どうぞ、お好きに

蜜柑マル

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「奥様、お目覚めですか…奥様、」

聞こえてきた声にぼんやりと目をあける。

目の前には、無表情の女性の顔。

「旦那様がいらっしゃらないからと言って、少し気を緩ませすぎではございませんか?仮にも奥様は公爵家嫡男の妻なのですよ」

あきれたような声音に、侮蔑の音が混じる。なぜこんなふうに敵意を向けられなくてはならないのか。こんなところで、…

カラダを起こし、その女性と目線を合わせる。途端に狼狽えたような顔になった。

「…奥様?」

私は奥様なんかじゃない。

「…ここはどこですか。私はなぜここにいるんでしょう。私は…私は、」

私は今日、ここから出ていく。記憶を失ったとなれば、あの男は容赦なく私を離縁し追い出すだろう。それこそ、大喜びで。理由が明確なのだから誰に文句を言われることもない。あの男は私を愛していないどころか、心の底から憎んでいるのだから。
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