16 / 31
王子の所以
第二王子の帰城
しおりを挟む
マグノリアローズを一輪持って、アンドレアお姉さまの馬車を待つ。
僕の隣には、なぜかコリン・ノースがいた。
婚約発表パーティーのあと、コリン・ノースはノーザリアに帰ることなく、マグノリア城で過ごしていた。
一晩の婚約発表パーティーのためだけに王都へこさせるのがもったいない、どうせなら王都で羽を伸ばしていきなさい、という両陛下の配慮があったらしい。
ノーザリアから少ない護衛でやってきたコリン・ノースに、政務で忙しいセオドアがいつもついていられるわけもない。
結局彼女は、その余暇のほとんどをマグノリア城で過ごしていた。
城にいる者として、僕も彼女も、今日は第二王子のお迎えというわけだ。
あいかわらず、ぼーっとした表情だ。
能天気に見えるが、腹の内ではどんなことを考えているか知らない。
兄に見せている顔さえ、偽りの仮面かもしれないのだ。
兄のため、そしてルイーザ嬢のため……僕には、それを見破る責務がある。
「アンドレア様がお帰りになったぞ!」
バタバタとエントランスが騒がしくなった。
近衛につられて、僕の姿勢もぴんと伸びる。
コリン・ノースは手のひらを開けたり閉めたりしている。緊張していそうだ。
「アンドレア殿下! おやめください!」
「お待ちください! 危ないですから!」
執事の慌てた声が聞こえる。
僕は思わず扉に近づき、外を覗いた。
「風呂を用意して。汗を流したい」
姉は、ちょうど馬の背から降りたところだった。
……僕は馬車を待っていたはずなんだけど。
手綱を執事に引き渡し、アンドレアは颯爽とエントランスへと向かってくる。
そして、僕と目が合う。
「アルフレッド!」
姉はぐっとスピードを上げ、僕に向かってくる!
……! 逃げなければ!
体を動かそうとしたときには遅かった。
「大きくなったな! アルフレッド殿下!」
「痛い! 痛いです! やめてください!」
「わはは! あなたも王子なら体を鍛えなさい!」
「嫌だ~!」
姉は僕に超速で近づき、首を羽交い締めにした。首の皮膚がギチギチと音をたてている気がする。
姉が僕に出くわしたときのお約束だ……久しぶりだから油断していた。
忘れていたわけではない。姉は乱暴だ!
落ちこぼれな僕は、温和で優秀な兄と比べられるとき、「あんまり似ていない」と言われる。
しかし、姉もそろったときは別だ。
三人の真ん中でお喋りをしつづける闊達な姉の前では、その様子を止めずに見守る兄と止められない僕は、近い姿に見えるようだった。
「そうだ、花! お姉さま、見てください!」
僕は腕を伸ばしてアピールする。
すると、首を絞める力が弱まった。
「ん? マグノリアローズだ。おい、まさか!」
「はい。僕が咲かせました! お姉さまにあげます!」
「すごいじゃないか! 苦労したかいがあったな!」
「ぐえ」
角度を変えてまた首が絞められる。
しかしその角度は、ねぎらいの抱擁だった。
姉は花を僕の手から抜き取り、僕は解放される。
「はーっ、はーっ、気管がつぶれたかと思った」
「くすんだピンク。うん。素敵じゃないか。そこのメイド、私の部屋に飾りなさい」
「かしこまりました」
じっと花を見つめたあと、姉は微笑んだ。
似ていない兄と姉だけれど、柔らかく笑った顔は、セオドアに似ていると僕は思う。
「ありがとう、我が弟」
「どういたしまして」
姉はメイドにマグノリアローズを預けて言った。
勝気で活発な姉だが、けして優しさがないわけではないのだ。
僕は豪放磊落な姉が好きだった。
「……ああ、あなたは」
姉が立ちすくむコリン・ノースに気が付いた。
コリン・ノースは姉の勢いに驚き、目をまん丸と見開いていた。
姉はコリン・ノースへと近づき――
「コリン・ノース嬢でいらっしゃいますね。婚約発表パーティーに参列できず申し訳ありませんでした」
――跪いて、コリン・ノースの手をとった。
「私はアンドレア・マグナリード。どうぞよろしくお願いいたします」
「ひ、」
「……ん? コリン嬢、あなた、なにか……」
「ひいいいい! よろしくお願いいたします!」
コリン・ノースは顔を真っ赤にしてアンドレアの手を振りほどいた。
わたわたと僕の後ろにコリン・ノースが隠れる。
