2 / 11
2
しおりを挟む
どぐされ浮気王子のクリティカルパンチを食らった私は本当に意識を失ってしまった。ひどい。この世界、目薬あんの?抗菌目薬ジョボジョボさしたい。某商品で目をパチパチ洗浄したい。
腐ったりしたらどう責任とるつもりなんだろ…ほんと…マジ…赦せん…。
ハッと気づいた私の顔を、さらにドストライクな三白眼のイケオジが覗き込んでいた。
「ナタリア!良かった、気づいて…っ」
目の周りを赤くし、目を潤ませるこの方…
「失礼ですが、おじさまは…」
「おじさま!?ナタリアちゃん、僕だよ!パパだよ!なんで!?なんで!?おじさまなんて、やだ!パパって、いつも通りパパって呼んでよ!」
ものすごい勢いで捲し立てられ、見た目とのギャップにカウンターをくらう。でもほんっと素敵。なんなんだろ、この小説書いた人、私とおんなじ趣味なのかな。メッチャ好き、この顔。
でもなぁ。このイケオジは小説に出てきてないからわからないんだよね、パパって言われても。
「おじさま、わたくし、」
「ナタリアちゃん、イヤだ、パパって!パパって呼んで!」
「わたくし、覚えてないんです…それでも、パパとお呼びしてもよろしいのですか?」
「当たり前でしょ!パパなんだから!なんで?記憶喪失になっちゃったの?どうして覚えてないの!?」
素敵な低音に似つかわしくない喋り方をぶちかますイケオジをどうしたものかと眺めていると、不躾にも浮気王子が口を挟んできやがった。
「宰相、申し訳ない、しかし、ナタリーは俺のことはわかる。な、そうだよな、ナタリー」
自分だけは特別!みたいなドヤ顔なんなの。ドストライクの三白眼じゃなければ顔に油性マジックで落書きしてやるのに、くそったれ。
「レオンハルト殿下、わたくしの婚約者だった方ですね、でも、お名前しか存じ上げません。レオンハルトなんちゃら様」
かろうじてレオンハルトって覚えてて良かった☆
「なんちゃら!?」
なんちゃらは無視してイケオジに切ない視線を投げ掛ける。
「おじさま、」
「パパ!」
パパ、は正直抵抗強いなぁ…。私、今までの父親のこと、「お父さん」って呼んでたし。
「…お父様でもよろしいですか?」
イケオジは寂しそうな顔をした。その捨てられた子犬のような、キュンキュンないちゃいそうなかわゆさ…3秒前の自分のバカな発言を今すぐ土下座して謝りたい。
「…慣れるまでは、我慢する。でも、なるべく早くパパって呼んでね、ナタリアちゃん!で?どうしたの?」
「わたくし、記憶がまだらな感じで」
ぶん投げちゃったから小説読んでない、最後まで。こういう異世界転生ものって、今までの記憶はきちんと受け継いでる上で前世の記憶を持ってる気がするんだけど…私は、今のところ小説の記憶しかないみたい。このどぐされ浮気王子も、イラストでドストライクで「レオンたん!素敵!ぺろぺろしたい!」って思ってたけど、婚約者いながらヒロイン(ヒロイン視点だからメッチャヒロインびいきな展開)にメロメロになって婚約者ないがしろにするってのが…見た目、イラストドストライクなだけに浮気王子ってのが赦せなかったんだよね。
「なので、レオンハルト殿下の婚約者は務まりません。レオンハルト殿下は、ミア様がお好きなわけですし、婚約者をはずしていただきたいのです…」
恥ずかしい。恥ずかしいが、言う。恥ずかしさのあまり涙目で言ってみる。
「お願い…パパ」
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!記憶喪失なんだし、仕方ないもんね!良かった、もう嫁に出さなくて済む!無理矢理結ばされた婚約だからね!今からあのバカ国王に、解消するよう突きつけてくるからね!安心して、ナタリアちゃん!ずーっとおうちにいていいからね!パパがずーっと面倒みてあげる!ナタリアちゃん、頭いいから領地経営とかできちゃうでしょ、パパの跡をつぎなさい!女領主になりなさい!ね!」
「パパ…嬉しい、ありがとうございます」
私はおじさまをじっと見つめた。ほんっと素敵。こんなイケオジがお父様だなんて…!最高…!あ、そうだ。
「パパ、わたくし、不安で…パパに抱き締めていただきたいのです…お願いします…」
イケオジの素敵な香り(推測)で浮気王子の臭いを消し去りたい。
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!一日中抱き締めてあげるよ!なんなら、今夜は一緒に寝ようか?」
マジで!?
