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第二章 赤嶺怜の日記
1997年1月8日(水曜日)可視光線をポキポキと
しおりを挟む夢で目覚める。
父に「テナントビルの空きがあるが、輸入雑貨でも商ってみるか」と勧められる。
負荷の大任への一歩か。
自分に商才があるとは思えないが、信頼できるパートナーがいれば任せることだってできる。
「前向きに検討してみる」
政治家みたいだと自嘲する。
父親の薦めで商売を始められるのは幸運だ。私はその幸運があり、世の中にはやる気はあってもそんな幸運がなくて商才を伸ばしかねている者がいるだろう。でこぼこコンビがタッグを組めば、綺麗な形ができる。
しかし、相手がいない。
俯いたら「ズズッ」と目の荒い布の摩擦音が鼓膜をざらつかせ自分が傾いた角度よりも傾げている。
何処かずれてしまったようだ。
まるで意識と肉体が分離したように揺れている。
古い友人から聞いた幽体離脱の体験談とは違うようだ。何とか合体を試みようと焦って一歩踏み出したら、身体の方も前進した。
ウォーター&オイルか……
まるで二人羽織りを演じる違和感。
もう一歩もう一歩と進むに連れて、ロドリーゴのハープではないが、不協和音を奏で、可視光線をポキポキと不規則に折り曲げてゆく感覚。
目眩。
それも、アンダンテでカンタービレで、ダリの時計の歪でシュールな時空間で錆びついたアンドロイドのようにぎこちなく……
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