過去に戻るインスタッレ(完結)

7) 占い師

それでわたくしの処へ来たのですね
奈利子さん、学校帰りですよね
四阿野原奈利子しあのはらなりこさん




「……はい。ここに寄り道することで何か問題でも」




あまり良い選択とは言えませんね

 


「私、どうしてもお兄ちゃんの事件を調べたくて……」




その事件にあなたはまだ
関わるべきではありません




「何故ですか。私が子供だからですか。私のお兄ちゃんのことなのにですか」




あなたのお兄さんのことだとしても、です


家に帰って大人の人に相談してから




「大人とか子供とか関係なくないですか。私は犯人が憎いです。捕まえて訴えてやりたい。占いで犯人はわからないんですか」




何故、導かれたのでしょうね




「どういう意味ですか。はぐらかすのですか」




妙な具合になりました
今日は三人の珍客が来る日なので
あなたが二番目ですから
もう一人来れば



「珍客って私もですか」



人の動きには
月が関与すると言います
ご存じですか



「はい、聞いたことがあります。いえ、私、都市伝説ですよね。お月様のこと……」



ええ、お月様の話です



「お月様の話で誤魔化さないで、はっきり言ってください」



ふふ、誤魔化してはいません



「お月様なんて、事件には全く関係なくないですか」



『月光の奇妙な境』
游弧芳邑ゆうこよしむらの作品ですけれど、あなたはお持ちではないですね



夜露の精霊の話しです


「都市伝説で、夜露を月の涙とか。何だか陳腐な……」



奈利子さん
月の涙は陳腐ですか