「……殿下たちにはまだお兄様がいらっしゃったんですか?」
「いや……アンドレアは僕の姉です」
「え? ああっ……アンドレア王女っ!?」
コリン・ノースは姉を男だと思ったらしい。
たしかに、女性がパンツスタイルで乗馬をする流行は最近のものだ。ノーザリアから出たことのなかったコリン・ノースが、パンツスタイルの人物を男だと思うのは自然なことだろう。
しかし、マグナリードの女性を王女と呼ぶなんて。コリン・ノースは僕以上に王家のしきたりを知らないみたいだ。
ノース家では、いったいどんな教育がなされているのだろう……いや、むしろ、されていないのかもしれない。
これまで僕はずっと、知らないことを指摘されてばかりだったけれど。
「たいへん失礼をいたしましたっ! 申し訳ございませんっ!」
……礼儀作法が間違っている人がいると、気になるな。
コリン・ノースはびしっと最敬礼をしている。
貴族令嬢は、目上の立場の人物に対して礼をするとき、膝をかがめて頭を下げるものだ。ルイーザ嬢は見本のようなお辞儀をしていた。
それに引き換え、コリン・ノースは……足でも悪いのだろうか。貴族令嬢が軍人と同じ敬礼をするのには、それ相応の理由があるはずなのだ。
姉は、コリン・ノースの姿をじっと見つめる。
「ノーザリアのご出身だと聞いていますが」
「はいっ! 生まれも育ちもノーザリアでございますっ!」
「では剣技は北部式ですか」
「ひっ」
コリン・ノースの顔が青ざめた。
アンドレアは首をひねる。
「あれ、違いましたか? ノーザリア軍では剣の鍛錬に力を注いでいませんでしたか?」
「アー、いえ。ワタクシ、お花とダンスばかりでしたので、剣術については……」
「そうなのですか?」
どう考えても嘘だ。
コリン・ノースは冷や汗を流している。
アンドレアはマグノリア各地の武術収集を趣味にしている。ノーザリアのように力のある軍のことは当然把握しているだろう。
すぐにばれる嘘をつくなんて……コリン・ノースは、いったい何を考えているんだ?
「お母さまーっ!」
窮地のコリン・ノースを救ったのは、アンドレアの後を追ってきたアリッサだった。
僕の隣には、なぜかコリン・ノースがいた。
婚約発表パーティーのあと、コリン・ノースはノーザリアに帰ることなく、マグノリア城で過ごしていた。
一晩の婚約発表パーティーのためだけに王都へこさせるのがもったいない、どうせなら王都で羽を伸ばしていきなさい、という両陛下の配慮があったらしい。
ノーザリアから少ない護衛でやってきたコリン・ノースに、政務で忙しいセオドアがいつもついていられるわけもない。
結局彼女は、その余暇のほとんどをマグノリア城で過ごしていた。
城にいる者として、僕も彼女も、今日は第二王子のお迎えというわけだ。
あいかわらず、ぼーっとした表情だ。
能天気に見えるが、腹の内ではどんなことを考えているか知らない。
兄に見せている顔さえ、偽りの仮面かもしれないのだ。
兄のため、そしてルイーザ嬢のため……僕には、それを見破る責務がある。
「アンドレア様がお帰りになったぞ!」
バタバタとエントランスが騒がしくなった。
近衛につられて、僕の姿勢もぴんと伸びる。
コリン・ノースは手のひらを開けたり閉めたりしている。緊張していそうだ。
「アンドレア殿下! おやめください!」
「お待ちください! 危ないですから!」
執事の慌てた声が聞こえる。
僕は思わず扉に近づき、外を覗いた。
「風呂を用意して。汗を流したい」
姉は、ちょうど馬の背から降りたところだった。
……僕は馬車を待っていたはずなんだけど。
手綱を執事に引き渡し、アンドレアは颯爽とエントランスへと向かってくる。
そして、僕と目が合う。
「アルフレッド!」
姉はぐっとスピードを上げ、僕に向かってくる!
……! 逃げなければ!
体を動かそうとしたときには遅かった。
「大きくなったな! アルフレッド殿下!」
「痛い! 痛いです! やめてください!」
「わはは! あなたも王子なら体を鍛えなさい!」
「嫌だ~!」
姉は僕に超速で近づき、首を羽交い締めにした。首の皮膚がギチギチと音をたてている気がする。
姉が僕に出くわしたときのお約束だ……久しぶりだから油断していた。
忘れていたわけではない。姉は乱暴だ!
