上 下
76 / 161
まさかのリアルBL

しおりを挟む
「フィ、フィー、あの…あまり見ないでもらえますか…緊張します」

「あ、ごめんね、ギデオンさん。鍛えてるだけあってキレイなカラダだなぁ、って思って」

ペタリ、と胸に手のひらを乗せると、「ひゃうっ」と悪魔が変な声を出した。面白い。

悪魔は恨めしそうな顔で私を見ると、

「…フィーは、わたくしが見てもまったく恥ずかしくないのですね。やっぱりわたくしのことを好きではないから、緊張したりしないのですね」

と言う。

そうは言っても、バスタオルで覆っているからあまり恥ずかしさはないのだが…。人を痴女呼ばわりはやめて欲しい。

「湯船に浸かる前に、洗ってしまいますね。フィー、座ってください」

悪魔は私を椅子に座らせるとシャワーで髪を流し始めた。サワサワされてくすぐったい。

「ギデオンさん、もう少し強くても大丈夫だよ」

「わ、わかりました。すみません、誰かの髪を洗うなんて初めてで。初めてがフィーで、とても嬉しいです」

「私も腕が治ったらギデオンさんの髪の毛洗うからね」

「え!?」

悪魔の手を離れたシャワーノズルが下からお湯を容赦なく撒き散らす。

「ギデオンさん、何!」

「す、すみません…フィーが、変なことを言うからです!」

慌ててお湯を止めた悪魔は私の顔をタオルで拭いてくれた。

「私が何を言ったの。変なことって何」

見上げると、悪魔は真っ赤な顔で、「いや、あの、その、」とモゾモゾしていたが、

「…フィーは、腕が治っても、わたくしとお風呂に入ってくれるのですか」

「入るよ。だって、洗ってもらってばっかりじゃ悪いでしょ。背中も流してあげるよ」

悪魔は「そうですか…」と呟くと、なんとなく嬉しそうな顔になった。

髪を洗い終え、カラダはどうするか聞かれたので自分で洗うことにした。悪魔はその間、自分の髪を流し始めた。カラダを洗いながら、悪魔のカラダをじっと観察する。本当にキレイなカラダだなぁ…。騎士として、鍛練している努力の証なんだろう。

「ねぇ、ギデオンさん」

「フィー?どうしました?」

悪魔はお湯を払うようにプルプルと首を振り、私に視線を移す。カラダとともに顔もキレイ。

「その変な呪いみたいなの、なんとかなるといいのにね」

悪魔は私の言葉を聞くと、キュッと眉をしかめ、プイッと顔を逸らした。

「わたくしを好きじゃないのにわたくしが可哀想だからエッチしてあげようって思ったけど、やっぱりイヤになったんですね。別に構いません、エッチできなくたって。フィーに好きだと思われてないんですから」

そのまま背中を向けて髪をゴシゴシし始める。…なんて言ったら伝わるんだろうなぁ、この気持ちは…。

ギデオンさん、と何度か呼んでみたが、悪魔は不貞腐れてしまったようで返事をしない。仕方なく湯船に入ると、悪魔も隣に入ってきた。

「国賓用だけあって、広いお風呂だね」

そういえば今まで気にしたことなかったけど、ソルマーレ国は入浴剤とかあるのかな。ポプリで匂袋を作って入れたら香りがいいかもしれない。

そんなことをぼんやり考えていると、悪魔にヒョイッと持ち上げられ、膝の上に乗せられた。背中に、悪魔の肌の感触が伝わってくる。

「フィー…。さっきのはウソです。わたくしは、フィーを抱きたい。フィーに、触れたいんです。わたくしにも触れて欲しい…。フィーが、わたくしを好きじゃなくても」

そう言って悪魔は、私のお腹に手を回した。

「…フィーのお腹、お肉がなくなりましたね。でも、柔らかい。気持ちよさは変わらないです」

以前のように私の腹を揉む悪魔は、もう片方の手でバスタオルを外し、私の胸に手を当てた。

「フィーのおっぱい…柔らかいです」

お湯の中でやわやわと揉まれるが、ソフィアのカラダは特に何も感じなかった。なんにも経験がないからな、なんて思っていたら、悪魔に頂をキュッとされてカラダがビクリと跳ねた。悪魔は私の背中に唇を押し当てると、ジュッ、と吸い上げる。

「フィーの背中に、わたくしのシルシをつけてもいいですか。たくさん、たくさん、つけて、…フィーにも、薔薇を咲かせたい」

「…え?」

悪魔は無言で何度も私の背中を吸い上げる。その唇の熱さに、カラダの奥が疼いてくる。

「ギデオンさん、」

「フィー、好きです。フィーがなんとも思ってなくても、わたくしはフィーが好きです。きっと、…わたくしを好きにさせてみせます」

悪魔はまたバスタオルを戻すと、私を抱き上げ浴室から出た。濡れたタオルを外し、後ろから新しいタオルで髪の毛から全身を拭いてくれる。

「フィー、拭けました。パジャマは着れますか?」

「うん、ありがとう」

振り向くと、悪魔は背中を向けて髪を拭いていた。下着をつけながら何気なく悪魔を見ると、右の肩甲骨のあたりが赤くなっている。

「ギデオンさん、これ、」

そっと指で触れ、よく見ると、そこには赤い薔薇が咲いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。

藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」 妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。 全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。 刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。 どうやら時が、一年前に戻ったようです。 もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全14話で完結になります。

