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過去と今
なんとかなった
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ヴァンくんにとっては昔かもだけど、私にとっては半年前だったから、ついあの時と同じ感じで食べさせようとしちゃった、けど。
……っは! しまった!
料理長さんがいるの忘れてた……! こ、これよくないよね!? 当主としての威厳とか、だからヴァンくん驚いた顔してるんだよね?!
後ろにいる料理長さんからの視線が痛い、どうしようって持ってたスプーンをとりあえず下におろそうとしたら手首を掴まれ、ヴァンくんの目がギッと強く睨んできた。
「ひっ?!」
そのままヴァンくんは大きく口を開けてスプーンを咥えようとしたんだけど、あんまりにも大きい口で、手まで食べられるんじゃないかって一瞬恐怖した。
でも、当たり前だけどスプーンに乗ったケチャップだけを食べてくれたので、バクバク鳴る心臓を叱咤しつつ、どうだったか聞いてみる。
「……ん、うめぇな」
「あっ、ほ、ほんと?」
「おう。こっちの方が味が濃くてオレは好きだな」
思い出の中の市販品の方が絶対美味しいだろうに、私に気を遣ってくれるなんて優しい子だなぁ。
濃い味が好きならともうひと摘まみだけ香辛料を入れて、ひと煮立ちさせたら完成だ。
「じゃ、いよいよオムライスだよ。もう少しだから待っててね」
「ああ」
蒸らしたお米を確認したら、いい感じにふっくらしていて一安心。
芯とか残ってたらどうしようって思ったけど、あの短い浸水時間でもふっくらするなんて。こっちの世界のお米は柔らかめなのかもしれない。
「じゃ、これを掻き混ぜてから一旦置いといて。フライパンに油を少し、具材を一気に投入」
ベーコン、玉ねぎ、ピーマンを一気に入れる。
野菜から一種類ずつという人もいるけど、面倒なので私はいつも一緒に入れるタイプだ。
「で、火が通ってきたらお米を加えて混ぜて。バターとお塩を適量入れて、また混ぜる」
オムライスを料理長さんが知らなかったから、できるだけ声に出してどういう手順なのかを伝えた方がいいかなと思って。
あ、でも教えるならもっと丁寧に作った方がよかった……? いや、悩んでも分からないし、もうできあがっちゃったからいいや。
「よし、ヴァンくんのご飯は完成。味見用のケチャップライスも作っておくね」
「あ? 味見用ってなんだ」
「ヴァンくんに昔作ったのはバターライスだったけど、ケチャップライスも美味しいからさ。こっちだとバター高いらしいし、ケチャップライスの方が使いやすいと思って、料理長さんにはこっちを試してもらうつもりだよ」
言いながらチラッと料理長さんを見れば、納得したように頷いてくれていたので不正解ではなかった。ちゃんとお屋敷の当主であるヴァンくんに高い材料を使ったのが良いと思ってね。
「おい、そっちもオレ用の作ってくれ」
「え? ケチャップライスの方も?」
「そうだ」
ご飯を一度お皿に乗せていたところでそんなことを言われ、鍋の中の残ったご飯の量を思わず確認してしまった。
だって、ヴァンくんのご飯だけで一合くらいあるのに、プラスしてケチャップライスもだと……作ったご飯じゃ足りなくなりそうで。
「う、う~ん……あ! なら、ご飯だけ半分ずつお皿に盛って、その上に卵をかけようか?」
我ながらナイスアイディアだ、これならヴァンくんにも料理長さんにも二種類の味を楽しんでもらえる!
バターとお塩だけの方が、ケチャップライスよりオムライスの卵とケチャップの味が分かりやすいしね。それに、せっかくなら料理長さんにもいい食材で作ったのも食べてもらわないと。
……っは! しまった!
料理長さんがいるの忘れてた……! こ、これよくないよね!? 当主としての威厳とか、だからヴァンくん驚いた顔してるんだよね?!
後ろにいる料理長さんからの視線が痛い、どうしようって持ってたスプーンをとりあえず下におろそうとしたら手首を掴まれ、ヴァンくんの目がギッと強く睨んできた。
「ひっ?!」
そのままヴァンくんは大きく口を開けてスプーンを咥えようとしたんだけど、あんまりにも大きい口で、手まで食べられるんじゃないかって一瞬恐怖した。
でも、当たり前だけどスプーンに乗ったケチャップだけを食べてくれたので、バクバク鳴る心臓を叱咤しつつ、どうだったか聞いてみる。
「……ん、うめぇな」
「あっ、ほ、ほんと?」
「おう。こっちの方が味が濃くてオレは好きだな」
思い出の中の市販品の方が絶対美味しいだろうに、私に気を遣ってくれるなんて優しい子だなぁ。
濃い味が好きならともうひと摘まみだけ香辛料を入れて、ひと煮立ちさせたら完成だ。
「じゃ、いよいよオムライスだよ。もう少しだから待っててね」
「ああ」
蒸らしたお米を確認したら、いい感じにふっくらしていて一安心。
芯とか残ってたらどうしようって思ったけど、あの短い浸水時間でもふっくらするなんて。こっちの世界のお米は柔らかめなのかもしれない。
「じゃ、これを掻き混ぜてから一旦置いといて。フライパンに油を少し、具材を一気に投入」
ベーコン、玉ねぎ、ピーマンを一気に入れる。
野菜から一種類ずつという人もいるけど、面倒なので私はいつも一緒に入れるタイプだ。
「で、火が通ってきたらお米を加えて混ぜて。バターとお塩を適量入れて、また混ぜる」
オムライスを料理長さんが知らなかったから、できるだけ声に出してどういう手順なのかを伝えた方がいいかなと思って。
あ、でも教えるならもっと丁寧に作った方がよかった……? いや、悩んでも分からないし、もうできあがっちゃったからいいや。
「よし、ヴァンくんのご飯は完成。味見用のケチャップライスも作っておくね」
「あ? 味見用ってなんだ」
「ヴァンくんに昔作ったのはバターライスだったけど、ケチャップライスも美味しいからさ。こっちだとバター高いらしいし、ケチャップライスの方が使いやすいと思って、料理長さんにはこっちを試してもらうつもりだよ」
言いながらチラッと料理長さんを見れば、納得したように頷いてくれていたので不正解ではなかった。ちゃんとお屋敷の当主であるヴァンくんに高い材料を使ったのが良いと思ってね。
「おい、そっちもオレ用の作ってくれ」
「え? ケチャップライスの方も?」
「そうだ」
ご飯を一度お皿に乗せていたところでそんなことを言われ、鍋の中の残ったご飯の量を思わず確認してしまった。
だって、ヴァンくんのご飯だけで一合くらいあるのに、プラスしてケチャップライスもだと……作ったご飯じゃ足りなくなりそうで。
「う、う~ん……あ! なら、ご飯だけ半分ずつお皿に盛って、その上に卵をかけようか?」
我ながらナイスアイディアだ、これならヴァンくんにも料理長さんにも二種類の味を楽しんでもらえる!
バターとお塩だけの方が、ケチャップライスよりオムライスの卵とケチャップの味が分かりやすいしね。それに、せっかくなら料理長さんにもいい食材で作ったのも食べてもらわないと。
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