車屋異世界転生記

ライ蔵

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エレーゼと銀色の乙女の出会い。1

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 [エレーゼ様、どうかなさいましたか?]

 ジャイル達の魔導車が走り去った後もその方向をずっと見ている私を不思議に思ったのだろう、初老の執事が話し掛けて来る。

 [いいえ、なんでもないわ。さあ行きましょうか、お父様が待っているわ。]

 私を迎えに来た馬車に乗り込み、椅子に腰かけた後にジャイル達の事を思い出す。

 [まだまだリュドレイクには遠いわねー。]

 [でももうすぐでアルテリア国境には入りますから。]

 従者からそう言われ私は溜め息をつく。

 [しかしお父様もそろそろ私に結婚の相手を決めろなんて無茶なことを言うわね...]

 私は交換留学でイセリア共和国の魔術学園に行っていたのだが、お父様がそろそろ私の婚約者候補を決める為に私をアルテリアに呼び戻したのだ。

 憂鬱だ。
 私はまだ一人でこの世界を見て回りたいのに....

 そんな事を考えている最中に突然激しい衝撃が馬車に走り、頭を強く揺さぶられる。

 [いったいなんなのよ!!]

 馬車のドアを開けて外を見ると腕を捕まれ外に引き摺り出される。

 [な、なに!なにが起きてるの!!]

 私の腕を掴んでいる奴を睨みながら見ると、人間ではなく魔物の醜いオークが口から涎を滴ながら私の顔を舐めるように眺めている。

 私とオークの目が合うとオークは品の無いゲスな顔をしながら[ぶはぁー!!!おい!!女だぞ!!!喜べ!!!]と周囲に叫ぶように言う。

 オーク達が喜びの声を挙げながら私の護衛をしている騎士達と戦っている。

 私を捕らえているオークが首筋に剣を当て、叫ぶ。

 [おい!!人間共!!!この女を今すぐ殺されたく無かったら武器を捨てろ!!!...捨てないのなら、解るよな?]

 剣先が私の首筋の肌を少し傷つけ少量の血が流れ出る。

 [ひっ!!]

 恐怖で歪む私の顔を見て更にゲスな顔になるオーク

 騎士達は武器こそ捨てはしなかったがオーク達に抵抗出来なくなり、簡単に死なない程度に痛め付けられている。

 ...神様!!私の人生はこれで終わりなのですか!?オークなどに犯される位ならば私は死を選びます!!!

 私は死を覚悟し舌を噛み切ろうとした時、私の従者が白髪で髭を生やしている冒険者風の男を伴って来た。

 [お前達!!その娘を離せ!!そうすれば今回は見逃してやる!!]

 冒険者風の男がオークにそう言うが、見逃さなくて良いから早く私を助けなさい!!

 当然の様にオークは私を解放しない。

 すると後方から冒険者風の男の仲間であろう人間が3人追い付いて来た。

 身長が高めで髪の長さが肩ぐらいまでのまだ若そうな女の子

 見事な銀髪の長い髪を持つ大人の女性

 そして背の低いまだ少年らしきフードを深く被り白い仮面をつけている男の子

 何やら4人で相談を始めたようだ。

 4人の様子を見ている私は不安になった。
 このまま私は見捨てられるのではないのかと...

 私はやはりこのまま死ぬしかないのかもと落胆し始めた時にそれは起きた。

 仮面の男の子が一瞬体制を下げたと思うと同時に男の子が私の目の前から消える。

 拘束していたオークの力が急に抜け、突然の事で倒れそうになる私を綺麗な銀髪の女性が支えながら傷付いた騎士達の所へと連れていく。

 ちらりと今まで私が居た場所を見るとオーク達が次々と血を流しながら倒れていく。

 ああ、私は助かったのですね!!!




 私達は偶然通り掛かった冒険者達に救われた。

 銀髪の女性が傷付いた騎士達に治癒の魔法を使い傷を治療してくれている。

 この女性、エルフと言うだけでも驚きだったのですが只のエルフではなくハイエルフだった。

 深い森にエルフ達は住んでおり滅多に森から出て来ない。

 当然ハイエルフは数も少なく近年では森から出て来たと言う話すら聞いた事がなかった。

 このシルビアと言う銀髪で琥珀色の美しい瞳を持つ見目麗しいハイエルフを私は自分の身の回りに置きたくなっていた。

 それとなくシルビアにお礼がしたいから家に来ないかと誘いを掛けたのだが

 [私は守るべき人が居るので期待には添えません。...それに...]

 シルビアが自分は奴隷であり主人を命を懸けて守るのが役目だと言った。

 私はそれにも驚愕した。

 エルフは誇り高く、人間の奴隷になる位ならば死を選ぶ民族だ。

 普通ならば人間を守るために自らの命を懸けるような事などしない。

 ...このハイエルフの主人はあの白髪の冒険者なのだろうか?

 騎士達の治療が終わると、騎士達と共に私達はオーク達の死体の片付けが終わった白髪の冒険者と一緒に戦っていた女の子に礼を言いに行った。

 [ありがとうございました!!助かりました!!]

 [なんの!無事でよかったわい!!]

 [だねー!無事そうで良かったです!!]

 白髪の男は名をヴェルディットと言い、女の子の方はルリシスと名乗った。

 私は普段名乗っている偽名のサリアと名乗った。

 助けてくれた方々に偽名なんて失礼だとは思ったのだが私は気軽に本名を出せる身分ではない。
 それに私はこちらの名前のほうが気に入っている。

 しかし、ヴェルディットと言う名前は何処かで聞いた事がある気がしますね。

 そんな事を考えていると騎士の一人がヴェルディットに詰め寄る。

 [仮面の少年はもしかしてあの疾風の剣聖の関係者ですか!?私は一度疾風烈斬を見たことがあるのですが、あの風を纏わせ飛ぶような素早い動きは疾風烈斬では!?]

 疾風の剣聖!?私も聞いた事がある。

 近年、リーンベルでギルドにS級で復帰したと言うダグラス・リーンシュタイナー...

 [む、...まあ確かにダグラス君の弟子みたいなもんかの?でもこのルリシスちゃんもダグラス君から訓練を一緒に受けたからな。弟子と言えばこの娘もじゃな!!]

 [なんと!!!それでこの若さであの技のキレ!!]

 騎士達がヴェルディッドとルリシス、お二方と盛り上がっている最中に私は仮面の少年が居ないことに気付き周囲を見回すと何やら独特な音のする馬の無い馬車とは違う物が私達に近づいて来る。

 [車を移動してきましたよ!!]

 男性とも女性とも言いがたい声で少年が喋りながら車と言うものから降りてきた。


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