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夏休みが終わり学園に戻ると、浮気王子は、一日中私から離れなくなった。朝は必ず馬車で迎えに来て、私を横抱きにし膝の上に座らせる。学園に着くまでずーっと甘い蕩けるような笑顔で私を見つめ髪を撫で、「可愛い、ナタリー」「今日もキレイだね、ナタリー」「愛してるよ、ナタリー」「俺の、俺だけのナタリー」と砂糖を吐き出しそうなくらい甘い言葉を羅列し、教室では「ナタリア嬢は記憶喪失なので私がすべて面倒を見る。基本的に、男は話しかけるな。話しかけたら罰を与える」と私と自分の席を隣にして強権…狂犬ぶりを発揮し、昼休みはずーっとまた膝に乗せ、ごはんも自分で食べさせるという暴挙に出て、放課後にはまた馬車で帰る…家に着くと「ナタリー、離れたくない。このまま俺の部屋に行こう。何もしない。誓ってキスしかしないから」と矛盾する言葉を平気で吐き出し、一時間以上わたしを抱き締め離さなかった。

さらに、ミアちゃんが近づいてこようものなら、あんたいつの間に視線で人殺せるようになったの、ってくらいの鋭い目線を投げつけ底冷えする声で「それ以上俺とナタリーに近づくことは赦さない」と告げたかと思うと、コロッと変わって甘い瞳で私を見つめ、「羽虫が飛んでたな、ナタリー。退治したからご褒美をくれ、俺の女神」と指を絡ませ手を繋ぎ私の手にキスをした。

私はそれを見て、「あぁ、わたしのまえで仲いいところを見せちゃうとコソコソ盛り上がれないからね」と思っていた。

大変だな、ミアちゃんという本命ヒロインちゃんと禁断の恋を燃え上がらせたいのに、悪役令嬢枠の私がミアちゃんに対してなんにも仕掛けなくなっちゃったからね。でも、そんなくっだらねぇことに時間を割きたくない。そんなことをするなら、スクワット3セットこなしてこの貧相なナタリアの尻を立派な丸さに育てたい。

せっせとトレーニングに励んだ私は、1学年が終わる頃には自分でもそれなりに納得できるカラダに近づいてきた。なんとなく嬉しくてウキウキしていた春休みのある日、部屋にやってきた浮気王子が、「ナタリー、ひとつ頼みがあるんだが」と言った。

「なに」

「おまえ、カラダ変わっただろう」

「え!?わかる!?」

「当たり前だ!毎日毎日抱き締めてるのに気付かないわけがあるか!」

トレーニングの成果に気付いてくれたということに嬉しくなった私は、「なんていいヤツ」と勝手に仲間意識を持った。

「で?頼みって?」

「…おまえは俺にまったく興味がないから気付かないんだろうが、俺もカラダを鍛えたんだ」

「あ、そうなんだ。ごめんね」

まったくわからなかった。だって、意識して触ったりしないし。されるがままに抱き締められてるだけだし。

「それで、ナタリーに、俺のカラダを見て欲しいんだ」

「カラダを?見ていいの!?」

トレーニングしたカラダを見せてくれるとは…なんていいヤツ!

浮気王子は呆れたような視線を私によこした。今日も素敵な三白眼!たとえ蔑まれた視線でも私にとってはご褒美でしかない!

「夏休み前に見ただろう」

「あ、そうだね」

忘れてた。素敵な三白眼だけど、素敵な筋肉じゃなかったから。

「ナタリーのカラダも直接見たい」

え、マジで!?披露していいの!?

「うん、いいよ!」

嬉しい!やった!

「…本当にいいのか?」

三白眼が困惑気味になっている。なんかおかしなこと言ったかな。

「あんた、さっき言ったじゃん。私も夏休み前に見せたでしょ。是非見てよ」

そうよ、是非見てよ!そして崇めなさい、この私の素晴らしい筋肉を!

「ありがとう」

いえいえこちらこそ!

私はさっそく服を脱ぎ始めた。

「…相変わらず潔いい脱ぎっぷりだな」

「うん?そうかな?あんたも早く脱ぎなよ」

いくらお尻を見せたくても全裸はまずいのかな、という理性よりも、この鍛えた丸いお尻を披露したい!という本能が勝った私はすべて脱ぎ捨て全裸になった。どうせこいつには2年後には見られちゃうわけだし。不本意でも子どもが一人できるまではセックスもしなくちゃいけないんだし。あとはミアちゃんに任せるにしても、見られるのが遅いか早いかの違いだけでしょ。

「どうかな?結構変わったと思うんだけど!」

得意満面に振り向いて見た浮気王子の顔は、真っ赤に染まっていた。顔どころか、脱いだ上半身も真っ赤だった。

「ちょっと!?どうしたの!?大丈夫!?」

「…ナタリー」

「なに?まさか、ぜんぜんダメってこと!?あんた、及第点厳しいのね…」

自分としてはなかなか自信があっただけに思わず俯いた私のカラダを、浮気王子がいきなりすごい力で抱き締めた。

耳元で「ナタリー…」と囁かれ、耳をはむっとされて、思わずカラダがビクッと反応する。

背中に回した手が下に動き、私のお尻をキュッと両手で持ち上げた。

「…え?」

「ナタリー、すごくキレイだ。お尻もとても美しい丸みになってる」

「…そ、そうでしょ?あの時のぺったらしたカラダに比べたら、」

浮気王子はそのままお尻をさわさわし始めた。大きな手で撫でられ、むず痒いようなカラダの疼きを感じる。

「ナタリーがあの時言ったように、本当に肌触りもいいな。むっちりして、俺の手に吸い付くようだ」

「そ、そうかな?触り心地は自分ではよくわからない…」

「ナタリー、キスしたい。いいか」

「え?」

その瞬間、浮気王子は私の唇に口づけた。

片手で頭を押さえつけられ、もう一方の手でお尻を撫でられ、何が起きているのか理解できずに呆然とする私から唇を離した浮気王子は、「ナタリー、抱きたい。あの時、いいと言ったな、」と言うと私を抱き上げベッドに連れて行った。そして、何度も何度もキスをする。

「ナタリー、可愛い、ナタリー、キレイだ…」

熱っぽく囁かれて、カラダが一気に熱くなる。

目の前には蕩けるような甘い顔で私をみるドストライクの三白眼が。

その瞳と目が合った瞬間、私のカラダの奥がキュウッとなった。

「…あっ」

思わず零れた熱い吐息を浮気王子の唇が吸いとるように激しく口づけた。









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