中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

8 れずびあんテストその一失格

チョコちゃんから出された「れずびあんテストその一」は、かなりの難題だ。

僕は男だし、れずびあんの相手にしたいのが男って由々しき問題だと言うチョコちゃんを、笑って見逃していた能天気ぶりが恨めしい。

『僕は男だよ』と言ったらチョコちゃんは『考えたらそうだよね』みたいな答え方をしたんだっけ。考えるまでもなく男なんだけど、あの時はメイクして変身していたから、チョコちゃんも『れずびあんの相手にしたい』と言ったんだと思う。

ふふ、おかしなやつ。

スマホの画像を確認する。
僕はやっぱりナルシストかな。チョコちゃんと写っていても自分の方にだけ目が行く。可愛い。見直してみると胸が奮える。

誤解されたくない。ニューハーフとかでは決してない。変身願望だ。全く違う自分になってみたかった。化粧は似合うんじゃないかと思っていた。あのMM先輩におかしな真似をされたからではない。その前からずっと思っていたんだ。

でも、女の子になりたいわけではない。

僕は男のまま生きていきたい。

男には恋人の役割は似合わないとか荷が重いとかナイスな恋人ではないとか……チョコちゃんの十四才の人生で観察して得た思いに同調してしまったけど、迂闊だった。

僕は、できればナイスな恋人になりたい。可愛い女の子と、可愛いだけでなく真面目で賢い女の子と、素敵な恋愛をしたい。ぶっ飛んだ夢想ではなく、現実的な範囲で。

チョコちゃんは、笑うだろうな。その現実的ってのが、厄介だって。現実的範囲ってどうせ狭いでしょとか、現実的範囲って夢が見れないとか、言ってくるような予想がたつ。

何もチョコちゃんの反応に左右される必要はないんだけど、僕はメイクされている間、ずっとチョコちゃんに進んで支配されて自らマインド・コントロールされてしまっているのかもしれない。

でもね、チョコちゃんとキスは無理。
僕はまだレズビアンにはなれない。
男だし……