7 / 10
第七話 姉妹
しおりを挟む痩せた影に駆け寄って声をかけた。
「お姉ちゃん。お姉ちゃんよね……」
振り返る顔に見覚えがある。
「私に妹はいないけど」
長い髪の毛に隠れて顔の半分は見えにくいけど、間違いない。
「私を忘れたの。お姉ちゃんは長いこと意識不明で、私もたまには面会に行ったけど……お姉ちゃん……お姉ちゃんは金属バットを持って復讐してくれたのに、ごめんね。私、お姉ちゃんの役に立てなくて」
「復讐……」
「そうよ。私も思い出したくないけれど、お姉ちゃんは私のためにレイプ犯に復讐してくれたのよ」
「復讐……」
「お姉ちゃんに感謝してたのに、お礼も言えなくて」
「私があなたのために復讐したの」
「そうよ。私のために……有り難う、お姉ちゃん」
淡いブルーストライプの病院服の上下に茶色の院内スリッパを履いている姉の、痩せた腕を掴む。
「記憶が混濁している。あなたのために復讐したとして、私はそれからどうしたの」
真正面から顔を見た。生気のない青白い顔だが紛れもなく姉だ。
「お姉ちゃん、ジュダス教から悪魔の輪廻教会に改宗したよね。多分そのあと直ぐに震災で……」
地割れで建物自体が三十メートル落下した恐ろしい事件だった。
「やっぱりそうなの。で、あんたは何故ここにいるの」
「バス事故で記憶が飛んで……」
「お父さんとお母さんは……」
「あの災害でお姉ちゃんが意識不明で救助されてから、二人ともすっかり口を利かなくなって。お姉ちゃん以外に助かった人はいなかったからお姉ちゃんは運が良かった方なのよ。でも、こんなところで再会するなんて……互いに大した運でもなかったか」
間隅 李阿羅の僕のようになったのは、李阿羅が金銭的に恵まれたクラスメートで向こうの方から近づいてきたからだった。
私はレイプ事件の被害者として人生終わったも同じでストレス溜まっていたから、李阿羅に誘われた学校帰りのカラオケはストレス解消になるし、李阿羅も悪いことばかりをしていたわけではなかったから何となくつるんでいたけれど、李阿羅が仲間に入れたがったもう一人のクラスメートとの間で問題を起こしてからは、ギクシャクするようになった。
だって……
集団レイプだと聞いたから
「そうね。私は長期入院で記憶混濁してるから整理したいのだけど、金属バットで闇討ちしたのはあんたのためだったと言うのね。自分のことのように夢を見ていたのよ」
間隅李阿羅のお兄さんのクラスメートが大怪我したから、一緒に見舞に行こうと言われて病院についていったことがある。
「長期間の睡眠障害かな。お姉ちゃんは事実と違うことを夢の中で経験していたのかもね」
包帯に巻かれた男子先輩のベッドの前で、李阿羅が何かを落として私がそれを拾いながら、お辞儀をしているみたいに見えるかもと思ったっけ。
「まあ、夢のほとんどは現実とは違うもの。仕方ないけど、あんたと会って事実確認できたのは良かったのかな」
その逆パターンもあった。退院したその先輩が私の前で腰を折り曲げて頭を下げるような素振りを見せた。李阿羅がスマホで撮影しているみたいだったけど、メール来てたからと誤魔化されて確認まではしなかった。
「そうだね。良かったんだよ。だって、お父さんとお母さんは生きてるよ。心配しているはずだから、どうしても謎を解いて戻らなければ。ね、二人で一緒に戻ろう」
「そうだね。一緒に戻ろう。そのために会わせてもらったのかもしれない」
間隅李阿羅の悪巧みはあいつのお兄さんのグループを使うことだったから、内情はよく知らないけれど、もしもあのレイプ事件が李阿羅の画策したことだったのなら許せない。
お姉ちゃんは金属バットで復讐をしてくれたのに
もしかしたらわたしが相手に謝ったかのような
或いは相手がわたしに謝ったかのような
フェイク動画とかを作成されていたりして……
あの時、冗談を言われて私の顔は笑っていた
フェイク動画とか作られていたら不味い
ううん、単なる妄想よ、そんなことする訳が
でも、妄想がもしも本当なら……
間隅李阿羅を許せない
「お姉ちゃんが金属バットで襲った相手のこと、どうやってわかったの」
「そんなグループがそうそういるものではないじゃない。だから目星をつけて接近して吐かせたのよ。間隅のグループに。あんたを襲わせたのはあいつの妹よ。間隅李阿羅ったっけ。私はそいつをやり損ねたのだけが心残りなのよね」
「お姉ちゃん……ううっ……私はさっきまで、その子と一緒にいた……」
紙切れが飛んできた。私の顔に張り付く。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる