上 下
23 / 40

23)何故か心音が

しおりを挟む


瞬きする間もなく璃人の右手はアディウィズに向けられ、対するアディウィズは璃人の手を切り払う。サーベルは空を裂いて、霊域のスクリーンに映し出されただけの璃人の手は揺るがない。


「おのれ、この魔剣を受けても動じぬか」


青い光が津波のようにドドッと押し寄せ、硬質な光がアディウィズを襲う。


「怯むでないぞ、アディウィズ殿っ」


緋芙美の赤い髪の毛が璃人目掛けて舞うも、呪詛文言の紐に阻まれて、赤と青の二対の蛇が空中で絡み合う格好になる。

アディウィズは真正面から璃人を叩き斬った。その刹那、璃人の影がふいに消え青い光に浸されていた部屋が紫色を経て赤い色彩を取り戻す。


「何だったのだ、今のは……」


消えた影を追って辺りを見渡す。何事もなかったように忽然と消えた若者。溜め息を#吐__つ本気まじ__#くアディウィズの身体に、熱い痛みが残った。光とは思えない重量を持つ硬質な物質が身体に当たり、打撲傷と火傷に似た痛みをもたらした。その青黒い証拠が捲り上げてみた腕に残っている。


胸にも受けたのだ
胸が痛むのは……


アディウィズの傍らで緋芙美は鼻血をだらだらと垂らし、その鼻血は真っ赤な着物に黒味を帯びて吸い込まれる。部屋を赤く染めていた光もシュウシュウと音をたてながら緋芙美の身体に収まっていく。呪詛文言が緋芙美のすらりと伸びたナマ足から身体に絡まった。


「ええい、ウプンマガの呪詛めがっ。今頃になって我を好いても遅いのじゃ。無駄じゃと言うに瑠璃子め、粘着気質かっ」


アディウィズはサーベルを振り下ろして、緋芙美に傷をつけること無く呪詛文言を細切れにした。ポトポトと白化した言葉が骨のように落ちる。切っ先からは霊気が立ち上っていた。

アディウィズは緋芙美を一瞥すると、サーベルを鞘に納めて背中を向けた。まだ身体に張り付いている呪詛文言の短い紐を剥がす緋芙美を余所に、壇上に上がる。心なしか頬が赤い。金メッキと色硝子を嵌め込んだ赤い天鵞絨ビロードの王者の椅子にどっかと座って脚を組むも、身体が斜めに崩れ、切なげに口許に手をやる。


「璃人……」


青白く浮かんだ影がくっきりとした面差しを映し出した時、一瞬だったがアディウィズの目は璃人の容貌に見惚れた。名前を口にした途端に心音が高まる。


「おや、アディウィズ殿、如何なされた。よもや我にその霊刀が渡るのを拒むのではなかろうの」


アディウィズは心ここにあらずといった調子だ。呆けているようにも見えて、緋芙美は不満たらたらと追及する。


「アディウィズ総帥……」

「緋芙美。お主、璃人とやらと顔見知りか」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...