車屋異世界転生記

ライ蔵

文字の大きさ
上 下
1 / 76

序章 1 オッサン自爆する

しおりを挟む
眼を醒ますと俺は暗い空間に居た。

 あぁ、そうか俺は死んだのか...

 俺は暗い空間を見回しながら思い出していた。

 何故この暗い空間に居るのかを。

 俺は自動車整備工場を営んでいる。親から受け継いで俺が3代目という自動車整備屋としては結構古い方だ。

 一応俺は社長で社員は俺の整備士の専門学校の時からの悪友を社員として雇っていて2人で経営している。

 客はそこそこ居るのでなんとか経営はできている。


 俺はその日、俺が最も愛していた車を運転していた。

 もう20年落ちになる車だったがとても大好きな車だった。

 古くなった為に一度登録を切り、一時抹消していたのだが我慢できずに再び登録し直したのだ。

 この車を再登録する前にもハイパワースポーツ4WDセダンに乗っていたのだが俺にはただ速いだけで面白みを感じることが出来なかった。

 そしてこのスポーツセダンの車検が近づいて来たときに再び乗ることにしたのだった。




 [さー、今日の仕事も終わったぜー。]

 工具を片付けながら今日は登録しなおした車で昔よく遊びに行っていた峠に久しぶりに行こうかと考えていたのだ。

 [なんだ、峠にいくのか?]

 [おう、そのつもりやね。]

 社員がそわそわしてる俺に話しかけてくる。

 [今日は雨が降りそうだから気をつけろよ、お前ももうおっさんだしな!]

 [おっさん言うなや!...まあおっさんか。]

 そんないつものやりとりを社員とした後に愛車のイグニッションキーを捻る。

 セルモータが回った後すぐにエンジンが掛かる。

 うん。絶好調だな!

 俺はクラッチを踏み込んだ後1速に入れ走り始める。


 あぁ、やっぱりこの車は最高だ!!



 曲線を多用した流麗で美しいボディ、軽量かつハイパワーなエンジン、足回りは純正でもピロボールを多用したダブルウィッシュボーン。



 俺はこの車の良いところも悪いところもすべて含めて好きだった。

 最新のスポーツカーに較べると確かにパワーもトルクも無い。

 ボディの色もこの車では不人気カラーだったシルバーストーンメタリックで友人からはオッサンシルバーとよく馬鹿にされた。

 だが俺はこの色が好きなのだ。洗車も楽だし。


 峠道に入った後も大人しく走る。

 この車は死ぬまで持っておきたいから無茶な乗り方はしないと決めている。


 山頂近くの駐車場に車を止め車外に出てから煙草に火をつける。


 ふう、ここに来るのも久しぶりだな。

 夜景を眺めながら煙草を吸っていると特徴的な直6エンジンの排気音が聞こえてくる。


 俺の車を発見したようで横に止めてきた。



 その車がドアを開け車の持ち主が俺の顔を確認すると手を挙げながら喋り掛けてくる。

 [あれ?ひさしぶりっすね!て言うか車がまた前のオーディオマシンに変わってる・・・]

 [うっさいわ、オーディオマシンで悪いか!]

 [どう考えても前のスポーツセダンのが速いでしょ!あの車はその車と違って走りの方向でいじり倒してましたし!]

 [お前にもいつか分かる日が来るよ、車は速さで乗るんじゃないってな!]

 そいつは苦笑しながら

 [そっすね!そう言えばまだあのゲームやってます?]

 俺とそいつは久しぶりにあったので世間話と馬鹿話を始めた。



 [今度またサバゲーに行きましょうよ!]

 [おう!今度な!]

 そう言った俺にそいつはジト目をしながら言う。

 [絶対行く気が無いでしょう!分かりました!今度ネトゲの中のメールで予定を送っとくので見てくださいよ!!]

 [えー、面倒くせえな!]

 馬鹿話をしながら時計を見ると既にいい時間になっていた。

 [じゃ、俺そろそろ帰るわ!]

 [俺はまだここに居ますね、とりあえず一回走ってから帰ります!]

 [おう!気をつけろよ!]


 俺は愛車のエンジンを掛け走り始める。

 アイツに合ったのも久しぶりだなーと峠を下りながら考えていると雨がぱらついてきた。


 雨か...明日また洗車すっかな


 そう思いながらカーブに差し掛かった時、出やがったんだタヌキが。


 タヌキは道を横切っている途中で俺の方を見て固まる。


 なんでお前ら動物は道路のど真ん中で止まるんだよ!


 俺はブレーキを踏みながらハンドルを切る。

 ブレーキペダルからABSが機能している証拠の振動がブレーキペダルから足に伝わる。

 よし避けれるな!

 ヒールアンドトゥでシフトダウンしながら思っているとタヌキが俺の避けてる方向に走ってきた。


 なんでこっちに向かって走って来るんだよ!!


 逆にハンドルを切るとリアが流れ始めた。


 まじかよ!この車、いまクソタイヤだから流れだしたら止まらないぞ!

 カウンターを当てるがグリップが回復する気配が無い。


 やっちまったな。

 タヌキはどうにか避けられたようだがガードレールの丁度切れ目のところに向かって滑っていく。

 その先は鬱蒼と茂る林だ。


 体に激しい衝撃を感じた後意識を失い気づくとこの暗い空間に俺は居た。



 俺は起きた出来事を思い返し考える。


 やっぱ死んでるなこれは...


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット
ファンタジー
 【完結しました】以前の小説をリメイクして新しい小説として投稿しています。  名前も付けられずに公爵家の屋敷の埃の被った図書室の中で育った元聖国の王女は虐待で傷だらけで魔物の居る森に捨てられ、王太子に拾われて宰相の養女となり、王国の聖女と呼ばれ、波乱万丈の人生をおくるが王太子妃になり幸せになる。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...