狂座の依頼ランクに於いて、ランクS以上はこれまでとは全く異なる意味合いを持つ。
ランクAまでは差はあれど、個人企業レベルの私怨依頼。
ランクSからは国家レベル。もはや個人でどうこうなる次元の問題では無い。
国家滅亡の危機的状況から、国家反逆の危険分子の消去掃討まで、ランクS依頼は様々な分野に渡る。
だが共通しているのは――
“桁外れの危険度と破格の報酬”
何故ならランクS以上の依頼金は――
国が支払うからだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる