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我が子として育てた子供から溺愛される子魔女は惚れさせてみせろと課題を出した 11

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永遠を共に生きたいと言われ拒否する蘭夏。その顔は喜びなんて欠片もなく受け入れないというものだった。
「駄目よ!軽々しく不老不死になるなんて言わないで!!胡蝶を!彼女を見て何も思わなかったの!?彼女は永遠の命を持って後悔したわ!彼女だけじゃない!」
嘗て永遠を生きたい、永遠に若くいたい。自分のように終わりのある命には永遠は無いのか。永遠を作れないのかと永遠そのものに興味を持ち夢想して結果不老不死になった。その為に不老不死になろうとした闇魔女も闇魔道士もいた!だけどその結果みんなは後悔した!
老いる事も死ぬことさえも許されない事ほど辛いものは無かったと。そしてみな不老不死の解除をして朽ち果てていった。長い間生きていく中で孤独になり、絶望しても死なない事に。終わりないの来ない終焉に苦悩しては何回だって絶望する。
「今は良いわ!けれど必ず時が経てば遅かれ早かれあなたは絶対に不老不死になったことを後悔する!だから言わなかったのよ!」
ああ、だからだったんだ。俺があなたと永遠を生きたいと言うのは、願うのは分かってたから。
「…………。なら心配しないで。」
俺はあなたに拾われる前から不老不死だから。そう静かに告げられた。
「……………………え?」
どういう事?拾われる前から不老不死だった?だとしたら可笑しい。不老不死はその名の通り、身体は老いはしない不死の者。この子は永遠に子供の筈と思っていたら
「俺まだあなたに言ってませんでしたよね。隠してたつもりは無かったんですけど。ごめんなさい。俺、前に思い出したんです。先生の所に来るまで俺はどんな生活をしてたのか。なんで忌み子と呼ばれてたのか。先生のいる場所に来る前どのくらいいたのか。俺が他の人から何をされても死ななかったからでした。」
何日も飲み食いしなくても平気だったこと、他の人なら死ぬ病でも俺はなっても何ともならないで死ななかった、普通の人たちなら死んで当たり前の事を何回されても。
「俺は死ななかったんですよ。400年も。いや、もしかしたらもっと経過してるかも。どちらにせよずっと生きてたんです。そもそも人間が400年も生きられます?生きられないですよね?なのに俺は子供だった。俺も辛かったから、忘れてたんでしょうね。いや。あなたが初めて俺を人として扱ってくれたからあんな辛かった事を思い出さないでいられたんです。なんで不老不死なのに成長したのかは。多分俺がいた場所と今いるこの場所は根本的に何かが違うからだと思います。それか俺が。あなたを1人の女として愛してから、あなたに見合う男に成長したいって願ったからかもしれないですね。ねえ、先生。先生はさっきから俺の為、俺の事を思って言ってると言ってるけど。先生の本当の気持ちはなんですか?先生の願いはなんですか?俺の為じゃなくて先生の気持ちを教えてくれませんか?」
俺は先生の気持ちと本当の願いを聞きたいから来たんです。と告げたジャックに、蘭夏は
「っ。私は…………。あなたが」
「他の魔女となんて偽りの願いは聞きません。この際だから言いますが、あれは幻影なんですよ?」
言い終える前に遮る。やっぱり頑固だなとは言わないが。
「…………。え?幻?幻影?」
「あなたに叱られる覚悟で言いますが先生は頑固なところあるから素直にさせるつもりで見せただけなんです。」
「……。え?ならあの痕は……。」
「何でもない偽物ですよ。あの幻影とは何も無かったんです。けれどあなたを傷付けた。ごめんなさい。」
