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オーウェンの瞳は、いつでも私を探し求めていた。目が合うと切なげに瞳を歪めるオーウェンを思い出し、胸がゾクゾクする。私を守るためだからと、私を遠ざけておきながら、…ツラかったのは私ではなくオーウェンだったのかもしれない。それも、真実を聞かされ心に余裕ができたから気付けたことではあるのだが。
ソフィアは両手でオーウェンの頬を挟み、そっと額を近づける。
「…う」
眉をしかめたあと、うっすらと目を開けたオーウェンは、自分の身に起きていることがわからず、
「…ソフィア」
と微笑んだ。
「僕が、可哀想になって、出てきてくれたのかい」
「そうですよ、オーウェン様。嬉しいですか?」
頭を撫でてやると、ソフィアの手に自分から擦り付けてくる。初めて見せられる、その甘えた様子にソフィアは嬉しくなり目を細めた。なんて、可愛らしい…。あの変態義兄の気持ちが少しだけわかるような気持ちになる。
「ソフィア…好き…ずっと、ここにいたい…」
「いいですよ、オーウェン様。ずっといていいですよ」
「…ほんとに?」
「ええ、本当です」
オーウェンの瞳が途端に潤む。
「ほんとに、いいの」
「いいですよ」
「…じゃあ、キスして。誓いの、約束のキスをしてよ。僕を好きだって、ずっと一緒にいてくれるって、約束してよ…っ、ん…っ」
駄々っ子のように涙を溢すオーウェンの唇が、柔らかな感触で塞がれる。頬をそっと撫でられ、髪の毛を撫でられ、その感触が離れていく。
「…ソ、フィア」
「二度はありませんよ、オーウェン様。もう、間違ってはイヤですよ…私を、離さないで、…ずっと、側に置いてください」
コクリと頷いたオーウェンは、顔を赤らめ「…もっとして」とソフィアに手を伸ばす。艶やかに微笑んだソフィアは、
「…ええ。オーウェン様が欲しいだけあげます」
と優しくその唇を塞いだ。
ソフィアは両手でオーウェンの頬を挟み、そっと額を近づける。
「…う」
眉をしかめたあと、うっすらと目を開けたオーウェンは、自分の身に起きていることがわからず、
「…ソフィア」
と微笑んだ。
「僕が、可哀想になって、出てきてくれたのかい」
「そうですよ、オーウェン様。嬉しいですか?」
頭を撫でてやると、ソフィアの手に自分から擦り付けてくる。初めて見せられる、その甘えた様子にソフィアは嬉しくなり目を細めた。なんて、可愛らしい…。あの変態義兄の気持ちが少しだけわかるような気持ちになる。
「ソフィア…好き…ずっと、ここにいたい…」
「いいですよ、オーウェン様。ずっといていいですよ」
「…ほんとに?」
「ええ、本当です」
オーウェンの瞳が途端に潤む。
「ほんとに、いいの」
「いいですよ」
「…じゃあ、キスして。誓いの、約束のキスをしてよ。僕を好きだって、ずっと一緒にいてくれるって、約束してよ…っ、ん…っ」
駄々っ子のように涙を溢すオーウェンの唇が、柔らかな感触で塞がれる。頬をそっと撫でられ、髪の毛を撫でられ、その感触が離れていく。
「…ソ、フィア」
「二度はありませんよ、オーウェン様。もう、間違ってはイヤですよ…私を、離さないで、…ずっと、側に置いてください」
コクリと頷いたオーウェンは、顔を赤らめ「…もっとして」とソフィアに手を伸ばす。艶やかに微笑んだソフィアは、
「…ええ。オーウェン様が欲しいだけあげます」
と優しくその唇を塞いだ。
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