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第ニ章

動き出す、二度目の人生①

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突然のお父様の言葉にポカンとする。
「私が、魔法ですか…?」

前回の人生で魔力があるなどと言われたことはなかった…するとお母様が立ち上がり、「ヴィーにはあるよ、魔力が」と、私の手を取りながら言った。

「え…!?
わ、私に?私、お母様、私…」

「落ち着いて、ヴィー」

お母様は、私の手を優しく撫でる。
「さあ、深呼吸して。ゆっくり、吸って…そう、次は吐いて…そうそう。上手だよ」

そう言いながら右手を私の背に当ててくれる。温かい何かが、じんわり染み込んでくる感じがしてお母様を見ると、「わかるかい?」と言った。

「これは…?」

「これが、お母様の魔力だよ。感じることができるのがヴィーにも魔力がある証拠だ」

「でも、私、前回の人生で魔力があるなんて一度も…」

「それは多分…推測だけれど、お母様がヴィーの魔力を自覚させてあげられる前に、いなくなってしまったからではないかな」

私とお母様が目を合わせて話をしていると、お父様が「ちょっと!僕もいれて、仲間にいれて!魔力なくてもいれて!」と間に割って入ってきた。

「別に仲間外れにしてないだろう。
まったく大人げない…」

お母様はお父様を睨むと「少し落ち着け」と言った。

「ヴィー」

「はい、お母様」

「魔力というのはね、ひとりひとり持っている量が異なる。
カーディナル魔法国の王族は魔力が高い。特に、黒い髪、赤い目を持つ王族は。これは先ほど言ったね?
私たち貴族は、王族より魔力は低く、平民になると更に低いと言われている。
お母様は、貴族クラスでもあまり高いほうではないんだが…ヴィーは、お母様よりも魔力が高いんだよ」

「でも…自分ではわかりません」

「そうだね。自覚するにはまだ年齢が低いんだろう。ただ、本人に自覚がなくても魔力を持っている人間からは、その人がどのくらいの量を持っているかわかるんだよ」

お母様は眉間にシワを寄せると、

「通常、10歳あたりで親が…先ほど私がヴィーにやったように、自分の魔力を流して、それを感じさせることから始めるんだ。
相手の魔力を感じられるようになったら、次に自分の中にある魔力を呼び起こす…自覚する、と言えばいいのかな。そういう訓練をするんだよ」

「じゃあ、前回は、ヴィーが10歳の時にシーラがいなくなったから…だから、魔力があることを自覚できなかったってこと?」

「王族くらいの強い魔力だと、産まれたときからあふれでているらしいから自覚するとかしないとかの問題ではないらしいが。
貴族クラスはそういう訓練が必要になるはずだ」

少なくとも私はそうだった、とお母様は言った後、

「カーディナル魔法国では、私の兄弟や友人たちもだいたいが10歳前後にそういう訓練を受けて、魔力を自覚し、そこから使いこなす、という段階を踏んでいたから…。

私も、…前回の?未来の?私も、そのくらいになったら、ヴィーに教えようとしてたのか…はたまた、カーディナル…実家とは疎遠だったから、魔力を自覚させるつもりがなかったのか…
それはわからないな」

ふーん…とお父様は首をかしげると、私を見て

「ヴィー、自分の中に魔力があるって感じるかい?」

「…よくわかりません」

「僕も魔力があれば、いろいろアドバイスもできるけど…こればかりはなぁ。
やっぱりさ、そういうことも含めて、シーラとヴィーはカーディナルに行くべきだよ。
…僕も一緒に行きたいなぁ」

「…おまえは何を言ってるんだ」

お母様がお父様を睨み付ける。

「いや、だってさ。シーラと結婚する、そのご挨拶にって言ったのに、シーラとお義父さんが大喧嘩しちゃって、僕、シーラの実家に行ったことないんだよ?
何も、さっき言ったみたいに3年も4年もずっとカーディナルに僕もいる!って言ってるわけじゃないよ。
まぁ、そうしてもいいけど。
仕事丸投げじゃ、無責任なあいつと一緒になっちゃうから。そんなことはしません」

ムスッとした顔でお父様は拗ねたように言う。

「じゃあ、」

と言ってお母様は自分のお腹に手を当てる。

「この腹の子が産まれたら、カーディナルに来たらいい。
産まれるまであと4ヶ月ほどだ…それだけあれば、おまえの仕事もある程度整備できるんじゃないか?」

「そうだね。そうしよう!
産まれた子どもに会いに行くのに、許可を出さないようならその時はホントにあいつを見限ることにする」

お父様はものすごくいい笑顔で言ったが、目は笑っていなかった。

「ヴィー」

「はい、お母様」

「ヴィーのおばあ様は、ヴィーと同じくらいの魔力なんだ。
お母様ももちろん一緒にするが、赤ちゃんが産まれるとなかなかヴィーの特訓に付き合えなくなることもあるだろう。
だから、おばあ様に魔力を呼び起こす、そして魔法を使えるようにするための訓練をしてもらうのもいいかもしれないな」

「はい!」

私はまだ会ったことのないおばあ様に想いを馳せた。

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