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幸せな一時

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 「おうおう!元気な女の子じゃねえか!」

 産まれたばかりのエミリアの子供を布にくるんでから抱きながら眺めていた。

 「...うん。...やっぱり子供を産むって大変だね...。」

 子供を産み落とし疲弊しているエミリアが弱々しい笑顔でそう言う。

 「よっしゃ!よく頑張った!今から回復魔法をかけてやっからちょいと待っとけよ!!」

 産まれた子を側にいた侍女に慎重な動作で預けた後に水属性の回復魔法をエミリアにかけてやる。

 「...うわぁ~!フォルティーナ、凄いね!あんなに疲れてたのに凄く楽になったよ。」

 「おうおう!これでお前の体調は大丈夫だがガキを産んだばかりなんだ。大人しく暫くは休んでろ。」

 「うん!」

 嬉しそうに微笑むエミリアの頭を撫でているとワイナールが慌てた様子で部屋へと入ってくる。

 「エミリア!ああ、エミリア!無事に産まれたんですね!?無事なんですよね!?エミリアも私の子供も!」

 「おう!両方共に無事だぜ!!まあエミリアは疲弊していたから回復魔法をかけたけど大人しくしとけば大丈夫だろ。」

 「そうですか。フォルティーナもお疲れさまでした!」

 「それより自分のガキを抱いてやれ!」

 侍女に視線を送るとワイナールにエミリアの子を慎重に渡す。

 「これが...私の子...。」

 これ以上無いと言うようなとろけんばかりの笑顔で愛おしいそうにワイナールが自分の子供を抱いている。

 「...そうだ!フォルティーナ、この子の名前をつけてはくれませんか?」

 「あん?俺がか?...セレナの件でやらかしてるからお前等がつけた方がいいんじゃね?」

 「うん。...私もこの子の名前はフォルティーナにつけて貰いたいな。...でも変な名前はやめてね!!」

 「お、おう。」

 まじかよ、俺が名前をつけるのか~。

 ...良いこと思いついたぞ。

 <名付け親だよ!良かったじゃない!...でなんてつけるの?>

 あー、どうすっかな?むぅ、花子とか...

 <エミリア達に怒られるよそれ...>

 じゃあテメエが考えろや!

 <え!?...うーん、それじゃあ...エリスとか?>

 おっ!それいただき!!

 「エリスってのはどうだ?」

 俺がそう口を開くとエミリアとワイナールがお互いを眺め、にっこりと微笑む。

 「決まりましたね!良い名だ!!」「この子はエリス!決まりだね。良い名前をありがとう、フォルティーナ!!」

 エミリア親子を眺め、この幸せそうな光景がいつまでも続いていく様に俺も頑張ろうと密かに誓う。

 お前が名前をつけたんだからお前もこのガキを見守ってくれよ!!

 <...君、それが目的で僕に名前をつけさせたでしょ?仕方ないな~。じゃあ、エリスに僕の加護を与えるよ!名付け親になっちゃったしね!!>

 天の声がそう呟くとエリスの小さな体に淡い光が包むように瞬き始める。

 「え?これは....」

 「心配すんな。俺の知り合いがエリスに加護をくれるんだとよ!まあ、怠惰な奴だが悪い奴じゃねえ。」

 「加護を与えることが出来る知り合い?....まさか神か!?」

 ワイナールが驚愕している表情で俺を見つめる。

 「あー、アイツが何なのかは知らねえが...うん、良く知らねえわ。」

 「良く知らないって...でも、優しさに満ち溢れたこの力は...神...の加護なのでしょうね。」

 「うん、大丈夫だよ旦那様!こんなに優しい力を授けてくれる人が悪い人だとは思えないよ。...フォルティーナ、ありがとうございます。って伝えてね!」

 「おう!伝えとくぜ。」

 だとよ、あんがとさん。

 <たいした労力じゃないから気にしないでいいよ。...エリスがいい子に育つように僕も見守るか。...エリスは嫁に行かなくていいんだよね?>

 ...おまえ...今からそんな事を言ってどうすんだ?

 ワイナールに抱かれ、気持ちよさそうに眠るエリスを眺めながら天の声が言い出した親バカ発言を諫めていた。



 数日後、無事に産まれたエリスを見るためにエリュセルの家族が城を訪ねてきていた。

 「うん、可愛い子じゃないの。良くやったわエミリア。」

 「えへへ~。ヴァランティーヌ、ありがとね。」

 「エミリアもエリスも無事で良かったですよ。おめでとう、エミリア。」

 エミリアを労う言葉が飛び交う中、俺はエリスを抱いて見守っていると「フォルティーナ...あなた、顔がにやついていて...気持ち悪いわよ。変な物でも拾い喰いしたんじゃ無いでしょうね?」とヴァランティーヌがヴァルファーレを抱きながら俺に信じられない様な物を見る視線を浴びせる。

 「うっせえな!仕方ねえだろ、エリスが可愛いんだからよ!おぉ、ヴァルファーレも可愛いぜ!お前は可愛くねえがな!!」

 「...重症ね。完全に親バカ...いえ、孫バカ?になってるわ。」

 やれやれと言わんばかりにヴァランティーヌが頭を左右に振った。
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