55 / 84
魔王のお祝い
しおりを挟む
「今日は魔王が挨拶に来るとか言ってたわね。」
「お、そういやそうだったな~。」
エリュセルは仕事の為にバハムーレ領へと帰ったのだがヴァランティーヌはヴァルファーレと共に暫く首都の城に居るそうだ。
ヴァルファーレはエリスと共に大人しくベッドで眠っていて、それぞれ専門についている侍女が面倒を見てくれている。
二人とも俺がアーティファクトを授けた奴らだ。
昔から俺に仕えてくれていて一番信頼が置けるとかでエミリアもヴァランティーヌもコイツらを俺から引き抜いていった。
グングニルをやった奴はカレンと言う名でエリスに仕え、マスカレイドの方はクレアと言う名でヴァルファーレに仕えていると言う感じだ。
二人とも俺の仕えから外れるのを嫌がっていたが「お前らを必要としてくれているんだ、俺の世話はガキ共が大きくなって手が掛からなくなったら戻ってくればいい。」と説得すると納得してくれたようで子供の面倒を良く見てくれている様だ。
「しっかし、昔っからで俺の側に居てくれてんのは爺だけになっちまったな。」
爺が淹れた茶を飲みながらしみじみと呟く。
「あら?本当はレスターも欲しいのよ?クレアをあなたから無理矢理引き抜いちゃった様なものだしレスターも来てほしいと言ったところで頭を縦に振らないのはわかってるから諦めてるけど。...レスターだけでも贅沢ってものよ。こんなに美味しいお茶を毎日飲めるんだからね。」
爺がヴァランティーヌのカップに茶を淹れながら「当然で御座います。私はフォルティーナ様にお仕えすると決めているのですから。」とハッキリと言い切る。
「ま、爺!頼りにしてるぜ!!」
「ありがたき御言葉、身に余る思いです。」
ガチャリとドアの開く音が聞こえ、視線を移すとセレナが部屋に入ってくる。
「魔王様がお越しになられましたよ~。」
おっ、魔王の奴が来やがったか。
「おう、俺は会談には出ねえぞ。ワイナールとエミリアの会談が終わったらここに連れてこいや。久し振りに魔族領の様子を直接聞きてえからな!」
「はい、ラジャーです!」
元気な返事と共にセレナが部屋を後にする。
「あら?会談に同席はしなくていいの?」
意外と言う風な表情でヴァランティーヌが尋ねてくる。
「あん?あたりめえだろ。この国の王はワイナールでその后はエミリアだ。そのエミリアの召喚獣の俺が同席すんのはおかしいだろ。一応魔王は国賓だしな。」
「...三人ともそんなところを気にはしてないと思うけれど。」
「そうかもしれねえが...あれだ、ケジメだよ。」
「...変なところだけ頑固よね、あなた。」
「うっせえよ!ヴォケ!!」
その後もヴァランティーヌとの罵詈雑言が続いた。
「お久しぶりです。ワイナール殿、エミリア殿。」
「遥々魔族領からのお越し、ありがとうございます。」
「魔王様、私達の子の誕生祝いで来て貰ってすみません。」
「お気にせずに。私が来たくて来たのですから。」
魔王様が握手のために手を差し出して来るので、旦那様が握手した後に私も手を差し出して握手をした。
「どうぞ、そちらの椅子に腰掛けて下さい。」
旦那様が魔王様を椅子へと促すと、そのすらりと長い脚を動かし椅子へと優雅に腰掛ける。
...やっぱり魔王様も種族が違えど王...なんですね。
華麗で優雅な所作に目を奪われてしまうが...私も旦那様が恥ずかしく無いようにしなければ。
「...ところで、フォルティーナ殿は今日は居られないのですか?」
「今、セレナが呼びに行ってます。...ああ、帰ってきたようですね。」
部屋のドアの前にから移動し、耳打ちをした守衛兵に頷いた後に答える。
「...報告ではフォルティーナはここに来ないそうです。終わった後にフォルティーナの居る部屋へと案内させましょう。」
「...なるほど...丁度良いか...」
魔王様は旦那様の言葉に俯き、御自分の口を手で覆って何か呟いた様だがよくは聞き取れなかった。
「魔王様?」
「ああ、いえ。何でもないのでお気にせずに。それでワイナール殿、今後の事なのですが....」
その後も魔王様との会談は続いた。
魔王様は初めてお会いしたときに感じた通り、旦那様の様に親しみやすい喋り方をする御方のようだ。
こういう御方の方が緊張せずに話が出来るので私としては気持ちがとても楽だ。
そろそろ会談も終わりに近づき始めた時、魔王様が真剣な表情で意を決したように私に喋り掛けてきた。
「率直にお聞きします。エミリア殿はフォルティーナ殿の今後の事をどのようにお考えなのですか?」
「お、そういやそうだったな~。」
エリュセルは仕事の為にバハムーレ領へと帰ったのだがヴァランティーヌはヴァルファーレと共に暫く首都の城に居るそうだ。
ヴァルファーレはエリスと共に大人しくベッドで眠っていて、それぞれ専門についている侍女が面倒を見てくれている。