最初から何も無かった。それじゃ
「あなた、幻影と呼ぶ子にキス……。」
「フリだけですよ。本当にするわけ無いでしょう。信じないと思うでしょうけど。」
最初から何も無かった、なのに私は勝手に絶望して。永遠の夢想に閉じ籠って、挙げ句に連れ戻しにきたこの子をあんなに罵倒しては痛め付けた。
「あ、あ、あ。ごめんなさい。ごめんなさい!私は、私はあなたになんて酷いことを。」
「止めて。」
ソッと優しく抱き締めた。あまりにも痛々しく泣くから。未だにガクガク震えながら泣く蘭夏にジャックは
「こんなあなたを見たくない。」
こんなお前を見たくない。脱け殻のような私に、身体を痛め付けるだけの私を見て逝く事出来なかった彼はウィルプスは。辛そうに止めてくれと、こんなお前を見たくないと言った。ああ、ジャック君の中には彼がいるのね。もう彼はいないけれど。今愛してる彼の中に私を慈しんだ彼はいる。そう思ったら涙は止まった。言ったジャック本人は無意識だった。何故震えも涙も止まったのか分からないでいるが安心すると。
「俺と一緒に帰りましょう?先生が目覚めるの、待ってるんですよ?」
「…………。ええ。そうね。」
彼と帰ろう。そう思った時だった。
「あ~あ。夢をこんな粉々にされて。それで帰る?そんな事、させるわけ無いでしょう?」
永久の夢想は本人からしたら出るつもりは無い檻。出ようと思ったら駄目じゃない。

「全く……。」
よくも愛しの彼と理想の夢を壊してくれたわね!!そう怒りに任せてジャックを吹き飛ばす。
散々ボロボロにされた身体は少し回復しただけで防御も出来ず吹き飛んだ。
「ジャックくっ……!うんん!!」
駆け寄ろうとした蘭夏は捕まった。自分の心の欠片そのものに。
「先生っ!先生を、先生を離せ!俺も先生も一緒に帰るんだ!」
現実に戻ると言うジャックに夢想の蘭夏は鬱陶しいとばかりに見下ろす。
「そうはいかないのよ。夢は見てこその夢なの。見る相手のこの子がいなくなったら困るのよ。はあ。あともう少しで現実を完全に拒絶して夢だけ見るようになったのに全部邪魔してくれて。おまけに夢も理想の相手も粉々。しかもこの子は現実に戻ると考え出すとか。ホントに笑えないわよ。この子は閉じ込める、あなたは此処に来た後悔したまま人形になるのよ。まあ理想の相手も夢も。」
いくらでも作れるけど。そう言った途端、ジャックが崩壊させた夢想のジャックも最下層も元通りになった。これにはジャックも
「は、ウソだろ……。」
「っ!んーーんーーー!ジャック君しっかりしなさい!あなたが絶望に堕ちたら終わりなのよ!!んぐっ!んーーんーーー!!」
絶望に堕ちたら死ぬ。そうだった。俺が、絶望に堕ちたら。終わりだ。
「悪いけどな、俺はしつこいんだよ!おまけに先生に似て頑固なんだよ!!先生を現実に連れ戻すって決めたらするんだよ!何回だって崩壊でもなんでもしてやる!」
「ふん、威勢は良いのね。けどそれも何時まで保つのかしら。」
「んーーんーーー!ううう……!」
もしも彼女が。心の欠片だとしたら。それは
夢に堕ちていたい蘭夏だ。だとしたら
「邪魔よ!!」
「あぐっ!!」
『やっぱり……!』
夢から目覚めると願う私の攻撃と、現実に連れ戻すと決めてるジャック君の攻撃は効果はある。
「ジャック君。」
絶対にこの檻から出ましょう。
「は、は……。……。はい!」
絶対に出ましょう。そう言って立ち上がる。何回痛め付けても立ち上がるジャックを睨むと
「たくもぅ。足掻いてくれるわね。みっともないわねアンタたち。だけどアンタらはたった二人なのにこの人数相手にできんの?しかも此処は私たちの領域。制限はあるアンタらと違って私も彼も無制限。力も数もね。どうやっても勝てないの。此処から出られないのよ!散々私を怒らせてくれたから。愛しの彼の前で犯すところを見せ付けてあげるわ。」
