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そして
しおりを挟む「シルヴィア、こちらに来なさい。」
ウィルに言われ、シルヴィアは立ちあがり、叔父の側へ行く。すると、ウィルがシルヴィアをエスコートするかのような形で手を取る。
「叔父様?」
「シルヴィア、正面を向きなさい。」
にっこり微笑んでウィルが姪に指示を出す。
同じようにイーサンがソファーから離れて立っており、イーサンとともに来た者たちはイーサンの後方にまわっていた。
イーサンの顔は緊張した表情になっている。
イーサンは今一度慎重になる。
頼み事に使う言葉を選び間違えてはいけない。間違えればおそらくシルヴィアの母はイーサンが娘の事を本当に理解しているとは思わないだろう。この眼の前のシルヴィアの祖母も。
そして間違えればシルヴィアは自分の望む答えをくれないだろう。お互いの気持ちは先程確認できた。だが、両思いであろうとも言葉選びを間違えればシルヴィアは自分を否定することは目に浮かぶ。
イーサンは一歩前にでる。そして片膝をつき、シルヴィアを見上げる。
「シルヴィア・ローズ・クラーク公爵令嬢
私は幼き頃より貴方を恋い慕っております。
先程お伝えした通り、私は生涯貴方を愛し続けます。
互いに互いを幸せにする努力をしていく人生を
私、イーサン・ルイ・アドリウスとともに過ごしては頂けないでしょうか?
私と生涯を共にするということは国を、国民を守っていくという重い責任も共に担うこととなります。
時に傷つくこともあるでしょう。それでも誰もがどこか笑顔になれる未来を共に助け合い、目指して頂けないでしょうか?」
イーサンのその表情は緊張した中に大事なものを失うかもしれない泣きそうな様子が隠れ見えていた。でも、それを必死に抑え、シルヴィアをみつめる。
「はい。私、シルヴィア・ローズ・クラークは貴方様と共に人生を歩む事を望みます。
私が貴方の側に生涯いる事をどうぞお許し下さい。」
イーサンの眼から涙が溢れはじめる。シルヴィアの手を取り、手の甲に口づけをする。
数名の立ち会い人のもと、プロポーズは無事に終わった。
そう、イーサンは間違えなかった。もし、君を幸せにすると言ったらシルヴィアはイーサンを拒否しただろう。
シルヴィアにとって、お互いが相手を思い、相手を互いに幸せにする努力をするということが大事な事だった。
自分が幸せか不幸せか、それを決めるのは自分自身だから。
そして御一行様はクラーク公爵家に向かう。
突然正装の王太子とそのお付の者と、レイアルズ公爵夫人と令息、そしてシルヴィアが数名で姿をみせ、クラーク公爵家は驚き、あわててサロンの方へ案内する。
イーサンからシルヴィアにプロポーズをし、承諾してもらった件を説明され、クラーク公爵は顔色が赤になったり白になったり落ち着かず、オリヴァーはやれやれとほっとした表情になっていた。証拠として立ち会い人まで用意していたのだから、疑いようもなく、クラーク公爵は言葉が出てこない。
問題は腹黒・・・もとい、クラーク公爵夫人。
イーサンにとってはある意味、腹黒の師匠だ。
だが、クラーク公爵夫人は黒い笑顔も恐い表情も浮かべてない。
娘に視線を向け、声をかける。
「シルヴィア。嘘偽りのない貴方の答えなのね?貴方自身が選んだ未来なのね?」
「はい。お母様。」
「殿下。貴方は私に、一度シルヴィアを取り上げた私に怒りを覚えてますか?」
「いいえ。当時は何故だろうと泣いた日も実はありました。その件に関しては怒りもありました。でも、それがなければ今の自分はおらず、一方的に気持ちだけを押し付ける自分に育っていたかもしれません。時々公爵家に預けられた私にとって、貴方は第二の母のような存在でもあります。理由もなく翻弄されていたわけではなかったと知ります。気付かせ下さり、ありがとうございます。気付けなければ私は民の気持ちも表面しか理解できない人間になっていたかもしれません。」
クラーク公爵夫人は慈愛を感じさせる笑顔を見せた。
あとは、イーサンが城に戻り、本日は自分がシルヴィアに求婚し、答えをもらったことを報告するだけなのだが、そこで結果を喜んだのもつかの間、両陛下がドン引きする状況が発生するのであった。
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