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4話 中間テストで問題発生
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──「ん?ここはどこだ?」
そこには、どこか見覚えのある景色が広がっていた。
「海?」
そこは、水平線が綺麗に見ることの出来るゴミのない美しい浜だった。
そこには、1人の少女が立っていた。透き通った銀色で、艶のある長い髪。身長は、そこまで高くない。顔立ちは整っている。9歳ぐらいの少女。
「ねぇ、あなたは誰?」
この優しく、温もりのある声。母親の声のような安心感がある。
「え、俺?俺は匠、早野匠」
「へー、匠くんって言うんだ」
「君は?」
「私?私はね……」
ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ
「ん、ん?」
朝か。というか、またこの夢か。最近よく見るんだよな、この夢。
どこかで見た事のある浜辺に立っている1人の少女、そして名前を聞かれて答えるんだけど、その少女に名前を聞いて、少女が答えようとしたら目が覚める。そんなことが最近よくある。
「何なんだろうな。この夢」
もしかして、予知夢?いや、それは無いか、だって見覚えあるし。
「お、おはよう匠君」
「お、おはよう花蓮」
相変わらずの少しぎこちない挨拶を交わした俺は……勉強に励んでいた。
『僕と勝負をしよう』
町田のあの挑戦に乗ってしまった。だからと言って負けるつもりは無論ない。俺は勝負事に負けるのが嫌いだ。どんな勝負でも全身全霊で戦う。それが俺のポリシーだった。
「早野くん勉強してるんだ」
「うん、そうなんだよ、もうすぐ中間テストだろ?だからな俺も高2だし受験にもそろそろ真剣に向き合っていかないといけないしな」
「そ、そっか。あ、あのさ早野くん……」
「ん?どうした花」
「勉強なら、私が教えてあげよっか?」
「え?まじで?トップ3常連の花に教えて貰えるとか勝ち確定じゃん」
「暇なとき教声掛けて、その時教えるから」
「おう!ありがとな花」
「うん!」
ガヤガヤガヤガヤ
「ん?なんだ?やけに外が騒がしくなったな」
「そうだね誰か来たのかな?」
「お、お、お兄ちゃん……」
「へ?お兄ちゃん?」
「風紀委員長が……花蓮ちゃんのお兄さん?」
「早野匠という男はこのクラスにいないか?」
「早野くんですか?いますよ。早野く~ん、風紀委員長が呼んでるよ~」
「え?俺?マジか怖いなー」
どういうつもりだ?俺にようって。もしかして花蓮の事かな?
「お前が早野匠か?」
この人がこの高校の風紀委員長の岡田広樹《おかたひろき》。黒髪の短髪で黒の眼鏡をかけている、これぞ風紀委員長って感じの人だ。前々から思ってたんだけど、この人関わりにくい……
「はい、僕が早野ですけど」
「なるほど、あまり頼りがいのなさそうなやつだな」
いきなり侮辱とは、さすがに心が痛いは。
「酷いですね……先輩」
「まぁいい、今日ここに来たのは要件があるからだ」
「なんですか?」
「花蓮の兄として、お前を試しにきた」
まさかのドンピシャやないかい。
「と、いいますと…」
「お前が花蓮の、俺の妹の彼氏として相応しいかどうかを確かめる」
「具体的にいうと?」
「俺が考えるに、学力こそこの世の中において絶対的存在だ。だから、俺と勝負をしよう。俺が勝ったらお前には妹と別れてもらう」
「!?」
「お前が勝ったら認めてやる。今後口出ししないと誓う」
いや、似たセリフどっかで聞いたことあるぞ。いや、昨日聞いたは。
「メリットがない気がします僕に」
「何を言っている。家族に認めてもらわないでどうやってこの先やっていくつもりだ?これはチャンスだ。どうする?やるか?やらないか?」
「…………やります」
「分かった。では、今度の中間テストの総合点で勝負をしよう」
