上 下
18 / 56

可愛いは正義

しおりを挟む
2013年1月21日
昼休み。
3階の屋上に繋がる階段の踊り場。
陽の光が程よく差し込むここは、冬でも中々心地よく、未来と琉空は専らそこでランチタイムを過ごしていた。

「で、どうだったの?合同レッスン」

怖い先輩いた?
と瞳を輝かせ聞いてくる琉空に、未来はお弁当の卵焼きを飲み込みこんだ。

「いないよ。皆優しくしてくれたし」

昨日の合同レッスンの事を思い出しながら未来はそう答えた。
大和に紹介された海斗達しかり、同じグループになったAクラスの先輩達も皆いい人そうな人ばかりだった。

「ふ~ん。な~んだ、つまんない。たまには虐められればいいのに」

至極残念そうにそんな台詞を吐く琉空に、未来は顔を顰めた。
友達なら普通虐められない事を願うものだろう。

「何それ、ひどっ。でも残念でしたぁ。僕は虐められないよ」
「へ~、それって気付いてないだけじゃない?お前が鈍感で」

琉空の悪態に負ける未来ではなかったが、琉空も大人しく引き下がる気はなかった。

「はははっ。それもあるかも。でも一番の理由は違いま~す」

鈍感という琉空のフレーズに、未来は自分でも確かにその節はあると感じていたので思わず笑ってしまうが、しかし正解の答えではない。

「…何だよ、一番の理由って」

琉空は何となく、その理由を聞くのに嫌な予感を感じながらも、何故かそう投げかけてしまった。

「え~、そんなの決まってるじゃん?僕が可愛いからにさ」

したり顔を浮かべペットボトルのお茶を飲む未来に、やはり聞かなければ良かったと琉空は口端を引き攣らせた。



※※※


未来と琉空が学校でランチタイムをしているのと同時刻。
オリバーエンターテインメント事務所の談話室では、デパ地下のテイクアウトをテーブルに広げ、海斗・旬・斗真の三人が会食していた。
若い男三人が何故こんな場所で会食などしているかと言えば、忙しい斗真は2人とランチする時間も最近ではなく、また店にいけばたちまち人だかりになってしまう為ここを選んだのだ。

「も~っ、めちゃめちゃ可愛かったよねっ?未來。ね?旬君っ」
「え、あぁ、うん。そうだな」

相変わらずテンション高く、海斗は今日も未来を絶賛していた。
そんな海斗に同意を求められた旬は大人しく肯定するも、当たり前に彼の様なテンションはない。

「ふ~ん、そうなんだ。そんなに可愛いなら俺も見てみたいなぁ~。今度レッスン覗きにいこっかな」

海斗の浮かれように興味をそそられた斗真がそう言うと、瞳をキラキラと輝かせ海斗は身を乗り出した。

「来なよ来なよっ。本当に超可愛いから。見に来る価値あるよ~」
「え~、いや、まぁ確かに可愛いけどさ。でも別にわざわざ見に行く程ではないと思うけど…」

日々忙しい毎日をおくる斗真。
そんな彼の貴重な時間を割いてまで行く必要はないと旬は思う。

「そうなの?でも結構注目されてるっぽいよ?ほら、週刊紙でも取り上げられてるし」

斗真が何気なく眺めていた週刊誌。
なんともタイムリーな事に、たまたま未来の記事が載っていて、斗真はそのページをひろげ2人に見せた。

「あ、本当だっ。ってえっ?これ明日発売されるやつじゃんっ」

事務所の談話室には所属タレントが関わる様々な雑誌が置かれていて、中には未発売の物もある。
海斗は斗真から雑誌を奪い表紙を確認すると、そこには未発売を知らせる印と日付が書かれていた。
未来の話題は中々に大きな見出しで載っているので、きっと彼は明日至る所で騒ぎ立てられるだろう。
大丈夫かな、とそんな未来の事を海斗は心配に思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!? ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。 「お父様とお母様本当に仲がいいね」 「良すぎて目の毒だ」 ーーーーーーーーーーー 「僕達の子ども達本当に可愛い!!」 「ゆっくりと見守って上げよう」 偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

処理中です...