「んな事させるか!」
まだアイツは出てきてない!勝機はあるわ。
この夢の欠片の恐れるアイツとは誰なのか。それは夢を見ていたい自分にとっては天敵である心の欠片だった。
「…………。」
最後まで自分の意思を貫いて。自分を強くもっていて。もう一度この夢の最下層に亀裂が入れば。私は中に入れるわ。そうすれば。この夢は全て終わりよ。

「は、は、は、は…………。」
あと、あと何人いるんだよ。全く減ってる気がしない。不老不死といえど、精神も無限ではない。肉体が死なないだけ、老いはしないだけで精神力には限りがある。
『信じろ……!』
信じろよ!先生が俺と出るって言ってるんだ!俺も先生も!此処から出られるって信じろ!何とか先生を庇って戦ってる。けれどそれも何時まで保つのか分からない。倒しても倒しても減ってる気がしない夢想の俺。疲労が溜まって隙を付かれてしまった。
「いや!離して!」
「っ!先生っ!先生今助けっ!うぐっ!」
あっという間に頭、腕、足を抑えられた俺は身動きが取れない。必死に踠くも抜け出せない。
「ジャック君っ……!いやぁ……!」
「…………………………なせ…………。」
離せええええええぇぇぇぇえええええっっっ!!と怒りに任せて叫んだ瞬間あれ程いた夢想のジャックは消し飛び再び夢の空間に裂け目が開いた。ジャックが見たのは犯されそうになって絶望して泣いた蘭夏の姿だった。
「先生を泣かせやがって…………!」
お前ら全員消し飛ばす!と叫ぶジャックに蘭夏は。
「……………………。」
聞かされたウィルプスの話を思い出した。嘗てウィルプスも怒りに支配され生きた人間たちを何十、何百と消し飛ばしたらしい。しかし多くの魔力を消耗するため
「先生、に……!近寄んな……!」
「……………………。」
今のジャック君には気力だけで、自分と出るって意思だけで戦ってるだけの状態。このままだと、二人とも助からない。未だにあちらが圧倒的に優勢なままでいる。彼女の望みは私だけが此処にいること。彼女は私さえ此処にいたら良いなら
「お願い!彼を出して!」
「ぇ…………。」
「……。アンタ、残るの?」
「ええ。」
「っ!駄目です!先生!先生!俺と一緒に出るって!!」
ごめんなさい。閉じ籠っていた私を連れ戻しにきてくれたのに。笑顔を作ると振り返り
「大丈夫よ。」
ちゃんと隙を付いて逃げ出すから。そんな残酷な嘘を。最後の最後まで付いてごめんなさい。
だから。あなたは永遠に私を恨んで憎んでて。
「良いわよ、逃がしてあげる。」
「ぁ、ぁ……。」
最後の最後で。やっと出られるところまできたのに。先生1人も助けられないで。自分がたった唯一愛した女を1人も助けられないで。助けにきた筈の相手に助けられるなんて。
こんな……。絶望は無い……。
絶望に堕ちていく。俺は、最初から。出来なかった。意識が消えかけたその時聞き覚えのある声がした。
「よく頑張ったわね。」
……?あれ?この人、どこかで。
どこで、見たっけ。その人は俺の頭を撫でると聞こえてきた。この悪夢は全て終わりだからと。絶望に堕ちかけたジャックの心は元に戻ると
「お前……っ!」
「夢は見るもの。それは確かに正しいわ。けれど永遠の吉夢も悪夢もありはしないの。そろそろ。夢から目覚めないと。」
永遠に見る夢はあってはならないの。と彼女は言った。
「心の、欠片……。」
「そうね。私は彼女とは真逆。現実を教え、夢から目覚めさせる。」
現実を教える。ジャックの前に現れた心の欠片だった。そして
「よく頑張ったわね。あなたたちは現実を生きなさい。」
直に夢から目覚めるわと最後にそう聞こえて意識が無くなった。
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