「分かりました」
「それじゃぁ健闘を祈るよ」
「………………」
「よかったの?お兄ちゃんと勝負だなんて、お兄ちゃん前回学年1位だよ?」
「受けざるを得なかったんだよ」
「そっか、頑張ってね!応援してる!私はあんまり頭良くないから何もしてあげられないけど……あ!」
「ん?」
「花ちゃんも呼んで、匠君の家で勉強会開こうよ!」
「勉強会か、いい案だな……ってなんで花?」
「え?だって花ちゃん賢いから」
「わ、私はいいよ!別に」
「じゃあ今日の放課後って事で……匠君いける?」
「あ、あぁ大丈夫」
「じゃあ決まりだね」
「でも、私なんかで大丈夫なの?あまり自信はないけど……」
「おやおや、お困りのようだね諸君」
「「「!?」」」
「どうもどうもワイは高畑健斗や」
「高畑君?」
高畑健斗《たかはたけけんと》。同じクラスで、テストでは常に500点をたたき出し、学年トップを降りたことがない天才だ。背が低く、メガネが特徴的なその顔は、学校では知らない人なんて一人もいないほどの有名人だ。
「健斗が俺に教えてくれんのか?」
「そういうわけや」
「マジで?いいの?」
「かまへんかまへん、特に何かを取るとかはないから安心してくれたまえ」
「じゃ、決まりだね」
そして放課後、早野家。
「相変わらず割と広いんだよな~匠の家は」
「なんで上村がいんねん。私らだけやと思ってたのに」
「いやいや陽菜ちゃんそれはお互い様やろ?」
「そうだ康晴、お前よくわかってんじゃねぇか」
「あ、匠。今日りせはパスだってさ」
「おい聞いてんのか、おい」
こいつは後で締めとくか、うんそうしよう。てか、りせにも声掛けたのかよ……パスか、そうだよな~
「お、お、お邪魔します。早野くん」
「匠君の家って綺麗だね」
「新築だからね、まだ立ったばっかりみたいだからな、このマンション」
「そうなんだ」
なんやかんやいって、康晴以外は俺の家上がんの初めてなのか。片付けといてよかったは、まじで。
「ちゅうわけで、この問題やけど、ΔXを計算して…………」
健斗の説明って分かりやすいな。なんか的確以外の何物でもない。さすが学年トップの天才。ここまでの差があるとは……
「ありがと、だいぶ分かってきたよ」
「お役に立てたなら光栄ですは」
「うん、この勝負なんとしても勝たなくてはならないから、ありがとう」
「ようやくワイに張り合えそうなやつが出てきたんや、気にせんでええ」
天才にも苦労はあるんだな。張り合えないっていうのも辛そうだな。
風紀委員長と学年1のモテ男、こんな化け物達と戦うわけだが……弱音なんて吐いてる暇はない、勝つ。ただそれだけの事だ。何としてでもだ。
「ところでさ、一旦勉強休憩にしてさ、恋バナでもしようぜ」
「おい!康晴お前俺の邪魔しにここに来たのか?今すぐつまみ出すぞおい!」
「花蓮ちゃんと匠って今んとこ上手くいってんの?」
「へ?私たち?私たちは……」
「お前たちは割と順調だよ」
「へー、そうなのか」
「花ちゃんは?好きな人とかいんの?」
「上村、それは……」
「私はあんまり順調じゃないかな」
「え?花って好きな奴いんの?」
「へ?えーと、うん。いる」
「そうなんだ、まぁ花なら誰でもなんとでも出来んだろ!頑張れ!応援してるから」
「…………うん」
「花……無理したあんからな」
「うん、大丈夫陽菜ちゃん。ありがと」
でた、女子の大好きなこしょこしょばなし。これめっちゃ気になるんだよな
「で、陽菜ちゃんは?」
「え?私?私は特になんもないかな、恋愛には興味あるんやけど、相手がおらんねん」
「そっかー。みんなそれぞれあるって感じなんやな」
「ワイには聞いてくれんのやな」
「だって、どうせおらんねんやろ?」
「せやけどやな、流れがあるやろ」
誰も聞かないから、俺も聞かないけど、あいつは自分についてはひとつも語らなかった。これが、あいつのやり方だから、つっこむつもりもないけど、ちょっと気になるな。康晴の好きな奴。
