孤独の華

御伽夢見

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第二章

王妃マリー

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 「・・・そう。やはりジェシカは生きていたのね。しかも誰かの妨害があったですって?」

 片膝をつき、頭を下げた姿勢のままの報告者に王妃マリーは近寄る。
 王妃は報告者の耳元で話す。

 「妨害した者を捕らえることもできず、何者かもわからず、戻ってきたとは。」

 報告者がそのまま横へ倒れる。心の臓にナイフが刺さっていた。

 「同じ目にあいたくなければ、私を失望させないでちょうだいね。」

 その後ろに控えていた者たちに声をかけた。

 「あれ・・は城から出てないの?ジェシカを溺愛しすぎてむしろ執着してる感じだけど。あの執着心たまらないわね。それをもし自分の方へ向けられたらと思うと身体がゾクゾクする。すでに婚姻の印は身体から消えてるようだし。あれは国王の後継者。国王亡き後はいずれ私の夫・・・となってもらう。」

 ふふふ、と王妃は上気した顔でうっとりとしていた。



           *



 マリーが記憶を蘇らせたのは10歳の頃。転生を自覚した直後に歓喜した。

 今世の名前は『マリー』だなんて。こんな事ってあるのね。

 うふふ。いつか絶対あの人に会ってみせる。そして奪う・・の。

 当時わずか10歳の侯爵令嬢マリーは黒い笑顔を浮かべていた。



           *


 
 あの日、カイル王子はひっそり城に戻り、姿変えの術をかけて影武者をさせた側近の1人と交代した。

 本当はあのままジェシカを横抱きにして連れて帰り、自分の部屋に隠してしまいたかった。
 だが、王妃の手下が彼女を狙い、そして他にも誰かの命令を受けた者が彼女を捕らえようとしていた。

 謀反者がいなければ、少なくとも彼女は今まで通り、どこにいるか王妃にバレずに過ごせていたはずだ。くそ、許せないぞあいつ。

 そしてあの悲鳴を、あげた男。あいつに命令していたのは誰だ?ジェシカを守るために妨害させてもらったが、直後に消された・・・・・・・・・

 迂闊な動きはやめて様子をみた。ジェシカとともにいた2人の人物も誰なのかわからなかったし。いや、聖騎士あの男はどこかで見たことがある。

 どちらにしても託すしかなかった・・・。

 切ない。
 愛しい。
 怪我をした手に触れることしかできなかったなんて。
 そっと抱きしめたかった・・・




           *


 「あれ?ジェイさん、その腕のところの小さなアザのようなものは何ですか?」

 レイがジェシカに声をかける。

 長袖で念の為隠していたはずだった。袖がたまたまめくれかかり、婚姻の紋章の一部がみえていた。いや、さらけ出しても通常はみえないように、さらに魔法で隠していたはずだった。

 レイにはみえている・・・・・・・・・

 ジェイはめくれかかった袖が自然に戻るようみせかけ、返事をする。

 「何のこと?何かの影か、もしくは見間違えでしょう。」

 「え?ごめんなさい。」

 レイは疑わずに素直に謝った。



 レイが無意識に魔力を使っているようにもみえない。人ではない?いいえ、人の気配はこの子にないわけではない。でも、人としての気配も曖昧なオーラ。
 ただのでないのは確かだわ。



 ジェシカはしばし考えていた。


 「おーい、2人とも。クエスト受けてきたぞ。簡単なやつ。近くの洞窟にある薬草を取ってこいってさ。多少、ヘンテコなのが出現するらしいが、少しは金が稼げるぜ。」

 少しの時間、離れていた野良騎士カイルが戻ってきた。
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