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第一章

ある報告

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 「若様、ここに居らしたんですね。」

 赤みのかかった茶色の髪、濃い茶色の瞳の背の高い男がルーカスに声をかけた。
 
 「絵を見つめてたんだ。それよりクトニオス、ジョーンズに用があるならフォリーを探しなよ。フォリー目指して一直線のテオを追いかけてるから。それともこの間のカードゲームの続きに来たの?俺、今ゲームの気分じゃないよ。」

 「いやいやいや、ゲームはまた今度で。ジョーンズは近頃運動不足だから走らせとけばいいんじゃないかと。」
 半笑いで答えるクトニオス。

 いつもの、軽いノリのつもりで会話をしたルーカスだったが、クトニオスがテンポ良い返事の割には眼が鋭くなっていることに気付いた。

 「・・・何か厄介事かな?」

 ルーカスがそう言うと、クトニオスの顔から笑顔が消え、一歩下がってお辞儀をする姿勢となった。

 「我が国に猛獣と思われるものが迷い込んでくるかもしれないとの情報が入りました。『殿下』」

 「猛獣?ネズミではなく?
しかも、くるかもしれないとは?情報源はどこだ?」

 「国外へ行商に出ていた陶芸屋の息子、レアンです。」

 「あちらにも情報は渡ったか?」

 窓から外を見つめ、ルーカスが尋ねる。

 「東の王に伝達は飛ばしました。ほぼ同時に報告を受けているかと。」

 「わかった。セステオが帰る時、歩いて帰らせるな。街を探索しながら帰るのを好むからな。あれはまだ幼い。猛獣か珍獣か知らないが、情報源のレアンが戻ってきているならばそいつも王都に入ったかも知れないのだろう?」

 「殿下、姫君はどちらに?」

 「隠れ小部屋に居たはずだが、おそらくセステオの声を聞いて庭か厨房の方へ移動しただろう。」

 「もし、本当に猛獣だとしたら対応は如何致します?」

 ルーカスの白金の髪がサァっと漆黒に変化した。

 「そうだな、もし猛獣ならどうしてやればいいかな?珍獣だとしてもただでは逃がすつもりはないけどな。」 

 そう答えたルーカスの表情は無表情であった。そしてルーカスの感情を表すかのように近くの窓がビリビリと小刻みに震えていた。

 「父王は今どこにいる?」

 「先程北の村の橋の修理を手伝っている西王のお姿が。」

 「ああ、この間の雷で欠けた橋か。それではちょっと『俺』もそこへ出掛けてくるか。『西のお館様』に会いに。報告ついでに友人の欲しがっていた菓子を買ってくるとするか。」

 話しながらルーカスの髪が白金に戻った。

 「あの菓子を!あれは本当に美味しい!!!
  若様!一生付いていきます!」

 「そのキラキラした瞳のお前を女性達が見たら、イメージ崩れるんだろーなー(棒読み)」

 再び公のやり取りから軽いノリの雰囲気に変わりつつも、急ぎ足で動き始めるルーカスであった。

 
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