逃げたら追いかけられた

２

気付いたら朝だった。上杉に言われたことがグルグル頭を回り、一睡もできなかった。

「はは…っ、」

そうか、そうだったんだ。

社内でのあれは、照れ隠しなんだと思ってた。関係を知られると揶揄われるから、バレないようにしてるんだと。

そのくらい、二人のときは優しくて、甘えてきて、…たくさん、抱き合った。

でも、そうじゃなかったんだ。

涙も出なかった。自分がバカすぎて。上杉の考えを見抜けず、いい気になってた自分が。愛されてるなんて勘違いしてた自分が。

よかった、わかって。まだ間に合う。

「吉田部長、朝から申し訳ありません、いま、よろしいですか」

それならいい。私ももう次に行く。

さよなら、上杉。