「嬉しい…!パパ、大好き…!」
最高!イケオジに抱き締められて眠れるなんて最高!
鼻血が出そうに興奮する私の耳に不愉快な雑音が聞こえてくる。
「ナタリー、なぜ、なぜ俺と婚約解消などと…!認めん、絶対に認めん!」
認めん、とか。なんなの、この上から発言。あ、王子だからね。でもさ、おまえ、将来ミアちゃんに入れ込んで婚約解消どころか婚約破棄するんだろ!どんだけナタリアに傷をつければ気が済むんだよ!今ならまだ傷が浅いだろうが!だいたい好きでもないくせに、ナタリアのこと。避けてたじゃん、小説の中でも。
「レオンハルトなんちゃら様、」
「なんちゃら様じゃない!レオンハルト・エヴァンズだ!」
「でも、覚えておりませんので…申し訳ございません」
もう、こいついつまで絡んでくるつもりなんだろ。ドストライク三白眼だからって、かなり素敵な三白眼だからって、いい気にならないでよね!中身バカなくせに!浮気王子のくせに!
腐ったりしたらどう責任とるつもりなんだろ…ほんと…マジ…赦せん…。
ハッと気づいた私の顔を、さらにドストライクな三白眼のイケオジが覗き込んでいた。
「ナタリア!良かった、気づいて…っ」
目の周りを赤くし、目を潤ませるこの方…
「失礼ですが、おじさまは…」
「おじさま!?ナタリアちゃん、僕だよ!パパだよ!なんで!?なんで!?おじさまなんて、やだ!パパって、いつも通りパパって呼んでよ!」
ものすごい勢いで捲し立てられ、見た目とのギャップにカウンターをくらう。でもほんっと素敵。なんなんだろ、この小説書いた人、私とおんなじ趣味なのかな。メッチャ好き、この顔。
でもなぁ。このイケオジは小説に出てきてないからわからないんだよね、パパって言われても。
「おじさま、わたくし、」
「ナタリアちゃん、イヤだ、パパって!パパって呼んで!」
「わたくし、覚えてないんです…それでも、パパとお呼びしてもよろしいのですか?」
「当たり前でしょ!パパなんだから!なんで?記憶喪失になっちゃったの?どうして覚えてないの!?」
素敵な低音に似つかわしくない喋り方をぶちかますイケオジをどうしたものかと眺めていると、不躾にも浮気王子が口を挟んできやがった。
「宰相、申し訳ない、しかし、ナタリーは俺のことはわかる。な、そうだよな、ナタリー」
自分だけは特別!みたいなドヤ顔なんなの。ドストライクの三白眼じゃなければ顔に油性マジックで落書きしてやるのに、くそったれ。
「レオンハルト殿下、わたくしの婚約者だった方ですね、でも、お名前しか存じ上げません。レオンハルトなんちゃら様」
かろうじてレオンハルトって覚えてて良かった☆
「なんちゃら!?」
なんちゃらは無視してイケオジに切ない視線を投げ掛ける。
「おじさま、」
「パパ!」
パパ、は正直抵抗強いなぁ…。私、今までの父親のこと、「お父さん」って呼んでたし。
「…お父様でもよろしいですか?」
イケオジは寂しそうな顔をした。その捨てられた子犬のような、キュンキュンないちゃいそうなかわゆさ…3秒前の自分のバカな発言を今すぐ土下座して謝りたい。
「…慣れるまでは、我慢する。でも、なるべく早くパパって呼んでね、ナタリアちゃん!で?どうしたの?」
「わたくし、記憶がまだらな感じで」
ぶん投げちゃったから小説読んでない、最後まで。こういう異世界転生ものって、今までの記憶はきちんと受け継いでる上で前世の記憶を持ってる気がするんだけど…私は、今のところ小説の記憶しかないみたい。このどぐされ浮気王子も、イラストでドストライクで「レオンたん!素敵!ぺろぺろしたい!」って思ってたけど、婚約者いながらヒロイン(ヒロイン視点だからメッチャヒロインびいきな展開)にメロメロになって婚約者ないがしろにするってのが…見た目、イラストドストライクなだけに浮気王子ってのが赦せなかったんだよね。
「なので、レオンハルト殿下の婚約者は務まりません。レオンハルト殿下は、ミア様がお好きなわけですし、婚約者をはずしていただきたいのです…」
恥ずかしい。恥ずかしいが、言う。恥ずかしさのあまり涙目で言ってみる。
「お願い…パパ」
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!記憶喪失なんだし、仕方ないもんね!良かった、もう嫁に出さなくて済む!無理矢理結ばされた婚約だからね!今からあのバカ国王に、解消するよう突きつけてくるからね!安心して、ナタリアちゃん!ずーっとおうちにいていいからね!パパがずーっと面倒みてあげる!ナタリアちゃん、頭いいから領地経営とかできちゃうでしょ、パパの跡をつぎなさい!女領主になりなさい!ね!」