そんな感じで楽しい時間はあっという間に過ぎ、時計の針は、19時を指していた。
「もうこんな時間だな」
「うわ、ほんとだ」
「じゃあそろそろ帰ろうかな」
「そうだね、じゃあ今日はお開きってことで」
「おう!じゃな、みんな」
「うん、ばいばい」
「ほな、また明日」
「またね匠君」
「早野くん、お邪魔しました」
「ありがとね早野」
「じゃあな匠」
俺は、静かになった部屋の片付けをしながら、もう一度決心した。
「やっぱり何があっても負けてはいけない」と。
今日は、中間テスト当日。本当に1日って24時間なのか疑うぐらい早かった。けど
その分濃い時間を過ごせた。あとは、全力を尽くすだけ、か。
「おはよう匠君」
「おはよう花蓮」
あの日以来、挨拶がぎこちなく無くなったという事はさておき、今は勉強をしよう。最後の悪あがきもしたらしたで効果あるかもしれないから。
「それじゃ、試験を始めるよ~。1時間目国語よーい始めー」
■ ■ ■
「終わった。この勝負、負けた」
「え?嘘。どうして?匠君あれだけ頑張ってたのに」
「数学、1問解けなかった……」
「まだわかんないよ!まだ何があるかわかんないよ!」
「そうだね……結果発表を待つしかないね」
「ちなみにワイは満点の自信以外ないけどな」
相変わらず健斗は化け物だ。だか、俺も今のところは1問のみ。割と接戦だったかもしれないな。
1週間後、テストの結果発表当日。
「おはよう匠君、いよいよ今日だね 」
「おはよう、うん。いよいよ今日だよな、まぁあんまり緊張してないんだけどな」
俺たちは、2人で張り出してある順位表を見に行った。
中間テスト順位表
第2学年
1位 高畑健斗 500点
2位 早野匠 498点
3位 伊藤花 495点
4位 田神陽菜 484点
5位 豊嶋ルン 479点
6位 町田晴也 473点
:
59位 上村康晴 388点
60位 東川りせ 382点
:
120位 岡田花蓮 295点
:
239位 新宮一希 173点
240位 門田正午 39点
第3学年
1位 飯田桃子 500点
1位 和泉初音 500点
3位 岡田広樹 497点
4位 東盛愛 463点
5位 節木吉野 458点
:
239位 椎名朱音 213点
240位 小野虹 31点
「あ、俺2位じゃん」
「私は何故か知らないけどずっと120位なんだけど」
「勝ってる」
「そうだね、勝ってるね」
「よかったー、まじで緊張したー」
「なんとかクリアだね」
「まさか私まで負けるとは思はなかっまたよ早野くん」
「俺もびっくりしたは」
「2位か、なかなかやるやないか、今度はワイを越えてみ、というか追いついてみ、いつでも満点で待っとるから」
「おう!いつでまでも待っといてくれ」
やっぱり健斗は良い奴なんだよな、頭いいけど鼻にかからないし。
「それにしても生徒会長と副会長、いつもはそれとお兄ちゃんだけど、頭いい人揃いだね、あんなにおちゃらけてる生徒会長も、テストでは別人みたいだし」
「そうだよなー、あんなけ奇抜な発想してるし、頭いいのは分かるっちゃ分かるけど……」
「あっ!」
「ん?」
「どうやらお前の勝ちのようだな早野」
「ふ、風紀委員長……」
「どうやらお前は俺の思っている以上の男のようだな。花蓮を託しても大丈夫そうだ」
「え?お兄ちゃんどうゆうこと?」
「あぁ、今回早野が俺に負けたら別れて貰うよう言っていた」
「!?」
「だが、心配するな。この男はとてもいい男だ」
「当たり前じゃない!だって私が選んだ人だよ?」
「まぁな、心配する必要もなかったかもな」
これで、ひとまず一件落着ってことだな……ん?何か忘れているよな…………
放課後、とある教室
「君の勝ちだね匠君」
「町田……」
そういや、町田との勝負をわすれてた。だいたい進学校でもないのに勉強ガチ勢多すぎだろ。と言うのが素直な気持ちだね!
