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二の罪状
猫 対 犬
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勿論ジュウベエはその声に気付いているはずだが、金のスプーンの残り粕まで舐めきってから。
「なんだと!? このデカブツが!」
振り返り威嚇するが、金のスプーンに夢中の時間差は、やはり間抜けにしか見えない。
視線の先には、優雅な毛並みのゴールデンレトリバーが鎮座していた。毛色からアメリカ系だろう。
二人のやり取りは犬の目から見ても、さぞ滑稽に映っていたに違いない。物珍しそうに見詰めていた。
「犬ぶぜいにオレの何が分かる!」
ジュウベエは幸人の膝から飛び離れ、ゴールデンレトリバーの傍らまで近付き威嚇するが、その体格差は歴然だ。
“犬 VS 猫”
相容れぬ二つの種。その闘いの火蓋が、今きっておとされようとしていた。
体格の差で勝負の大方は、ゴールデンレトリバーの圧倒的有利。ジュウベエの勝機は体格の小柄さと、身軽さを活かした撹乱戦法のみ。
まずは猫パンチで牽制を試みて、相手の出方を伺う。それが脳内で一瞬の内に組み立てた、ジュウベエの戦法思考であった。
「おいおい落ち着けよ。猫は気が荒くていけねえ……」
「んだとぉっ!!」
ただ、闘争本能剥き出しにしてるのはジュウベエのみで、彼に戦闘意志は皆無。
「はいはい、そこまで」
その構図に微笑ましさの表情を浮かべた幸人が、二人を止めに入った。
「何故止める幸人! コイツはオレに喧嘩売ってんだぞ!」
「売ってねえって。てか無意味だし」
そのやり取りに思わず笑いが堪えきれない。本日は平和だ。
収まらないジュウベエだが、幸人の手により丸く収められた。つまり戦闘は強制終了。
「待てや、まだオレの闘いは終わってない」
漫画の見過ぎともいえる捨て台詞と共に、幸人の腕の中で地団駄を踏むジュウベエ。勿論その脚は虚しく空をきる。
「済まなかったね。うちのは見ての通り、非常に気性が荒い」
「気性が荒いだと! オレの何処がだ!?」
幸人は行儀良く座っているゴールデンレトリバーへ、飼い主として非礼を詫びるが、ジュウベエは相変わらずもがいてる。
「珍しいな……。アンタ、オレ達の言葉が理解出来るのか?」
ゴールデンレトリバーは物珍しそうに幸人を見据えていた。彼の興味対象は、既にジュウベエには無い。
幸人は瞳で肯定した。それで充分に伝わったようだ。
「少し羨ましいな。オレも御主人と言葉が交わせたら、と思う時があるよ」
「君は御主人とここに来たのかい?」
「ああ。散歩がてらに今買い物中。待ってる最中だけど、良いものが見れたよ」
「おいコラ、なにフレンドリーにしてんだよ!」
人と犬との言葉でのやり取り。不思議な光景だが、口を挟むジュウベエとの三つ巴すら、ごく自然な流れに見える。
動物の言語を完全に翻訳するのは、飼い主にとって永遠の夢の一つだ。だからこそ語りかけ、コミュニケーションを取ろうとするが、感情や思考までは理解出来ても、言語は理解出来ない。
彼等には飼い主の言葉が理解出来る。だが飼い主とお互いの言語で理解し合うのは、彼等にとってもその想いは同じなのかも知れない。
ただ端から見たらこの三人の行動は、相当変わって見えるのは間違いない。
店へ出入りする何名かの客が、微笑ましそうというより、怪訝そうに見て通っていたからだ。
「なんだと!? このデカブツが!」
振り返り威嚇するが、金のスプーンに夢中の時間差は、やはり間抜けにしか見えない。
視線の先には、優雅な毛並みのゴールデンレトリバーが鎮座していた。毛色からアメリカ系だろう。
二人のやり取りは犬の目から見ても、さぞ滑稽に映っていたに違いない。物珍しそうに見詰めていた。
「犬ぶぜいにオレの何が分かる!」
ジュウベエは幸人の膝から飛び離れ、ゴールデンレトリバーの傍らまで近付き威嚇するが、その体格差は歴然だ。
“犬 VS 猫”
相容れぬ二つの種。その闘いの火蓋が、今きっておとされようとしていた。
体格の差で勝負の大方は、ゴールデンレトリバーの圧倒的有利。ジュウベエの勝機は体格の小柄さと、身軽さを活かした撹乱戦法のみ。
まずは猫パンチで牽制を試みて、相手の出方を伺う。それが脳内で一瞬の内に組み立てた、ジュウベエの戦法思考であった。
「おいおい落ち着けよ。猫は気が荒くていけねえ……」
「んだとぉっ!!」
ただ、闘争本能剥き出しにしてるのはジュウベエのみで、彼に戦闘意志は皆無。
「はいはい、そこまで」
その構図に微笑ましさの表情を浮かべた幸人が、二人を止めに入った。
「何故止める幸人! コイツはオレに喧嘩売ってんだぞ!」
「売ってねえって。てか無意味だし」
そのやり取りに思わず笑いが堪えきれない。本日は平和だ。
収まらないジュウベエだが、幸人の手により丸く収められた。つまり戦闘は強制終了。
「待てや、まだオレの闘いは終わってない」
漫画の見過ぎともいえる捨て台詞と共に、幸人の腕の中で地団駄を踏むジュウベエ。勿論その脚は虚しく空をきる。
「済まなかったね。うちのは見ての通り、非常に気性が荒い」
「気性が荒いだと! オレの何処がだ!?」
幸人は行儀良く座っているゴールデンレトリバーへ、飼い主として非礼を詫びるが、ジュウベエは相変わらずもがいてる。
「珍しいな……。アンタ、オレ達の言葉が理解出来るのか?」
ゴールデンレトリバーは物珍しそうに幸人を見据えていた。彼の興味対象は、既にジュウベエには無い。
幸人は瞳で肯定した。それで充分に伝わったようだ。
「少し羨ましいな。オレも御主人と言葉が交わせたら、と思う時があるよ」
「君は御主人とここに来たのかい?」
「ああ。散歩がてらに今買い物中。待ってる最中だけど、良いものが見れたよ」
「おいコラ、なにフレンドリーにしてんだよ!」
人と犬との言葉でのやり取り。不思議な光景だが、口を挟むジュウベエとの三つ巴すら、ごく自然な流れに見える。
動物の言語を完全に翻訳するのは、飼い主にとって永遠の夢の一つだ。だからこそ語りかけ、コミュニケーションを取ろうとするが、感情や思考までは理解出来ても、言語は理解出来ない。
彼等には飼い主の言葉が理解出来る。だが飼い主とお互いの言語で理解し合うのは、彼等にとってもその想いは同じなのかも知れない。
ただ端から見たらこの三人の行動は、相当変わって見えるのは間違いない。
店へ出入りする何名かの客が、微笑ましそうというより、怪訝そうに見て通っていたからだ。
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