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第五章 闇の胎動と2つの王家

隠しておきたかった者 共に歩みたい者①

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 「まぁ、貴方。そちらの綺麗な方々は?」

 「墓所で以前からよく会う人達なんだ。父の知り合いでね。私にとっては父の話が出来る友人みたいな人達だよ。」

 「あら、この人達は随分小さい頃にお義父さんと知り合いだったのね?今も覚えていてくれるなんてお義父さんは嬉しいでしょう。ようこそ我が家へ。私はアーロンの妻のオードリーと申します。」

 「「はじめまして。」」

 「あら?外国語?でも変ね、何を言ったかわかるわ。」

 「多分二人が魔力で伝えてくれるんだよ。」

 アーロンは話を合わせてというように2人に視線を向ける。

 「はい。私はフォリーと呼んてください。」

 「私はアレックスと。」

 「主人と違って、貴方達は魔法が得意なのね。主人は神力が主だから。どうぞお入り下さい。
あら、貴方、どうしてそちらにご案内?」

 「少し診察もするんだ。父が大切にしていたお子さん達だから。」

 アーロンに連れられて敷地内のアーロンの仕事場へ向かう。普段は研究や物書きの仕事でたまに診察の依頼が入るらしい。


          *


 「貴方は不思議ですね。身体の中の魔力と神力の量に差がありすぎます。体調崩しませんか?」

 フォリーがアーロンに質問する。

 「不思議・・ですか?私達の周りでは不思議ではないですね。最も持っていたところでほとんど宝の持ち腐れですが。魔力の使い方を多く手離し、神力も一緒になって忘れかけてるようなところですから。力を使わなくても楽に過ごせる発明にばかり集中した結果のこの社会ですね。楽を覚えるのはあまりおすすめできないと私は考えてますが。」

 2人はアーロンの考えに既視感を覚えた。ティラードは魔力神力が他国より飛び抜けていて、それを使った発明や文明がある。だが、あえてそれを使わない。魔力も普段から便利グッズのようには使わない。ただし国民は力の鍛錬を忘れてはいない。時間あいた時に各自こっそり鍛錬を積んでる。楽をすれば筋力も落ちて身体は怠けていく。
元は始祖の考えだ。

 「さぁ、こちらに座って。フォリー、少し手を触れさせてもらいますよ。あれ?ちょっと待って下さい。その前に・・私の微かな魔力でも感知出来る何かが・・・何か持ってます?」

 指摘され、フォリーは緑石を出し、アレックスに持っていてもらおうと渡した。

 アーロンか驚いた顔をしている。

 「その石・・・・・。」

 「これがどうかしましたか?」

 アレックスが不思議そうに尋ねる。

 「いえ、似ている石を知っているものですから、少し驚いて。では改めてフォリー、手を。」

 フォリーは診察が始まって、まず手から流れてくる温かさを感じた。だがそのうちに涙が流れ始める。

 「フォリー、どうしたの?」

 アレックスが声をかける。そしてアーロンが手を離した。

 「何てこと。貴方という人は・・。」

 アーロンが困惑した表情となっていた。

 「え?」

 アレックスが不安そうにアーロンを見つめる。

 「貴方の流れの不調は魔力でも神力でもない、貴方自身の生きる力をどこかに流してる。」

 まずいとフォリーが思うよりも先にアレックスが立ち上がってフォリーの側に来る。フォリーは何か現状の改善のアドバイスがくるかと思っていたが、まさかの根本的な部分をつかれるとは思ってなかった。アーロンの神力は自分達程強くはない。でも、彼の持っていた神力の特徴は流れを読むいうより、本質をついてくるものだったのだ。

 「フォリー、その顔は指摘されなくても知っていたって事だよね?少なくとも指摘されて何のことかわからないっていう顔じゃない!」

 「アレックス、落ち着いて。まだ私は診察を終えた訳ではないよ。」

 アーロンは再度フォリーの手に触れる。
 フォリーは優しく何かに包まれたような感覚を覚える。

 「できるだけバランスが崩れないように私の力を注入した。加護のような、シールドのようなものと思ってもらっても構わない。それに君の中に何か居るね?どうやらそいつが君の生きる力の流れとも関係しているようだけど。」

 「フォルガイア・・・・・・。」

 アレックスの顔がフォリーが今まで見た事がない位怖い表情になっている。

 隠してる事がバレるよりもその表情のほうが怖いとはとても突っ込めないフォリーは視線をそらす。

 「こら。視線をそらすな。怒るよ。」

 「だって、もう怒ってるもの。」

 2人のやり取りにまぁ落ち着きなさいとアーロンが何とか収めた。
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