「約束通り、今後一切君には口出ししないよ」
「あ、あぁ」
「楽しかったよ匠君」
「そうだな、確かに俺も楽しかったよ」
「僕もまだまだのようだね」
ハハハと笑いながら言っている町田だが、どこか不自然だ
「なぁ町田」
「なんだい匠君?」
「お前の素はどっちだ?」
「どういう意味だい?」
「その透かしたクールなのか、真っ黒に染まったほうか」
「そんなの決まってるじゃないか」
「……」
「どちらも僕だよ」
本気で言っている。ただそれだけは分かった。蔑むような目で、どこか遠くを見ているような目で、俺を見ている。教室の窓から差し込む夕日が反射している目は、まるで闘志のように燃えていた。こいつの過去は知らないが、花の話になった時だけ黒になる。これがどういう意味を示すかは分からないが、おそらく、昔花となにかあったということだけは分かる。
町田晴也……、どこまでも謎に包まれた男だ。だが、興味はないし、これ以上の深追いは、タブーだろう。
「それじゃぁね、匠君。君とはまた縁がありそうだよ」
「それだけはごめんだよ」
俺たちは、それぞれ違う方向に歩き出した。
「は、早野くん!」
「何?花」
翌日の放課後、突然花が話しかけてきたので、少しだけ視線が痛い……
「テストも終わった事だしさ、もうすぐ修学旅行あるでしょ?」
「あるけど……それがどうかしたのか?」
「準備もそろそろ始めないといけないしさ、買い物付き合ってくれない?」
「ん?いいぞ」
「!?」
なんでそんなに驚いてんだ?てか、なんか俺変なこと言ったか?いや、言ってないよな……じゃあ、なんでだ?俺の顔そんなに変なのか?
「は、早野くん、彼女いるのにそんなにあっさりしてていいの?」
「え?だってさ、買い物に付き合うだけだろ?それの何が悪いんだ?」
そんなことで咎めてくるような彼女じゃないっての。てか、そんなやつの方が少ないと思うしな。まぁ、最悪一緒に行けばいいけど
「そ、そうだけど……2人だけだよ?で、デ、デートだよ?」
あーなるほど。それを気にしてたのか
「そんなの気にしない気にしない、花だし心配はしてないよ」
「そ、そっか。じゃあ今週の日曜日っていける?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、また明日」
「おう!またな」
また、デートか。今度は誰かに尾行されてないか注意しとかないとな。
こうして、花とデートにいくことになった俺だが、この日には大事な予定があったことを俺は当日に、しかも目的地に着いてから、気付かされるのであった。
そこには、どこか見覚えのある景色が広がっていた。
「海?」
そこは、水平線が綺麗に見ることの出来るゴミのない美しい浜だった。
そこには、1人の少女が立っていた。透き通った銀色で、艶のある長い髪。身長は、そこまで高くない。顔立ちは整っている。9歳ぐらいの少女。
「ねぇ、あなたは誰?」
この優しく、温もりのある声。母親の声のような安心感がある。
「え、俺?俺は匠、早野匠」
「へー、匠くんって言うんだ」
「君は?」
「私?私はね……」
ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ
「ん、ん?」
朝か。というか、またこの夢か。最近よく見るんだよな、この夢。
どこかで見た事のある浜辺に立っている1人の少女、そして名前を聞かれて答えるんだけど、その少女に名前を聞いて、少女が答えようとしたら目が覚める。そんなことが最近よくある。
「何なんだろうな。この夢」
もしかして、予知夢?いや、それは無いか、だって見覚えあるし。
「お、おはよう匠君」
「お、おはよう花蓮」
相変わらずの少しぎこちない挨拶を交わした俺は……勉強に励んでいた。
『僕と勝負をしよう』
町田のあの挑戦に乗ってしまった。だからと言って負けるつもりは無論ない。俺は勝負事に負けるのが嫌いだ。どんな勝負でも全身全霊で戦う。それが俺のポリシーだった。
「早野くん勉強してるんだ」
「うん、そうなんだよ、もうすぐ中間テストだろ?だからな俺も高2だし受験にもそろそろ真剣に向き合っていかないといけないしな」
「そ、そっか。あ、あのさ早野くん……」
「ん?どうした花」
「勉強なら、私が教えてあげよっか?」
「え?まじで?トップ3常連の花に教えて貰えるとか勝ち確定じゃん」
「暇なとき教声掛けて、その時教えるから」
「おう!ありがとな花」
「うん!」
ガヤガヤガヤガヤ
「ん?なんだ?やけに外が騒がしくなったな」
「そうだね誰か来たのかな?」
「お、お、お兄ちゃん……」
「へ?お兄ちゃん?」
「風紀委員長が……花蓮ちゃんのお兄さん?」
「早野匠という男はこのクラスにいないか?」
「早野くんですか?いますよ。早野く~ん、風紀委員長が呼んでるよ~」
「え?俺?マジか怖いなー」
どういうつもりだ?俺にようって。もしかして花蓮の事かな?
