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異世界初の人類
対スプリットボア
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私の呼びかけにローブを着た人間が振り返る。
「助けてください。あれは私たちの手に負えないのです」
女性の声。
うん、助けようか。
冗談は置いておいて、先ほどからすごく良い匂いが立ち込めているのだ。
それは尻を焼かれた猪からのようだ。
久しぶりの肉、肉なのだ。
こちらの世界に飛んでからは肉なんて食べてない。
飴と木の実だけだからな。
美味かったけど。
私は彼らの近くへと行く。
スプリットボアは突然現れた私を見て警戒しているようだ。
軽装の剣士が私の横に立つ。
先ほどのローブの女性はその後ろへと移動。
もう一人のローブの人間は先ほど吹き飛ばされた重戦士の横で座り込んでいる。
お、もしかして回復魔法か?
私はチラ見しながらそれでもスプリットボアから目を離さない。
あっ、そういえば素材ってどうなっているんだろう。
私は横に立つ剣士へと尋ねた。
「なあ、あれって素材取れるの?」
何って言るんだこいつみたいな目で見られる。
そんなに可笑しなこと聞いたかな?
私の問いにローブの女性が答えた。
「牙はナイフの材料に、皮は頑丈な革鎧などに、肉は美味しいらしいです。なるべく大きい個体の方が美味しいということです」
うむ。
2m近いのだ美味いだろう。
「下がっていて」
私は数歩前に出る。
それが合図になったのかスプリットボアに殺気がこもる。
同時に突っ込んできた。
私も前に走る。
リークヴァメタロを愛刀に纏わりつかせる。
多分愛刀で斬ったら折れるだろうから。
それにリークヴァメタロの希少性のせいだ。
あまり知らない相手に性能を見られたくない。狙われたらたまらないからなぁ。
間合い1m。
「なっ、分身だと……」
スプリットボアが二頭になった。左右真逆の動き。
わたしは咄嗟に攻撃を躱し、スプリットボアの後ろに回る。片方のスプリットボアは木の方へ突進する。
もう一頭は急ブレーキをかけてこちらに向き直った。
木の倒れる音。
木に向かったスプリットボアは……木を蹴り飛ばしこちらに飛んでくる。
さ、三角飛び……。
私は慌ててその場を飛びのく。
スプリットボアは私のいた場所に確実に着地した。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
分身じゃない……。
スプリットボア、まさか名前の通り本当に分裂するのか……。
私はスプリットボアをじっくりと観察する。
大きさが半分になっていた。
あー、分裂するんだ。
ちょっと待て。もしかして分裂すると味が落ちる?
私はローブの女性を見た。
私の言いたいことを察したらしいローブの女性は黙ってうなずく。
先手必勝。
私は流派独特の業、流動を使い一気にスプリットボアとの間合いを詰め、目に愛刀を叩き込んだ。
フゴッ
リークヴァメタロを纏った愛刀はスプリットボアの目から容易く脳を貫く。
ビクっと身体を震わせ猪の重量が愛刀と私にのしかかった。
すぐに愛刀を引き抜きもう一頭に対峙する。
残った一頭は……逃げた。
ちくしょう。
「すまない、助かった」
軽装の剣士が声をかけてきた。
まだ若い男で10代くらいだろうか。
「いや、かまわんよ。それより重装の方は大丈夫なのかい」
私の言葉に男は治療中と思われる重装備の方に目を向ける。
ゆっくりとだが動いている。
「ああ、いま仲間が治療中だから大丈夫だ。礼をしたい。いま手持ちが銀貨数枚しかないから町に帰ったら貯金を下ろして払おうと思う。
よければ町まで同行してくれないか?」
男の言葉に黙って頷いた。
てか、現地の人の道案内を見つけた。
実に好都合。
私は必要以上の言葉は発しないようにしていた。
だって余計なぼろは出したくない。
下手に話して余計な詮索をされると面倒だ。
それにこの人間たちが良い人間ではない可能性も無いわけでは無いしなぁ。
ついていくけどね。
私はスプリットボアへと近づく。スプリットボアのそばには親指大の魔晶石が転がっていた。
ゴブリンより大分大きいな。
これが強さの差なのかなぁ。
「あの、解体はされないのですか」
私が魔晶石をしげしげと見ているとローブの女性が声をかけてきた。
年のころは先ほどの男と大して変わらない。
眼つきも一般の女性というところか。
「このスプリットボアは倒されたあなたの物ですよ」
そうか、割り込んで倒したら自分の物になるのか……。
テンプレだな。
「いや、解体の仕方がなぁ……。半分あげるから解体してくれないか?」
正直言うと猪の解体の仕方は分かる。
ラノベを書くのに猟師について解体の仕方を勉強したからなぁ。
問題は、この世界のスプリットボアと元の世界の猪の構造がどう違うかなんだよな。
それにどこが素材になるのか正直分からん。
間違えたらもったいないし。
「いいんですか!?」
突然明るい声を出す女性。
話しを聞くと冒険者になってゴブリン退治に来て数日。
二匹のゴブリンしか退治できずこのままでは赤字だった時にスプリットボアと出会ったとのこと。
まあ、二匹じゃあね。
ということはゴブリンの魔晶石はそれほど高くはないということか。
スプリットボア半分と引き換えに色々と教えてもらおう。
テンプレテンプレ。
「助けてください。あれは私たちの手に負えないのです」
女性の声。
うん、助けようか。
冗談は置いておいて、先ほどからすごく良い匂いが立ち込めているのだ。
それは尻を焼かれた猪からのようだ。
久しぶりの肉、肉なのだ。
こちらの世界に飛んでからは肉なんて食べてない。
飴と木の実だけだからな。
美味かったけど。
私は彼らの近くへと行く。
スプリットボアは突然現れた私を見て警戒しているようだ。
軽装の剣士が私の横に立つ。
先ほどのローブの女性はその後ろへと移動。
もう一人のローブの人間は先ほど吹き飛ばされた重戦士の横で座り込んでいる。
お、もしかして回復魔法か?