婚約破棄を告げられた瞬間王子やめろ抗議が始まりました~悪役令嬢はみんなのアイドルだったようです~

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!そして私はリアンヌと婚約する!」 「ユーザ様……嬉しいです」 ああ、やっぱりヒロインには敵わないんだなぁと、これから起こることを予測して泣きそうになった時だった。 「ふざけるのもいい加減になさいませ!このクソ王子!」 「誰だ!今私を侮辱したのは!不敬罪に……っ」 「私が言いました」 「あー、私も言いました」 「私も言ってしまいましたわ」 これは………なんですの? 婚約破棄シリーズ主人公置いてきぼりに続く第四弾……いつシリーズ化したか、それは私にもわからない。 とりあえず婚約破棄シリーズタグは荷居人をつけました。こちらは好評なため番外編も絶賛公開中です! 可愛らしい血が流れているためR15に。 表紙ははつ様に描いていただきました! たくさんの応援ありがとうございますm(_ _)mご指摘は修正させていただきました。 また、明らかな中傷コメントはおやめください。作品を読んでのご意見ならともかく明らかに暴言と見なされる言葉や自分勝手な強制するような脅迫めいた言い分はアルファポリスのガイドラインの禁止事項にもなります。何事も度が過ぎた行為は私以外の作品でもやめましょう。

ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼
ファンタジー
 酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。  私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!    辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!  食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。  もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?  もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。  両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?    いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。    主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。  倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。    小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。  描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。  タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。  多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。  カクヨム様にも載せてます。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す

夏目萌
恋愛
レノアール地方にある海を隔てた二つの大国、ルビナとセネルは昔から敵対国家として存在していたけれど、この度、セネルの方から各国の繁栄の為に和平条約を結びたいと申し出があった。 それというのも、セネルの世継ぎであるシューベルトがルビナの第二王女、リリナに一目惚れした事がきっかけだった。 しかしリリナは母親に溺愛されている事、シューベルトは女好きのクズ王子と噂されている事から嫁がせたくない王妃は義理の娘で第一王女のエリスに嫁ぐよう命令する。 リリナには好きな時に会えるという条件付きで結婚に応じたシューベルトは当然エリスに見向きもせず、エリスは味方の居ない敵国で孤独な結婚生活を送る事になってしまう。 そして、結婚生活から半年程経ったある日、シューベルトとリリナが話をしている場に偶然居合わせ、実はこの結婚が自分を陥れるものだったと知ってしまい、殺されかける。 何とか逃げる事に成功したエリスはひたすら逃げ続け、力尽きて森の中で生き倒れているところを一人の男に助けられた。 その男――ギルバートとの出逢いがエリスの運命を大きく変え、全てを奪われたエリスの幸せを取り戻す為に全面協力を誓うのだけど、そんなギルバートには誰にも言えない秘密があった。 果たして、その秘密とは? そして、エリスとの出逢いは偶然だったのか、それとも……。 これは全てを奪われた姫が辺境地に住む謎の男に溺愛されながら自分を陥れた者たちに復讐をして居場所を取り戻す、成り上がりラブストーリー。 ※ ファンタジーは苦手分野なので練習で書いてます。設定等受け入れられない場合はすみません。 ※他サイト様にも掲載中。

縦ロール悪女は黒髪ボブ令嬢になって愛される

瀬名 翠
恋愛
そこにいるだけで『悪女』と怖がられる公爵令嬢・エルフリーデ。 とある夜会で、婚約者たちが自分の容姿をバカにしているのを聞く。悲しみのあまり逃げたバルコニーで、「君は肩上くらいの髪の長さが似合うと思っていたんだ」と言ってくる不思議な青年と出会った。しかし、風が吹いた拍子にバルコニーから落ちてしまう。 死を覚悟したが、次に目が覚めるとその夜会の朝に戻っていた。彼女は思いきって髪を切ると、とんでもない美女になってしまう。 そんなエルフリーデが、いろんな人から愛されるようになるお話。

縦ロールをやめたら愛されました。

えんどう
恋愛
 縦ロールは令嬢の命!!と頑なにその髪型を守ってきた公爵令嬢のシャルロット。 「お前を愛することはない。これは政略結婚だ、余計なものを求めてくれるな」 ──そう言っていた婚約者が結婚して縦ロールをやめた途端に急に甘ったるい視線を向けて愛を囁くようになったのは何故? これは私の友人がゴスロリやめて清楚系に走った途端にモテ始めた話に基づくような基づかないような。 追記:3.21 忙しさに落ち着きが見えそうなのでゆっくり更新再開します。需要があるかわかりませんが1人でも続きを待ってくれる人がいらっしゃるかもしれないので…。

処理中です...