「お前が早野匠か?」
この人がこの高校の風紀委員長の岡田広樹《おかたひろき》。黒髪の短髪で黒の眼鏡をかけている、これぞ風紀委員長って感じの人だ。前々から思ってたんだけど、この人関わりにくい……
「はい、僕が早野ですけど」
「なるほど、あまり頼りがいのなさそうなやつだな」
いきなり侮辱とは、さすがに心が痛いは。
「酷いですね……先輩」
「まぁいい、今日ここに来たのは要件があるからだ」
「なんですか?」
「花蓮の兄として、お前を試しにきた」
まさかのドンピシャやないかい。
「と、いいますと…」
「お前が花蓮の、俺の妹の彼氏として相応しいかどうかを確かめる」
「具体的にいうと?」
「俺が考えるに、学力こそこの世の中において絶対的存在だ。だから、俺と勝負をしよう。俺が勝ったらお前には妹と別れてもらう」
「!?」
「お前が勝ったら認めてやる。今後口出ししないと誓う」
いや、似たセリフどっかで聞いたことあるぞ。いや、昨日聞いたは。
「メリットがない気がします僕に」
「何を言っている。家族に認めてもらわないでどうやってこの先やっていくつもりだ?これはチャンスだ。どうする?やるか?やらないか?」
「…………やります」
「分かった。では、今度の中間テストの総合点で勝負をしよう」
「分かりました」
「それじゃぁ健闘を祈るよ」
「………………」
「よかったの?お兄ちゃんと勝負だなんて、お兄ちゃん前回学年1位だよ?」
「受けざるを得なかったんだよ」
「そっか、頑張ってね!応援してる!私はあんまり頭良くないから何もしてあげられないけど……あ!」
「ん?」
「花ちゃんも呼んで、匠君の家で勉強会開こうよ!」
「勉強会か、いい案だな……ってなんで花?」
「え?だって花ちゃん賢いから」
「わ、私はいいよ!別に」
「じゃあ今日の放課後って事で……匠君いける?」
「あ、あぁ大丈夫」
「じゃあ決まりだね」
「でも、私なんかで大丈夫なの?あまり自信はないけど……」
「おやおや、お困りのようだね諸君」
「「「!?」」」
「どうもどうもワイは高畑健斗や」
「高畑君?」
高畑健斗《たかはたけけんと》。同じクラスで、テストでは常に500点をたたき出し、学年トップを降りたことがない天才だ。背が低く、メガネが特徴的なその顔は、学校では知らない人なんて一人もいないほどの有名人だ。
「健斗が俺に教えてくれんのか?」
「そういうわけや」
「マジで?いいの?」
「かまへんかまへん、特に何かを取るとかはないから安心してくれたまえ」
「じゃ、決まりだね」
そして放課後、早野家。
「相変わらず割と広いんだよな~匠の家は」
「なんで上村がいんねん。私らだけやと思ってたのに」
「いやいや陽菜ちゃんそれはお互い様やろ?」
「そうだ康晴、お前よくわかってんじゃねぇか」
「あ、匠。今日りせはパスだってさ」
「おい聞いてんのか、おい」
こいつは後で締めとくか、うんそうしよう。てか、りせにも声掛けたのかよ……パスか、そうだよな~
「お、お、お邪魔します。早野くん」
「匠君の家って綺麗だね」
「新築だからね、まだ立ったばっかりみたいだからな、このマンション」
「そうなんだ」
なんやかんやいって、康晴以外は俺の家上がんの初めてなのか。片付けといてよかったは、まじで。
「ちゅうわけで、この問題やけど、ΔXを計算して…………」
健斗の説明って分かりやすいな。なんか的確以外の何物でもない。さすが学年トップの天才。ここまでの差があるとは……
「ありがと、だいぶ分かってきたよ」
「お役に立てたなら光栄ですは」
「うん、この勝負なんとしても勝たなくてはならないから、ありがとう」
「ようやくワイに張り合えそうなやつが出てきたんや、気にせんでええ」
天才にも苦労はあるんだな。張り合えないっていうのも辛そうだな。
風紀委員長と学年1のモテ男、こんな化け物達と戦うわけだが……弱音なんて吐いてる暇はない、勝つ。ただそれだけの事だ。何としてでもだ。
「ところでさ、一旦勉強休憩にしてさ、恋バナでもしようぜ」
「おい!康晴お前俺の邪魔しにここに来たのか?今すぐつまみ出すぞおい!」
