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第二章 赤嶺怜の日記

      僕たちのインダクション2

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O-1……認めてもらえなかったらどうなるの。

自由を求める思考回路を
断たれてしまうんじゃないかな
従順な観賞用動物になるのさ
金魚と同じ

果たして金魚が従順かどうか
わからないけど

金魚は水槽から出られない
僕たちも同じだ
出られないんだ
この世の有り様からは

大人びた目で口許に皮肉を貼る O-1

僕たちはきっと 
実技試験の真っ最中なんだ
知らないうちに点数をつけられて
落ちこぼれたら排除される

どうして……

純粋な魂は美しい
だからその遺伝子は守られる
穢れた魂は悪を伝染させる
もしもこの世が水槽なら
秩序を壊す金魚はいらないってことだよ  

悪はいらないよ

僕たちも
悪の方に選り分けられる
悪夢だ
しかも、目覚めることのできない 
永遠の夢を見ている者にとっては
悪夢は現実を超えるんだ
それは僕たち自身の創った地獄
怖がらなくて良いんだ
この水槽の中から出られないんだから

嫌だ
そんな夢は見たくない

僕たちは毎晩眠って
朝が来れば目覚めるけど
目覚める度に確実に死は近づいて
目覚めた世界はいつも眠る前の続きだ
僕たちは逃れることはできないんだ
生きているうちに見る夢に
醒めない夢はないけれど
逃れることのできない現実こそ
本物の悪夢なのかもしれない

幼いままの姿で仮想空間に生息する O-1は
この世に
無駄な人生や無価値な魂があるとしたら
それは個人的な欲望のままに
悪を行う生き方のことだ
と、眼を伏せた

もしも私が神様だったら
悪が芽吹いた矢先に摘み取るのに

それじゃあ神様とは言えないよ 
人間は悔い改めることのできる生き物だ
それを知っていながら
その機会を待たずに摘み取るとしたら
人間に自由意志を認めないことになる

自由意志って何なの
そんなものが本当にあるの
自由に生きることができた試しはないよ

あるからこそ
僕たちは互いを認識し合えたんじゃないか
もう、考えるのはよそう
どうせ死刑を宣告されて
生まれてきたんだ
行き着く先を回避しながら
考えたって仕方ない
僕たちは……

なに、何なの……行き着く先って……

僕たちは
滅びに向かっている



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