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10) ステルメルメルの涙
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メルメルったら
溜め息につく溜め息で
マリーをうんざりさせるのね
「だからぁ、ピスカレーナ・ナカミーラ伯爵令嬢のことは、抹殺してよぉん。ねぇぇ」
「その令嬢が第一皇子エルブレストを唆して人類絶滅の危機をもたらすと言うのか。ハルマゲドンはまだ遠いものと思うておったが、我が時代に実現するとは……おお、神のご意志はかくも奥深く慈愛に満ちたものか……」
なに言ってんのよ
あんたも滅ぶのよ
悪人だけを滅ぼす慈愛なんて
甘いものじゃないの
自分は助かるみたいに
考えてンじゃないわよ
「ね、メルメルたぁん。マリー、滅びたくなぁい。指輪買ってぇ。ブレスレットもぉ」
こうなったら
豚の鼻輪でも買わせるわよ
「よしよし、マリーや。もう少しその占い師の話を聞かせてくれるかな。名前は何と言った」
「あのねぇ、游弧芳邑って。今、ここに呼び出すぅ」
「何と、直ぐに来れると言うのか」
「うん。指輪とブレスレットと首飾りもね。こぉんなダイヤモンドの」
「わかった、わかった。本当に今直ぐに来れるのならな」
ふふん
見ていなさい
老いぼれ枢機卿
あんたなんか
本当はちっとも
尊くなんかないもんね
「ハレルヤ。雨が降ってもいつもいつもハレルヤ。ここに占い師游弧芳邑を召喚せよ」
光がパアアアっと光った
この前と同じだわ
ほら
ね
派手派手な銀のベール
色ガラスの眼鏡と
黒いマスクは蛇卍
紫のドレスに紺色マント
うわあ
足元には
金色に光る魔方陣が
メルメルちゃんが
びっくりして
椅子から転げ落ちた
「だ、大丈夫、メルたん」
「こ、これは……」
声もでないのね
ひざまずいちゃって
「あなたは聖女様ですか」
「ほほ、この世界ではそのような者かも知れませんね。ところで、何の用で私を呼び出したの。忙しいんだけど」
うわあ、怒っている
仕方ない
メルメルちゃんを
「こちら、この国の教皇庁を実質的に支配している枢機卿ステルメルメル様です」
持ち上げてやったわ
「何の用かと聞いているのよっ」
うわあ、ますます
怒らせてしまった
この人
おトイレの時に
呼び出すと
変な格好で出てきて
激怒するのよね
「この世界が本当に滅びるのか知りたいのですって」
「はあ、そんなことか」
あれを出すんだ
スマホってやつ
この前の四角いの
あれの動画ってのを
見せてもらったから
もう知ってるけど
とんでもない地震が起きて
みんな死んだの
ほら、メルメルちゃんが
青くなって見ているやつ
動画ってやつ
この世界の未来に起きること
「これは……これは第一皇子エルブレストじゃないか。マリー、こっ、この令嬢は」
「そうよ。これ、ピスカレーナよ。なんてビッチなお嬢様」
なによ、メルメル
私の顔に何かついてるって言うの
私はエッチで
ピスカレーナはビッチでしょ
「この令嬢が筆下ろしの相手か。何っ、婚約者ミラエスタ侯爵令嬢を、おおっ、何と、ギロチン刑に……」
「その直ぐあとよ」
「こっ、これは我が姿か。シワがすごいな。年をとっているではないか。あっ。こっ、こんな悲惨な。これはソドムとゴモラの滅びよりも大きい。これは……これはあってはならぬこと……これはこれが起きると言うのか。もう、起きてしまったのか。いや、それなら今の人生は、繰り返していると言うのか。あのような滅びに向かっておるのか」
メルメルったら震えて泣いてる
老害ボケ俗物スケベのくせに
「もう、用事は済んだか」
「あ、あの、聖女様。ひとつお聞きしても宜しいでしょうか。ハルマゲドンの後には何が残りますか」
「この世の基盤は揺るがず、回復を見る。ただ、地殻変動が大きく大気を揺るがし磁場を狂わせた。この世界で当たり前に行われた間違いを正す。その後は神のみぞ知ることなり」
あら
姿が薄くなった
占い師さん
私を占ってよ
あっ
魔方陣も消えた
もう一度呼び出したら
この召喚カードは
あと一回しか使えなくなっちゃう
どうしよう……
メルメルちゃんと
別れた方が良いのかどうか
占ってよぉ……
あ、その前に
メルメルちゃんに
お家も買ってもらお
あ、地震でなくなっちゃうか
宮殿さえもなくなるんだものね
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