「パパ…嬉しい、ありがとうございます」
私はおじさまをじっと見つめた。ほんっと素敵。こんなイケオジがお父様だなんて…!最高…!あ、そうだ。
「パパ、わたくし、不安で…パパに抱き締めていただきたいのです…お願いします…」
イケオジの素敵な香り(推測)で浮気王子の臭いを消し去りたい。
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!一日中抱き締めてあげるよ!なんなら、今夜は一緒に寝ようか?」
マジで!?
「嬉しい…!パパ、大好き…!」
最高!イケオジに抱き締められて眠れるなんて最高!
鼻血が出そうに興奮する私の耳に不愉快な雑音が聞こえてくる。
「ナタリー、なぜ、なぜ俺と婚約解消などと…!認めん、絶対に認めん!」
認めん、とか。なんなの、この上から発言。あ、王子だからね。でもさ、おまえ、将来ミアちゃんに入れ込んで婚約解消どころか婚約破棄するんだろ!どんだけナタリアに傷をつければ気が済むんだよ!今ならまだ傷が浅いだろうが!だいたい好きでもないくせに、ナタリアのこと。避けてたじゃん、小説の中でも。
「レオンハルトなんちゃら様、」
「なんちゃら様じゃない!レオンハルト・エヴァンズだ!」
「でも、覚えておりませんので…申し訳ございません」
もう、こいついつまで絡んでくるつもりなんだろ。ドストライク三白眼だからって、かなり素敵な三白眼だからって、いい気にならないでよね!中身バカなくせに!浮気王子のくせに!
66
お気に入りに追加
1,671
あなたにおすすめの小説
浮気は許しません、旦那様
藍田ひびき
恋愛
夫婦の寝室で、夫がメイド相手に喘ぎ声を上げているのを聞いてしまったジャネット。
しかもメイドを代わる代わる連れ込んでいると知った彼女は、その場で荷物をまとめて実家へ帰った。
ところが弟相手に愚痴っているところへ、夫が追いかけてきて――?
ギャグショートです。気軽に読んで頂ければ幸いです。
※ なろうにも投稿しています。
皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。
鍋
恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。
そこで思い出した前世の記憶。
進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。
そこには確かに自由があった。
後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。
皇帝の寵愛を一身に受けるために。
ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。
しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。
危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。
療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……?
設定はゆるゆるなので、見逃してください。
※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。
※溺愛目指します
※R18は保険です
※本編18話で完結
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
目が覚めたらあと一年で離縁される王妃になっていた件。
蜜柑マル
恋愛
鏡に映っていたのは、肉感的美女だった。見た目に反し中身は残念な悪役ポジのオパール王妃…『後宮の美しき薔薇』に出てくる、夫に見向きもされない粘着質な王妃…三年後に離縁され、最後は服毒自殺する王妃。
いやさ、離縁されるのは構わないけど、自殺はねー。そもそも誠意のない夫がどうなのよ。
設定は緩いです。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる