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どぐされ浮気王子のクリティカルパンチを食らった私は本当に意識を失ってしまった。ひどい。この世界、目薬あんの?抗菌目薬ジョボジョボさしたい。某商品で目をパチパチ洗浄したい。
腐ったりしたらどう責任とるつもりなんだろ…ほんと…マジ…赦せん…。
ハッと気づいた私の顔を、さらにドストライクな三白眼のイケオジが覗き込んでいた。
「ナタリア!良かった、気づいて…っ」
目の周りを赤くし、目を潤ませるこの方…
「失礼ですが、おじさまは…」
「おじさま!?ナタリアちゃん、僕だよ!パパだよ!なんで!?なんで!?おじさまなんて、やだ!パパって、いつも通りパパって呼んでよ!」
ものすごい勢いで捲し立てられ、見た目とのギャップにカウンターをくらう。でもほんっと素敵。なんなんだろ、この小説書いた人、私とおんなじ趣味なのかな。メッチャ好き、この顔。
でもなぁ。このイケオジは小説に出てきてないからわからないんだよね、パパって言われても。
「おじさま、わたくし、」
「ナタリアちゃん、イヤだ、パパって!パパって呼んで!」
「わたくし、覚えてないんです…それでも、パパとお呼びしてもよろしいのですか?」
「当たり前でしょ!パパなんだから!なんで?記憶喪失になっちゃったの?どうして覚えてないの!?」
素敵な低音に似つかわしくない喋り方をぶちかますイケオジをどうしたものかと眺めていると、不躾にも浮気王子が口を挟んできやがった。
「宰相、申し訳ない、しかし、ナタリーは俺のことはわかる。な、そうだよな、ナタリー」
自分だけは特別!みたいなドヤ顔なんなの。ドストライクの三白眼じゃなければ顔に油性マジックで落書きしてやるのに、くそったれ。
「レオンハルト殿下、わたくしの婚約者だった方ですね、でも、お名前しか存じ上げません。レオンハルトなんちゃら様」
かろうじてレオンハルトって覚えてて良かった☆
「なんちゃら!?」
なんちゃらは無視してイケオジに切ない視線を投げ掛ける。
「おじさま、」
「パパ!」
パパ、は正直抵抗強いなぁ…。私、今までの父親のこと、「お父さん」って呼んでたし。
「…お父様でもよろしいですか?」
イケオジは寂しそうな顔をした。その捨てられた子犬のような、キュンキュンないちゃいそうなかわゆさ…3秒前の自分のバカな発言を今すぐ土下座して謝りたい。
「…慣れるまでは、我慢する。でも、なるべく早くパパって呼んでね、ナタリアちゃん!で?どうしたの?」
「わたくし、記憶がまだらな感じで」
ぶん投げちゃったから小説読んでない、最後まで。こういう異世界転生ものって、今までの記憶はきちんと受け継いでる上で前世の記憶を持ってる気がするんだけど…私は、今のところ小説の記憶しかないみたい。このどぐされ浮気王子も、イラストでドストライクで「レオンたん!素敵!ぺろぺろしたい!」って思ってたけど、婚約者いながらヒロイン(ヒロイン視点だからメッチャヒロインびいきな展開)にメロメロになって婚約者ないがしろにするってのが…見た目、イラストドストライクなだけに浮気王子ってのが赦せなかったんだよね。
「なので、レオンハルト殿下の婚約者は務まりません。レオンハルト殿下は、ミア様がお好きなわけですし、婚約者をはずしていただきたいのです…」
恥ずかしい。恥ずかしいが、言う。恥ずかしさのあまり涙目で言ってみる。
「お願い…パパ」
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!記憶喪失なんだし、仕方ないもんね!良かった、もう嫁に出さなくて済む!無理矢理結ばされた婚約だからね!今からあのバカ国王に、解消するよう突きつけてくるからね!安心して、ナタリアちゃん!ずーっとおうちにいていいからね!パパがずーっと面倒みてあげる!ナタリアちゃん、頭いいから領地経営とかできちゃうでしょ、パパの跡をつぎなさい!女領主になりなさい!ね!」
「パパ…嬉しい、ありがとうございます」
私はおじさまをじっと見つめた。ほんっと素敵。こんなイケオジがお父様だなんて…!最高…!あ、そうだ。
「パパ、わたくし、不安で…パパに抱き締めていただきたいのです…お願いします…」
イケオジの素敵な香り(推測)で浮気王子の臭いを消し去りたい。
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!一日中抱き締めてあげるよ!なんなら、今夜は一緒に寝ようか?」
マジで!?
「嬉しい…!パパ、大好き…!」
最高!イケオジに抱き締められて眠れるなんて最高!
鼻血が出そうに興奮する私の耳に不愉快な雑音が聞こえてくる。
「ナタリー、なぜ、なぜ俺と婚約解消などと…!認めん、絶対に認めん!」
認めん、とか。なんなの、この上から発言。あ、王子だからね。でもさ、おまえ、将来ミアちゃんに入れ込んで婚約解消どころか婚約破棄するんだろ!どんだけナタリアに傷をつければ気が済むんだよ!今ならまだ傷が浅いだろうが!だいたい好きでもないくせに、ナタリアのこと。避けてたじゃん、小説の中でも。
「レオンハルトなんちゃら様、」
「なんちゃら様じゃない!レオンハルト・エヴァンズだ!」
「でも、覚えておりませんので…申し訳ございません」
もう、こいついつまで絡んでくるつもりなんだろ。ドストライク三白眼だからって、かなり素敵な三白眼だからって、いい気にならないでよね!中身バカなくせに!浮気王子のくせに!
