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隠し案

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 「やぁ、今日は呼び出してすまなかったな。孫嫁よ。」

 「ま、孫嫁って、まだ籍を入れてませんのでその呼び方はっ。」

 「はははっ。君がこいつの求婚を受け入れたのだから、将来だろうが今だろうが私にとっては同じだよ。」

 「お祖父様。シルヴィアをからかわないで下さいね。シルヴィアは真面目な人なんです。第一、レイアルズ公爵夫人は道理を通したがる人でしょう。クラーク公爵夫人もそうですし。そんな強い二人に囲まれてるシルヴィアですよ?わかってますでしょうが!」

 イーサンはシルヴィアの腰に手を当て、引き寄せる。

 「おや。別に私は成婚前に彼女の体の中にこの国の希望がいても構わんぞ。」

 「体の中に?」

 シルヴィアが怪訝そうな表情をする。

 「お祖父様!!僕はそんなこと覚えはありません!」

 イーサンの言い返しで何の事かシルヴィアは気付き、顔を赤くして思わずイーサンから距離を置く。

 「つまらんな、イーサン。お前はそっち系は生真面目優等生か。散々拗らせていたから想いが通じたら即かと思ったが。多少不真面目の方が面白いのに。」

 「面白いって何ですか!孫はあなたの暇つぶしじゃないんですよ。」

 「いや、だって。お前。両親の成婚時と自分の誕生日をよく考えてみた事あるか?少しだけズレてるとは思わないか?」

 「え?いや、父上から少し早く生まれてきたと聞かされてますが・・・。」

 「あいつ、そんな事をお前に言ったのか。残念だったな、イーサン。お前は早産ではないぞ。」

 愕然とするイーサン。

 「まぁ、騙された件は後日自分であいつを追求しろ。おそらく当時小さな息子に質問されて誤魔化したんだろ。成長したお前になら白状するだろうよ。」

 イーサン、固まっている。隣でシルヴィアが軽く指でつつくが、固まっている。

 「それよりもな、呼び出した件だが。」

 シルヴィアが反応する。

 「はい。私が嫁いでその後子どもができた場合、その子に重要な役目が課せられるとイーサン兄様から聞かされました。それから私の先祖の国であるレイルズ国も関わってくると。でもそれが私に負担になるかもって言われました。それ以上は具体的な内容は前王自らお話されるとも。」

 「ふむ。負担と聞いてどう思う?」

 「どう思うも何も、内容を知らないのですから何を負担と思えばいいのか。子どもに関しては未来の王になる人に嫁ぐわけですから、妃として一番重要な役目と思っております。子を授かるかどうか、こればかりは神様の采配ですが。万が一のことがあっても兄様は側妃はとらないと強く仰るので、王家の血縁から養子も考えなくてはならない可能性も頭に入れてあります。」

 「なる程。レイルズに関しては?」

 「アドリウスの援助で街並みも復興し、そこに住まう人達は今は安心して暮らせてます。レイルズにとって、助けて下さった国がアドリウスで幸運だったかと。元々親交も厚かったようですし。」

 「相わかった。結婚に浮かれず、色々考えてる姿勢は好ましいな。

 では話を続ける。

 クラーク公爵令嬢であり、未来のアドリウス王太子妃にしてレイルズ第一王女よ。」

 「・・・は?王女??い、いったい?だってレイルズは消えてますし、私は単なる公爵令嬢で」

 「私はアドリウス前王ではあるが現在はレイルズ国王代理。つまり、レイルズ国王不在の為事実上私が王だ。もっとも、国王代理になったのはつい最近だが。」

 これがくろりんの隠し案であった。
 書面上でさっさとレイルズ国を復活させ、誰が王になるか揉めてる期間は自身が亡き親友の成るはずだったレイルズ国王の・・・国王の代理になる。
 実際レイルズ王家がこの間の話し合いで結果を出さなかったので、隠し案として自分が代理となり、孫夫婦に子どもを数名頑張ってもらい、無事に数名授かったら、うち一人がレイルズの王太子。双方の国の未来の王が、兄弟ということになる。昔から親交厚いため、先祖に互いの国へ嫁いだ姫もいたが、ここであらたにアドリウス王家直系とレイルズ王家直系との間の子ども達が新しい時代の幕開けを担う。

 そして、国王代理だけだと手が回らない時はシルヴィアがレイルズ王家のものとして手伝う。つまり、アドリウス王太子妃の役目と2つ担う。ましてや授かるかどうかの運命も気にしなくてはならなく、それらをイーサンはシルヴィアが潰れるのではないかと怒り、心配していたのであった。

 その流れの中で家族の中に王としての役目を担う者が現れれば、負担は減る。現状確率としてはオリヴァー王子・・となるわけだが。現時点彼は公爵家跡取りとしか学んでない。
 本人の意見無視して勉強がすでに課せられている。ただし、レイルズ国復活のための力になるよう勉強と表向き言われ、裏を返せばもしかしたら王になるかもとは聞かされてないが。
 

 当然、現時点で国民には通達していない。アドリウス王家側近と高位貴族の極一部の当主しか知らない。箝口令もひかれている。
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