どうぞ、お好きに

蜜柑マル

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「…私に、恋…?」

「そうだよ。俺は、君が…公爵家嫡男という肩書きをもってしても勝てない、それこそ王家という肩書きしかないボンクラの婚約者である君が好きだったんだ。ずっと、ずっとね」

昏くたゆたう瞳を向けられ、背中がゾクリとする。そんな私を嬉しそうに見た男は、「続けるね」と話しはじめる。

…第二王子殿下は、俺にこう持ち掛けた。

違法な薬物を作り、隣国で売りさばいていると噂のある侯爵家の娘と婚約を結べと。

隣国はその薬物のせいで犯罪が横行し、酷い被害を被っている。犯人の目星はついたが確実な証拠がない。確実な証拠を手に入れてくれれば、国としての責任は問わない、賠償も請求しない、ただし、身柄は引き渡してもらう。

それだけでは俺にはなんの得もない。それどころか、犯罪者と関わることになってしまう。

そう言うと、「この国では犯罪者にしない」と答えが返ってきた。隣国の王太子が娘に惚れたことにして、おまえから奪って花嫁として連れていく。もちろん親である侯爵も結婚式に参加するため着いていくわけだから、あとはどうとでもしてやる。一人息子はまだ幼く加担していないから、親父が隣国で不慮の事故にあったことにして後見人をつけて侯爵領は存続させるという。
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