腐ったりしたらどう責任とるつもりなんだろ…ほんと…マジ…赦せん…。
ハッと気づいた私の顔を、さらにドストライクな三白眼のイケオジが覗き込んでいた。
「ナタリア!良かった、気づいて…っ」
目の周りを赤くし、目を潤ませるこの方…
「失礼ですが、おじさまは…」
「おじさま!?ナタリアちゃん、僕だよ!パパだよ!なんで!?なんで!?おじさまなんて、やだ!パパって、いつも通りパパって呼んでよ!」
ものすごい勢いで捲し立てられ、見た目とのギャップにカウンターをくらう。でもほんっと素敵。なんなんだろ、この小説書いた人、私とおんなじ趣味なのかな。メッチャ好き、この顔。
でもなぁ。このイケオジは小説に出てきてないからわからないんだよね、パパって言われても。
「おじさま、わたくし、」
「ナタリアちゃん、イヤだ、パパって!パパって呼んで!」
「わたくし、覚えてないんです…それでも、パパとお呼びしてもよろしいのですか?」
「当たり前でしょ!パパなんだから!なんで?記憶喪失になっちゃったの?どうして覚えてないの!?」
素敵な低音に似つかわしくない喋り方をぶちかますイケオジをどうしたものかと眺めていると、不躾にも浮気王子が口を挟んできやがった。
「宰相、申し訳ない、しかし、ナタリーは俺のことはわかる。な、そうだよな、ナタリー」
自分だけは特別!みたいなドヤ顔なんなの。ドストライクの三白眼じゃなければ顔に油性マジックで落書きしてやるのに、くそったれ。
「レオンハルト殿下、わたくしの婚約者だった方ですね、でも、お名前しか存じ上げません。レオンハルトなんちゃら様」
かろうじてレオンハルトって覚えてて良かった☆
「なんちゃら!?」
なんちゃらは無視してイケオジに切ない視線を投げ掛ける。
「おじさま、」
「パパ!」
パパ、は正直抵抗強いなぁ…。私、今までの父親のこと、「お父さん」って呼んでたし。
「…お父様でもよろしいですか?」
イケオジは寂しそうな顔をした。その捨てられた子犬のような、キュンキュンないちゃいそうなかわゆさ…3秒前の自分のバカな発言を今すぐ土下座して謝りたい。
「…慣れるまでは、我慢する。でも、なるべく早くパパって呼んでね、ナタリアちゃん!で?どうしたの?」
「わたくし、記憶がまだらな感じで」
ぶん投げちゃったから小説読んでない、最後まで。こういう異世界転生ものって、今までの記憶はきちんと受け継いでる上で前世の記憶を持ってる気がするんだけど…私は、今のところ小説の記憶しかないみたい。このどぐされ浮気王子も、イラストでドストライクで「レオンたん!素敵!ぺろぺろしたい!」って思ってたけど、婚約者いながらヒロイン(ヒロイン視点だからメッチャヒロインびいきな展開)にメロメロになって婚約者ないがしろにするってのが…見た目、イラストドストライクなだけに浮気王子ってのが赦せなかったんだよね。
「なので、レオンハルト殿下の婚約者は務まりません。レオンハルト殿下は、ミア様がお好きなわけですし、婚約者をはずしていただきたいのです…」
恥ずかしい。恥ずかしいが、言う。恥ずかしさのあまり涙目で言ってみる。
「お願い…パパ」
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!記憶喪失なんだし、仕方ないもんね!良かった、もう嫁に出さなくて済む!無理矢理結ばされた婚約だからね!今からあのバカ国王に、解消するよう突きつけてくるからね!安心して、ナタリアちゃん!ずーっとおうちにいていいからね!パパがずーっと面倒みてあげる!ナタリアちゃん、頭いいから領地経営とかできちゃうでしょ、パパの跡をつぎなさい!女領主になりなさい!ね!」
「パパ…嬉しい、ありがとうございます」
私はおじさまをじっと見つめた。ほんっと素敵。こんなイケオジがお父様だなんて…!最高…!あ、そうだ。
「パパ、わたくし、不安で…パパに抱き締めていただきたいのです…お願いします…」
イケオジの素敵な香り(推測)で浮気王子の臭いを消し去りたい。
「もちろんだよ、ナタリアちゃん!一日中抱き締めてあげるよ!なんなら、今夜は一緒に寝ようか?」
マジで!?
「嬉しい…!パパ、大好き…!」
最高!イケオジに抱き締められて眠れるなんて最高!
鼻血が出そうに興奮する私の耳に不愉快な雑音が聞こえてくる。
「ナタリー、なぜ、なぜ俺と婚約解消などと…!認めん、絶対に認めん!」
認めん、とか。なんなの、この上から発言。あ、王子だからね。でもさ、おまえ、将来ミアちゃんに入れ込んで婚約解消どころか婚約破棄するんだろ!どんだけナタリアに傷をつければ気が済むんだよ!今ならまだ傷が浅いだろうが!だいたい好きでもないくせに、ナタリアのこと。避けてたじゃん、小説の中でも。
「レオンハルトなんちゃら様、」
「なんちゃら様じゃない!レオンハルト・エヴァンズだ!」
「でも、覚えておりませんので…申し訳ございません」
もう、こいついつまで絡んでくるつもりなんだろ。ドストライク三白眼だからって、かなり素敵な三白眼だからって、いい気にならないでよね!中身バカなくせに!浮気王子のくせに!
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