断罪された悪役令嬢たち

蜜柑マル

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カーニー侯爵家

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「たぶんさぁ、クリス君は周囲が引いちゃうくらいヴァイオレットちゃんしか見えてないから、この男爵令嬢の不思議な何かに引っ掛からなかったんだろうねぇ。クリス君、ヴァイオレットちゃんを堂々と観察したいなら、さっきも言ったけど俺に手を貸してくれないかなぁ」

ジョアンの言葉にクリスフォードは躊躇うことなく頷き、「何をすればいいのですか」と聞いた。堂々と観察とは、ただの盗撮だろうに…とカーニー侯爵は思ったものの、自分もスチュアートをどうにかしたいため、そこはあえて流すことにした。

「これから先も、その女に心酔してるふりをして、いろいろ情報をあげてくれないかな?もし、婚約者たちにこれ以上の危害を加えそうなときは、なんとか君に防いで欲しい。俺たちが手を出してしまうと下手に警戒されちゃうだろうし。…団長」

ジョアンの細められた目が俺を見る。

「俺は、ルーサー殿下がこのまま国王になるならこの国を出る。この、マクマナス公爵令嬢への暴力映像を見せながら陛下に話してくれる?これを見ても陛下が動かないなら、俺はエリザベスちゃん連れて出て行くね」

「…おまえ、いつからエリザベス嬢を見初めてたんだ」

俺の言葉を無視して、ジョアンは「あとさぁ、」と続ける。

「騎士団長の息子は一人息子だけど、こんなふうに平気で女性に暴力振るうような奴が武のトップにたつなんて認められないからねぇ。こいつも潰す。申し訳ないけど、団長の息子も潰すね」

「それに関しては異議はない。スチュアートは俺の大事なスージーを傷つけた。あいつを跡継ぎにしない理由ができるなら喜んで協力する」

ジョアンはキョトンとしたあと、「そういうとこだよ」と笑った。なんだよ。何がだ。

「じゃ、団長、いますぐ行って、陛下のとこに」

とジョアンが言った瞬間、俺のカラダは陛下の執務室に居た。近衛騎士に剣を向けられて焦る中、頭に何かがぶつかる。…魔道具だ。あの野郎…。

「…カーニー侯爵、どうした。おまえたち、下がれ」

陛下の一声で近衛騎士たちが部屋を出て行く。斬られなくてよかった、と胸を撫で下ろしつつ、俺は事のあらましを説明した。

「王妃が何人かの学生に影をつけたい、と言っていたのはこれが原因か」

思いがけない言葉に陛下を見ると、感情の読めない顔で魔道具の映像をじっと見ていた。

「王命で決まった婚約者を大事にしないどころか、暴力まで振るうとは。これは俺を殴りつけたも同然だな。しかし、いま呼び出してルーサーを叱りつけたところでただ巧妙になるだけで一向に変わらんだろう。何かいい案はあるのか」

「まだなんとも…殿下、イングラム侯爵子息、それと我が愚息がこの女に入れあげて各々の婚約者を蔑ろにしている、というのが現状ですので。オブライアン公爵子息は正常ですが、…婚約者に対する執着が気持ち悪すぎて何かする危険性は感じます。でも彼にスパイになってもらうしかないですね。ジョアンが、学園に魔道具をつけると言っていましたから、それ以外の場所を影の方々に協力いただけると助かります」

「おまえの息子はいいのか?一応長男だろ?」

「陛下、先日ご報告したと思いますがスージーが出て行ったのは、」

陛下は手を大きく振ると、

「わかった、皆まで言うな、つまり居なくなっていい、ってことだな。俺もルーサーは諦める。こりゃダメだ。俺に喧嘩を売ってる、ってことすら理解できないぼんくらが国を導けるわけがない。カーニー侯爵、悪いが王妃を呼んでくれるか?ついでにテイラーも呼べ。宰相に見つかると面倒だから、オブライアン子息は帰せ」

「わかりました」

ジョアンの防音魔法の中で、陛下、王妃、俺、ジョアンの話し合いは夕方まで続いた。
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