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言質はプロパガンダ音声

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その日も、疲れはてたAはぼんやりして思わずシャドウイングしかけて、はっとする。


望んでいない言葉を言わせられるところだった。


そこに、白いローブが現れた。


「よく気づいたね。奴らの手口としては、あなたにあれこれ喧嘩を吹っ掛けて、長時間に渡り心の中で弁論大会でも繰り広げさせて、脳を疲弊させることなんだよ。なぜかと言うと、ぼんやりしている時を狙ってシャドウイングさせるつもりなんだね」


白いローブは男とも女とも判別のつかない顔で、Aを見た。

Aは答えた。


「私は、リラックスして生活したいと望んでいる。常に誰かとしゃべるのは疲れる。思考盗聴者は悪口ばかりで油断ならないから、楽にしゃべれる相手ではないが、いつも喧嘩を吹っ掛けてくる。相手にしないと濡れ衣を着せてくる。常に気を張って生活することはできないのに、それを強制されている」


そのやり取りは、テレパスもどきの思考盗聴者と連れの男にも聞こえていたが、いきなり「エッチしたい」という音声がスマホから流れたのには驚いた。


「言ってる、言ってる。ヤりたいってさ。本人が言ったのをお前も聞いたよな」と、言質を取ったとばかりに喜ぶ。


その音声は言質ではなく、思考盗聴者とフォーメーションを組んでいる仲間たちからのプロパガンダ音声なのだが、初めて参加する連れにわかるはずはない。

「Aの願望が声に出たのだ」「エダマメはヤりたがっている」と思考盗聴者に言われ、連れの男はまんまと信じた。自分の願望だから、すんなり信じ込めたのだ。


後ろに白いローブが立っていることにも気づかずに、思考盗聴者と連れの男は侵入する意を決して笑う。




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