「花蓮ちゃんと匠って今んとこ上手くいってんの?」
「へ?私たち?私たちは……」
「お前たちは割と順調だよ」
「へー、そうなのか」
「花ちゃんは?好きな人とかいんの?」
「上村、それは……」
「私はあんまり順調じゃないかな」
「え?花って好きな奴いんの?」
「へ?えーと、うん。いる」
「そうなんだ、まぁ花なら誰でもなんとでも出来んだろ!頑張れ!応援してるから」
「…………うん」
「花……無理したあんからな」
「うん、大丈夫陽菜ちゃん。ありがと」
でた、女子の大好きなこしょこしょばなし。これめっちゃ気になるんだよな
「で、陽菜ちゃんは?」
「え?私?私は特になんもないかな、恋愛には興味あるんやけど、相手がおらんねん」
「そっかー。みんなそれぞれあるって感じなんやな」
「ワイには聞いてくれんのやな」
「だって、どうせおらんねんやろ?」
「せやけどやな、流れがあるやろ」
誰も聞かないから、俺も聞かないけど、あいつは自分についてはひとつも語らなかった。これが、あいつのやり方だから、つっこむつもりもないけど、ちょっと気になるな。康晴の好きな奴。
そんな感じで楽しい時間はあっという間に過ぎ、時計の針は、19時を指していた。
「もうこんな時間だな」
「うわ、ほんとだ」
「じゃあそろそろ帰ろうかな」
「そうだね、じゃあ今日はお開きってことで」
「おう!じゃな、みんな」
「うん、ばいばい」
「ほな、また明日」
「またね匠君」
「早野くん、お邪魔しました」
「ありがとね早野」
「じゃあな匠」
俺は、静かになった部屋の片付けをしながら、もう一度決心した。
「やっぱり何があっても負けてはいけない」と。
今日は、中間テスト当日。本当に1日って24時間なのか疑うぐらい早かった。けど
その分濃い時間を過ごせた。あとは、全力を尽くすだけ、か。
「おはよう匠君」
「おはよう花蓮」
あの日以来、挨拶がぎこちなく無くなったという事はさておき、今は勉強をしよう。最後の悪あがきもしたらしたで効果あるかもしれないから。
「それじゃ、試験を始めるよ~。1時間目国語よーい始めー」
■ ■ ■
「終わった。この勝負、負けた」
「え?嘘。どうして?匠君あれだけ頑張ってたのに」
「数学、1問解けなかった……」
「まだわかんないよ!まだ何があるかわかんないよ!」
「そうだね……結果発表を待つしかないね」
「ちなみにワイは満点の自信以外ないけどな」
相変わらず健斗は化け物だ。だか、俺も今のところは1問のみ。割と接戦だったかもしれないな。
1週間後、テストの結果発表当日。
「おはよう匠君、いよいよ今日だね 」
「おはよう、うん。いよいよ今日だよな、まぁあんまり緊張してないんだけどな」
俺たちは、2人で張り出してある順位表を見に行った。
中間テスト順位表
第2学年
1位 高畑健斗 500点
2位 早野匠 498点
3位 伊藤花 495点
4位 田神陽菜 484点
5位 豊嶋ルン 479点
6位 町田晴也 473点
:
59位 上村康晴 388点
60位 東川りせ 382点
:
120位 岡田花蓮 295点
:
239位 新宮一希 173点
240位 門田正午 39点
第3学年
1位 飯田桃子 500点
1位 和泉初音 500点
3位 岡田広樹 497点
4位 東盛愛 463点
5位 節木吉野 458点
:
239位 椎名朱音 213点
240位 小野虹 31点
「あ、俺2位じゃん」
「私は何故か知らないけどずっと120位なんだけど」
「勝ってる」
「そうだね、勝ってるね」
「よかったー、まじで緊張したー」
「なんとかクリアだね」
「まさか私まで負けるとは思はなかっまたよ早野くん」
「俺もびっくりしたは」
「2位か、なかなかやるやないか、今度はワイを越えてみ、というか追いついてみ、いつでも満点で待っとるから」
「おう!いつでまでも待っといてくれ」
やっぱり健斗は良い奴なんだよな、頭いいけど鼻にかからないし。
「それにしても生徒会長と副会長、いつもはそれとお兄ちゃんだけど、頭いい人揃いだね、あんなにおちゃらけてる生徒会長も、テストでは別人みたいだし」