二人とも俺がアーティファクトを授けた奴らだ。
昔から俺に仕えてくれていて一番信頼が置けるとかでエミリアもヴァランティーヌもコイツらを俺から引き抜いていった。
グングニルをやった奴はカレンと言う名でエリスに仕え、マスカレイドの方はクレアと言う名でヴァルファーレに仕えていると言う感じだ。
二人とも俺の仕えから外れるのを嫌がっていたが「お前らを必要としてくれているんだ、俺の世話はガキ共が大きくなって手が掛からなくなったら戻ってくればいい。」と説得すると納得してくれたようで子供の面倒を良く見てくれている様だ。
「しっかし、昔っからで俺の側に居てくれてんのは爺だけになっちまったな。」
爺が淹れた茶を飲みながらしみじみと呟く。
「あら?本当はレスターも欲しいのよ?クレアをあなたから無理矢理引き抜いちゃった様なものだしレスターも来てほしいと言ったところで頭を縦に振らないのはわかってるから諦めてるけど。...レスターだけでも贅沢ってものよ。こんなに美味しいお茶を毎日飲めるんだからね。」
爺がヴァランティーヌのカップに茶を淹れながら「当然で御座います。私はフォルティーナ様にお仕えすると決めているのですから。」とハッキリと言い切る。
「ま、爺!頼りにしてるぜ!!」
「ありがたき御言葉、身に余る思いです。」
ガチャリとドアの開く音が聞こえ、視線を移すとセレナが部屋に入ってくる。
「魔王様がお越しになられましたよ~。」
おっ、魔王の奴が来やがったか。
「おう、俺は会談には出ねえぞ。ワイナールとエミリアの会談が終わったらここに連れてこいや。久し振りに魔族領の様子を直接聞きてえからな!」
「はい、ラジャーです!」
元気な返事と共にセレナが部屋を後にする。
「あら?会談に同席はしなくていいの?」
意外と言う風な表情でヴァランティーヌが尋ねてくる。
「あん?あたりめえだろ。この国の王はワイナールでその后はエミリアだ。そのエミリアの召喚獣の俺が同席すんのはおかしいだろ。一応魔王は国賓だしな。」
「...三人ともそんなところを気にはしてないと思うけれど。」
「そうかもしれねえが...あれだ、ケジメだよ。」
「...変なところだけ頑固よね、あなた。」
「うっせえよ!ヴォケ!!」
その後もヴァランティーヌとの罵詈雑言が続いた。
「お久しぶりです。ワイナール殿、エミリア殿。」
「遥々魔族領からのお越し、ありがとうございます。」
「魔王様、私達の子の誕生祝いで来て貰ってすみません。」
「お気にせずに。私が来たくて来たのですから。」
魔王様が握手のために手を差し出して来るので、旦那様が握手した後に私も手を差し出して握手をした。
「どうぞ、そちらの椅子に腰掛けて下さい。」
旦那様が魔王様を椅子へと促すと、そのすらりと長い脚を動かし椅子へと優雅に腰掛ける。
...やっぱり魔王様も種族が違えど王...なんですね。
華麗で優雅な所作に目を奪われてしまうが...私も旦那様が恥ずかしく無いようにしなければ。
「...ところで、フォルティーナ殿は今日は居られないのですか?」
「今、セレナが呼びに行ってます。...ああ、帰ってきたようですね。」
部屋のドアの前にから移動し、耳打ちをした守衛兵に頷いた後に答える。
「...報告ではフォルティーナはここに来ないそうです。終わった後にフォルティーナの居る部屋へと案内させましょう。」
「...なるほど...丁度良いか...」
魔王様は旦那様の言葉に俯き、御自分の口を手で覆って何か呟いた様だがよくは聞き取れなかった。
「魔王様?」
「ああ、いえ。何でもないのでお気にせずに。それでワイナール殿、今後の事なのですが....」
その後も魔王様との会談は続いた。
魔王様は初めてお会いしたときに感じた通り、旦那様の様に親しみやすい喋り方をする御方のようだ。
こういう御方の方が緊張せずに話が出来るので私としては気持ちがとても楽だ。
そろそろ会談も終わりに近づき始めた時、魔王様が真剣な表情で意を決したように私に喋り掛けてきた。
「率直にお聞きします。エミリア殿はフォルティーナ殿の今後の事をどのようにお考えなのですか?」
10
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。
仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。
彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。
しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる……
そんなところから始まるお話。
フィクションです。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる