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婚約を結んでから3ヶ月が過ぎたころ、ジェンキンス侯爵はオーウェンにソフィアの双子の兄であるチェイサーを会わせた。チェイサーも栗色の髪の毛に緑色の瞳で、カラダ付きもソフィアにそっくりだった。違うのは髪の毛の長さだけだ。

挨拶を終えたチェイサーは、興奮したように「殿下、」と言うと、

「殿下と妹が将来結婚するということは妹は王妃になるわけですよね、僕がお側で二人を支えます、」

「…まだ決まってないよ」

オーウェンのヒンヤリとした口調に、一瞬虚を衝かれたようになったチェイサーは、しかしオーウェンが微笑んでいたため再度口を開いたが、言葉が出る前に止めたのはジェンキンス侯爵だった。

「チェイサー、不敬だぞ、控えろ」

「…っ、父上、僕はただ、」

言い募ろうとしたチェイサーは、しかしながら父親に冷たく見据えられ、いつもとは違う雰囲気に黙るしかなかった。

「オーウェン殿下にご挨拶する時間をいただいただけだ。それをおまえは、今、何を言った?…殿下、愚息のためにしばしお時間をいただけませんか」

無言で頷くオーウェンを確認し、ジェンキンス侯爵はチェイサーを鋭く睨み付けた。

「何を勘違いしているのかわからんが、おまえはオーウェン殿下の婚約者の兄、というだけだ。なぜ側近になるような口振りで話す?そもそも殿下が仰ったように、殿下は立太子されたわけでもない、ただ、第1王子という立場でいらっしゃるだけだ。未来の国王、王妃だなどと、痴れ者が!」

チェイサーは、なぜこんなに父親が怒るのかまったく理解できなかった。オーウェンが国王に一番近い王子であることは実力からしても周知の事実であり、ましてやその婚約者である妹のソフィアにオーウェンはベタ惚れなのだ。自分を登用しないわけがないと、そう考えていたから。

「しかし僕は、ソフィアの兄なんですよ!?」

「…だから?だから、兄だから側近になるのが当然だと?有無を言わせぬほどの、周囲が納得するだけの実力を知らしめたのであれば、むしろ登用されて然るべきだろう。それを兄だからだと?おまえはソフィアを不幸にしたいのか!」

「何を仰っているのかわかりません!」

するとオーウェンが徐に口を開いた。

「キミが言ってることはね。ソフィアが、僕の寵愛をいいことに自分の血筋を優先させるようなバカ女であり、僕もソフィアを愛してるがためにソフィアの言うことなら盲目的になんでも叶える、それこそ権力を笠にきてでも、という愚か者だと言っているんだよ」
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