「そうだよなー、あんなけ奇抜な発想してるし、頭いいのは分かるっちゃ分かるけど……」
「あっ!」
「ん?」
「どうやらお前の勝ちのようだな早野」
「ふ、風紀委員長……」
「どうやらお前は俺の思っている以上の男のようだな。花蓮を託しても大丈夫そうだ」
「え?お兄ちゃんどうゆうこと?」
「あぁ、今回早野が俺に負けたら別れて貰うよう言っていた」
「!?」
「だが、心配するな。この男はとてもいい男だ」
「当たり前じゃない!だって私が選んだ人だよ?」
「まぁな、心配する必要もなかったかもな」
これで、ひとまず一件落着ってことだな……ん?何か忘れているよな…………
放課後、とある教室
「君の勝ちだね匠君」
「町田……」
そういや、町田との勝負をわすれてた。だいたい進学校でもないのに勉強ガチ勢多すぎだろ。と言うのが素直な気持ちだね!
「約束通り、今後一切君には口出ししないよ」
「あ、あぁ」
「楽しかったよ匠君」
「そうだな、確かに俺も楽しかったよ」
「僕もまだまだのようだね」
ハハハと笑いながら言っている町田だが、どこか不自然だ
「なぁ町田」
「なんだい匠君?」
「お前の素はどっちだ?」
「どういう意味だい?」
「その透かしたクールなのか、真っ黒に染まったほうか」
「そんなの決まってるじゃないか」
「……」
「どちらも僕だよ」
本気で言っている。ただそれだけは分かった。蔑むような目で、どこか遠くを見ているような目で、俺を見ている。教室の窓から差し込む夕日が反射している目は、まるで闘志のように燃えていた。こいつの過去は知らないが、花の話になった時だけ黒になる。これがどういう意味を示すかは分からないが、おそらく、昔花となにかあったということだけは分かる。
町田晴也……、どこまでも謎に包まれた男だ。だが、興味はないし、これ以上の深追いは、タブーだろう。
「それじゃぁね、匠君。君とはまた縁がありそうだよ」
「それだけはごめんだよ」
俺たちは、それぞれ違う方向に歩き出した。
「は、早野くん!」
「何?花」
翌日の放課後、突然花が話しかけてきたので、少しだけ視線が痛い……
「テストも終わった事だしさ、もうすぐ修学旅行あるでしょ?」
「あるけど……それがどうかしたのか?」
「準備もそろそろ始めないといけないしさ、買い物付き合ってくれない?」
「ん?いいぞ」
「!?」
なんでそんなに驚いてんだ?てか、なんか俺変なこと言ったか?いや、言ってないよな……じゃあ、なんでだ?俺の顔そんなに変なのか?
「は、早野くん、彼女いるのにそんなにあっさりしてていいの?」
「え?だってさ、買い物に付き合うだけだろ?それの何が悪いんだ?」
そんなことで咎めてくるような彼女じゃないっての。てか、そんなやつの方が少ないと思うしな。まぁ、最悪一緒に行けばいいけど
「そ、そうだけど……2人だけだよ?で、デ、デートだよ?」
あーなるほど。それを気にしてたのか
「そんなの気にしない気にしない、花だし心配はしてないよ」
「そ、そっか。じゃあ今週の日曜日っていける?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、また明日」
「おう!またな」
また、デートか。今度は誰かに尾行されてないか注意しとかないとな。
こうして、花とデートにいくことになった俺だが、この日には大事な予定があったことを俺は当日に、しかも目的地に着いてから、気付かされるのであった。
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【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
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<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
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