落ちこぼれな僕は、温和で優秀な兄と比べられるとき、「あんまり似ていない」と言われる。
しかし、姉もそろったときは別だ。
三人の真ん中でお喋りをしつづける闊達な姉の前では、その様子を止めずに見守る兄と止められない僕は、近い姿に見えるようだった。
「そうだ、花! お姉さま、見てください!」
僕は腕を伸ばしてアピールする。
すると、首を絞める力が弱まった。
「ん? マグノリアローズだ。おい、まさか!」
「はい。僕が咲かせました! お姉さまにあげます!」
「すごいじゃないか! 苦労したかいがあったな!」
「ぐえ」
角度を変えてまた首が絞められる。
しかしその角度は、ねぎらいの抱擁だった。
姉は花を僕の手から抜き取り、僕は解放される。
「はーっ、はーっ、気管がつぶれたかと思った」
「くすんだピンク。うん。素敵じゃないか。そこのメイド、私の部屋に飾りなさい」
「かしこまりました」
じっと花を見つめたあと、姉は微笑んだ。
似ていない兄と姉だけれど、柔らかく笑った顔は、セオドアに似ていると僕は思う。
「ありがとう、我が弟」
「どういたしまして」
姉はメイドにマグノリアローズを預けて言った。
勝気で活発な姉だが、けして優しさがないわけではないのだ。
僕は豪放磊落な姉が好きだった。
「……ああ、あなたは」
姉が立ちすくむコリン・ノースに気が付いた。
コリン・ノースは姉の勢いに驚き、目をまん丸と見開いていた。
姉はコリン・ノースへと近づき――
「コリン・ノース嬢でいらっしゃいますね。婚約発表パーティーに参列できず申し訳ありませんでした」
――跪いて、コリン・ノースの手をとった。
「私はアンドレア・マグナリード。どうぞよろしくお願いいたします」
「ひ、」
「……ん? コリン嬢、あなた、なにか……」
「ひいいいい! よろしくお願いいたします!」
コリン・ノースは顔を真っ赤にしてアンドレアの手を振りほどいた。
わたわたと僕の後ろにコリン・ノースが隠れる。
「……殿下たちにはまだお兄様がいらっしゃったんですか?」
「いや……アンドレアは僕の姉です」
「え? ああっ……アンドレア王女っ!?」
コリン・ノースは姉を男だと思ったらしい。
たしかに、女性がパンツスタイルで乗馬をする流行は最近のものだ。ノーザリアから出たことのなかったコリン・ノースが、パンツスタイルの人物を男だと思うのは自然なことだろう。
しかし、マグナリードの女性を王女と呼ぶなんて。コリン・ノースは僕以上に王家のしきたりを知らないみたいだ。
ノース家では、いったいどんな教育がなされているのだろう……いや、むしろ、されていないのかもしれない。
これまで僕はずっと、知らないことを指摘されてばかりだったけれど。
「たいへん失礼をいたしましたっ! 申し訳ございませんっ!」
……礼儀作法が間違っている人がいると、気になるな。
コリン・ノースはびしっと最敬礼をしている。
貴族令嬢は、目上の立場の人物に対して礼をするとき、膝をかがめて頭を下げるものだ。ルイーザ嬢は見本のようなお辞儀をしていた。
それに引き換え、コリン・ノースは……足でも悪いのだろうか。貴族令嬢が軍人と同じ敬礼をするのには、それ相応の理由があるはずなのだ。
姉は、コリン・ノースの姿をじっと見つめる。
「ノーザリアのご出身だと聞いていますが」
「はいっ! 生まれも育ちもノーザリアでございますっ!」
「では剣技は北部式ですか」
「ひっ」
コリン・ノースの顔が青ざめた。
アンドレアは首をひねる。
「あれ、違いましたか? ノーザリア軍では剣の鍛錬に力を注いでいませんでしたか?」
「アー、いえ。ワタクシ、お花とダンスばかりでしたので、剣術については……」
「そうなのですか?」
どう考えても嘘だ。
コリン・ノースは冷や汗を流している。
アンドレアはマグノリア各地の武術収集を趣味にしている。ノーザリアのように力のある軍のことは当然把握しているだろう。
すぐにばれる嘘をつくなんて……コリン・ノースは、いったい何を考えているんだ?
「お母さまーっ!」
窮地のコリン・ノースを救ったのは、アンドレアの後を追ってきたアリッサだった。
610
お気に入りに追加
1,737
あなたにおすすめの小説
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。
クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」
パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。
夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる……
誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
裏切りのその後 〜現実を目の当たりにした令嬢の行動〜
AliceJoker
恋愛
卒業パーティの夜
私はちょっと外の空気を吸おうとベランダに出た。
だがベランダに出た途端、私は見てはいけない物を見てしまった。
そう、私の婚約者と親友が愛を囁いて抱き合ってるとこを…
____________________________________________________
ゆるふわ(?)設定です。
浮気ものの話を自分なりにアレンジしたものです!
2つのエンドがあります。
本格的なざまぁは他視点からです。
*別視点読まなくても大丈夫です!本編とエンドは繋がってます!
*別視点はざまぁ専用です!
小説家になろうにも掲載しています。
HOT14位 (2020.09.16)
HOT1位 (2020.09.17-18)
恋愛1位(2020.09.17 - 20)
【完結】要らない私は消えます
かずきりり
恋愛
虐げてくる義母、義妹
会わない父と兄
浮気ばかりの婚約者
どうして私なの?
どうして
どうして
どうして
妃教育が進むにつれ、自分に詰め込まれる情報の重要性。
もう戻れないのだと知る。
……ならば……
◇
HOT&人気ランキング一位
ありがとうございます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる