どうぞ、お好きに

蜜柑マル

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「アリア、君の父上は…俺と結婚したというのに、君のことを諦めようとしなくてね。王命だということを無視して、君を俺から奪おうとしたんだよ。俺が何年もかけてやっと手に入れた君を。だからね、隣国に行った犯罪者の片棒を担いでいたことにしてもらったんだ、第二王子殿下…いや、今は王太子殿下に。もうこの国に、君の父だった男はいない。まあ、覚えていない君にはどちらでも構わないだろうけど」

父が、この国にいない…?

「それで、君の兄上…アリアは覚えていないだろうが、一応君と血縁関係にある兄上に、ウェスト侯爵を継がせることを決めたんだが、彼は侯爵として独り立ちするには心許なくてね。だから僭越ながら、俺が兄上のお手伝いをすることにしたんだ。もうそろそろ、手を離しても大丈夫だ。優秀なブレーンも付けてきたから。アリアは覚えていないだろうが、ウェスト侯爵領は安泰だから安心していい。覚えていないだろうが」

…さっきから、何度も何度も「覚えていないだろうが」って当て擦りみたいに言うのはなぜなんだろう。すべてを見透かすような鋭い視線に恐ろしさしかない。
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