私はチラ見しながらそれでもスプリットボアから目を離さない。
あっ、そういえば素材ってどうなっているんだろう。
私は横に立つ剣士へと尋ねた。
「なあ、あれって素材取れるの?」
何って言るんだこいつみたいな目で見られる。
そんなに可笑しなこと聞いたかな?
私の問いにローブの女性が答えた。
「牙はナイフの材料に、皮は頑丈な革鎧などに、肉は美味しいらしいです。なるべく大きい個体の方が美味しいということです」
うむ。
2m近いのだ美味いだろう。
「下がっていて」
私は数歩前に出る。
それが合図になったのかスプリットボアに殺気がこもる。
同時に突っ込んできた。
私も前に走る。
リークヴァメタロを愛刀に纏わりつかせる。
多分愛刀で斬ったら折れるだろうから。
それにリークヴァメタロの希少性のせいだ。
あまり知らない相手に性能を見られたくない。狙われたらたまらないからなぁ。
間合い1m。
「なっ、分身だと……」
スプリットボアが二頭になった。左右真逆の動き。
わたしは咄嗟に攻撃を躱し、スプリットボアの後ろに回る。片方のスプリットボアは木の方へ突進する。
もう一頭は急ブレーキをかけてこちらに向き直った。
木の倒れる音。
木に向かったスプリットボアは……木を蹴り飛ばしこちらに飛んでくる。
さ、三角飛び……。
私は慌ててその場を飛びのく。
スプリットボアは私のいた場所に確実に着地した。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
分身じゃない……。
スプリットボア、まさか名前の通り本当に分裂するのか……。
私はスプリットボアをじっくりと観察する。
大きさが半分になっていた。
あー、分裂するんだ。
ちょっと待て。もしかして分裂すると味が落ちる?
私はローブの女性を見た。
私の言いたいことを察したらしいローブの女性は黙ってうなずく。
先手必勝。
私は流派独特の業、流動を使い一気にスプリットボアとの間合いを詰め、目に愛刀を叩き込んだ。
フゴッ
リークヴァメタロを纏った愛刀はスプリットボアの目から容易く脳を貫く。
ビクっと身体を震わせ猪の重量が愛刀と私にのしかかった。
すぐに愛刀を引き抜きもう一頭に対峙する。
残った一頭は……逃げた。
ちくしょう。
「すまない、助かった」
軽装の剣士が声をかけてきた。
まだ若い男で10代くらいだろうか。
「いや、かまわんよ。それより重装の方は大丈夫なのかい」
私の言葉に男は治療中と思われる重装備の方に目を向ける。
ゆっくりとだが動いている。
「ああ、いま仲間が治療中だから大丈夫だ。礼をしたい。いま手持ちが銀貨数枚しかないから町に帰ったら貯金を下ろして払おうと思う。
よければ町まで同行してくれないか?」
男の言葉に黙って頷いた。
てか、現地の人の道案内を見つけた。
実に好都合。
私は必要以上の言葉は発しないようにしていた。
だって余計なぼろは出したくない。
下手に話して余計な詮索をされると面倒だ。
それにこの人間たちが良い人間ではない可能性も無いわけでは無いしなぁ。
ついていくけどね。
私はスプリットボアへと近づく。スプリットボアのそばには親指大の魔晶石が転がっていた。
ゴブリンより大分大きいな。
これが強さの差なのかなぁ。
「あの、解体はされないのですか」
私が魔晶石をしげしげと見ているとローブの女性が声をかけてきた。
年のころは先ほどの男と大して変わらない。
眼つきも一般の女性というところか。
「このスプリットボアは倒されたあなたの物ですよ」
そうか、割り込んで倒したら自分の物になるのか……。
テンプレだな。
「いや、解体の仕方がなぁ……。半分あげるから解体してくれないか?」
正直言うと猪の解体の仕方は分かる。
ラノベを書くのに猟師について解体の仕方を勉強したからなぁ。
問題は、この世界のスプリットボアと元の世界の猪の構造がどう違うかなんだよな。
それにどこが素材になるのか正直分からん。
間違えたらもったいないし。
「いいんですか!?」
突然明るい声を出す女性。
話しを聞くと冒険者になってゴブリン退治に来て数日。
二匹のゴブリンしか退治できずこのままでは赤字だった時にスプリットボアと出会ったとのこと。
まあ、二匹じゃあね。
ということはゴブリンの魔晶石はそれほど高くはないということか。
スプリットボア半分と引き換えに色々と教えてもらおう。
テンプレテンプレ。
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