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三の罪状

ランクS依頼

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「――うめぇっ!」


ガリガリボリボリの咀嚼音。


余程旨いのか、ジュウベエは歓喜の雄叫びを上げている。


よくもまあ毎日毎日、金のスプーンばかり飽きが来ないものだ。


「これぞ神の黄金比率!」


猫の嗜好と味覚は人間には理解出来ないが、それは御互い様だろう。


「ラララ入るよ入るよ何処までもぉ~」


訳の分からない鼻唄混じりにご機嫌のジュウベエは、人間に直せば相当な老猫ではあるが、その旺盛な食欲は止まる事を知らない。


“もうすっかり何時も通りか”


これは何時までも引き摺らない、ジュウベエの良い処なのだろう。見習うべきである。


――夕食時。何時も通りの風景。


何度目かのおかわりで無我夢中なジュウベエをよそに、幸人は新聞に目を通し、世間状況を把握中だ。


相変わらず明るい二ュースは少ない。


汚職だの殺人等、目を覆いたくなる出来事が、世界中で蔓延している。


それらは日々、減少処か増加の一方を辿っていた。


時々、狂座の存在意義が分からなくなってくる。


「はぁ……」


新聞記事の片隅の面には、『不審死相次ぐ。突然の窒息死』とあるが、思考中の幸人の目には止まらなかったようだ。


「ふぅ……満腹満腹」


すっかり平らげてご満悦のジュウベエは、幸人の元へとすり寄って来る。


腹八分処か、腹十ニ分にならないと気が済まないジュウベエを横目に、幸人は飼い主として不安になってきた。


“いずれ俊敏さの欠片も無い肥満猫に”


それは不味い。左肩が凝ってしまう。


「オレは簡単にゃ太りゃしねぇよ」


「……はい?」


心を読まれたのか、幸人が不意を突かれた様に固まる。


そしてジュウベエは、そのまま固まった主人の膝元へ飛び乗った。


「うっ!?」


ズシンとのし掛かる重みは、明らかに重くなっていく予感を実感する。


「それにきつくなるのは、オレじゃなくお前だし」


「こっ……こいつ」


間違ってはいないが、“その時はヨロシク”態度に、呆れてものが言えなかった。


それでも穏やかな一時だった。


「ああそうそう、依頼が来てたぜ」


しかしあっさりと破られる。ジュウベエの一言によって。


「……それを早く言えよ! 乗っかかる前に」


「黙らっしゃい! オレの食中食後の一時は、絶対不可侵のエタニティタイムなんだよ。神だろうが何だろうが邪魔はさせねぇ」


また何処ぞのアニメか何かで、影響を受けて来たのだろう。


多分“エタニティタイム”を『絶対時間』にかけているのだろうが、微妙に意味が違う語呂合わせ。


ジュウベエはアニメ鑑賞が趣味という奇特な猫だ。ある意味、人間よりも人間臭い。


「全く……」


幸人は呆れながら、重みのあるジュウベエを横に退かし、簡易机に向かいパソコンの主電源を入れた。


椅子に座り依頼ランクを確認しようとするが、どうも最近、気が乗らない。


「おおっ!!」


左肩に飛び乗って来たジュウベエが、目を丸くさせて声を上げた。やはり重くなっている気がしたが、そこは敢えて黙認が正しい。


液晶画面に表示されている依頼ランク。


「ランクS……こりゃあ大物取りだぜ!」


心なしかジュウベエの声が生き生きとしてきた。


“ランクS”


狂座の依頼ランクに於いて、ランクS以上はこれまでとは全く異なる意味合いを持つ。


ランクAまでは差はあれど、個人企業レベルの私怨依頼。


ランクSからは国家レベル。もはや個人でどうこうなる次元の問題では無い。


国家滅亡の危機的状況から、国家反逆の危険分子の消去掃討まで、ランクS依頼は様々な分野に渡る。


だが共通しているのは――


“桁外れの危険度と破格の報酬”


何故ならランクS以上の依頼金は――

















国が支払うからだ。
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