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Side レオポルト(本編)

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 俺とカイルは無事十五才になった。
 そう、ついにカイルが王都の学園に入学する年がきたんだ。

 三ヵ月後には入学式だから、あと二ヵ月もしたらカイルはここを出て王都に向かい、貴族籍に入ることになる。だからこそのラストスパート! 貴族教育の仕上げをしっかりしなければならないんだ。カイルに王都で恥をかかすわけにはいかないもんね。

 俺とカイルは五才の頃から教師につき、貴族として生きていくために必要なアレコレを、肉体的にも脳みそ的にも山のように詰め込んできた。

 カイルの本当の身分を知る我が母たる侯爵夫人の斡旋だから、俺たちの先生は皆かなり優秀な人たちばかりだ。その先生たち全員から、もはや教えることはないとお墨付きをもらえるほど優秀なカイル。

 流石は主人公だね。素晴らしいよ、カイル!

 ということは、あれ。もしかして、カイルは既に完璧に仕上がっているということになるのか? いつ貴族子息という立場になっても、もう困ることはない……?

 なんてこった、今更焦ることなんてなにもなかった!

 素晴しいよ、カイル!
 同じように学んできたのに、まだまだダメ出しばかり食らっている俺とは大違いだよ!

 しかし、そうなってくると……。
 カイルが王都へと旅立ち、俺とお別れする日の到来が、なんだか急に現実味を帯びてきてしまった。これまでは、まだ準備ができていないからと、現実逃避していられたのに……。

 はぁ、だって、カイルと離れるのはやっぱり辛い。

 俺と別れ、カイルが生活の場を王都に移すことが最善だと分かっている。
 だから止めない。笑顔で送り出すことができる。でも、やっぱり別れるのは寂しくて仕方がないんだ。

 最近、ふとした時に昔のことが頻繁に思い出されるようになった。

 俺が前世を思い出した五才の頃。
 あの頃のカイルは驚くほど可愛かった。金髪碧眼で品のある整った顔立ちはまさに天使のようで、一度見たら忘れられないくらい愛らしかった。

 それが少しずつ成長していって。
 可愛かった顔は凛々しく引き締まり、今では精悍さも兼ねた美丈夫に成長した。
 無駄な贅肉のない身体はとても均整よく引き締まっていて、見栄えが良く、まるで美術品を思わせる美しさがそこにはある。腰の位置が驚くほど高く、足がとても長くて、後ろ姿の格好良さは他に類を見ないほどだ。

 ああ、やっぱりカイルはかっこいいな。改めて感心させられてしまう。
 あんなに素晴らしい存在と、共に育つことを許された転生後のこの人生に、心から感謝せずにはいられない。


 昼食時、また過去を思い出しながらカイルの素晴らしさに思いを馳せていた俺は、手元の料理の皿から目を反らすと、向かいの席で食事をしているカイルへとその視線を移した。

 いつ見ても、カイルのその美しい所作には、目を奪われずにはいられない。

 俺だってマナーはしっかりと学んでいる。だから綺麗に食べることは上手くできている筈だ。

 でも違うんだ。ただ綺麗に食べるだけの俺の所作と、体から滲み出る気品ある空気を生み出すカイルの所作とでは、上手く言葉にできないけれど、比べられない大きな違いがそこにはある。
 ただ食事をしているだけなのに、カイルからは隠しようもない高貴さが溢れて出ている。

 なんだろう、指の角度? 唇の開く大きさ? 表情? 
 なにが違うのか分からないけど、確実になにかが俺とは違っている。

 こういった、ちょっとしたところからも分かる。理解させられてしまう。俺とカイルは違うのだということを。

 カイルの横に並び立つべきなのは俺じゃない。俺じゃ無理なんだ。
 もっとカイルにお似合いで、もっとカイルの役に立てて、もっとカイルから思われて、もっとカイルのことを思ってあげられる。そういった相手こそカイルの隣には相応しい。
 そして、そういう人たちと、これからカイルは学園で出会うことになる。

 俺は父上に手紙を出して、学園には入学しない旨と、その理由、ここに留まり領地のために尽くしたいという自分の考えを伝え、好きにしていいとの返事をもらっている。

 だから。
 本当にあと少しなんだ。あと少しで俺とカイルはお別れすることになる。この美しい所作を見ていられるのも、もう僅かな時間しか残っていないんだな……。

 なんてことを考えながらカイルを見ていたら……おや、どうしたんだろう。食事中だというのに、カイルが突然席を立った。そして、俺の方にやってくる。

 勿論、それはマナー違反だ。驚きながらも不思議に思って様子を見ていると、すぐ横に来たカイルが、いきなり俺のことを抱きしめた。え?!

 突然のことに俺は面食らってしまう。
 どうしたんだよ、カイル。こんな使用人たちが見ている場所で、一体なにをやっているんだよ?!

「ど、どど、どうしたの、カイル!!」
「どうしたの、じゃない! レオこそどうしたんだよ!」
「え? な、なにが?」
「なにがって……気付いていないのか?」

 抱きしめていた腕を解くと、カイルは俺の肩に手を置き、とても辛そうな顔で俺を見つめた。

「さっきからずっと泣いてるじゃないか!」
「……え……」

 俺は咄嗟に自分の頬に手で触れた。右も左もすごく濡れてる。

 言われて気付いたが、目の前の景色が滲んでぼやけている。しかも、流れる涙は今も止まらずに、瞳から溢れ続けていた。

「あ、あれ? どうしたんだろう? ご、ごめんね、食事中にこんな無作法をして。すぐに泣き止むからちょっと待ってて」

 食事しながら泣くなんて、マナー違反は俺の方だった。
 俺は慌てて手の甲で涙を拭うけれど、一向に涙は止まりそうにない。

 嫌だな、どうしたんだろう。いい年して人前でこんなに泣くなんて恥ずかしい。貴族として、紳士として有るまじき行為だ。

 そんな俺を見ていたカイルが眉間に深くシワを寄せ、小さく首を振った。かと思うと、俺の腕を掴んで立ち上がらせた。驚く俺を引きずるようにして歩き出す。
 そのまま食堂を出ようとして、扉の隣に立っていた執事に声をかけた。

「午後の俺とレオの予定は全てキャンセルでお願いします。先生方へお詫びを伝えてもらえますか?」

 え、そんなのダメだ。今日の午後は俺のちょっと苦手なダンスのレッスンが入っている。我が家の優秀なナイスミドル執事が、俺のサボりを許してくれるワケがない。そんなお願いしたらカイルが怒られちゃうよ。

 そう思った俺の予想を覆し、執事はすぐに頷いた。

「分かった。坊ちゃんを頼んだぞ」

 そう言った執事の顔もカイル同様とても心痛を表していて、周りを見回すと、他の使用人たちも同じような表情をしていることに気付いた。

 え、な、なにこれ。
 将来、この館の管理者になる予定の俺の情けない泣き顔を見たせいで、先行き不安になってしまったのだろうか。それでそんなに辛そうな顔をしているのだろうか。

 うわー、だとしたら非常に申し訳ない。情けない所を見せて本当にごめんなさい。

 皆に謝ろうとしていた俺を、カイルはさっさと食堂から連れ出した。そして、そのまま腕を引いて俺たちの部屋へと入ると、俺を強引にベッドへと座らせたのだった。

「ロルフ、結界を頼む。いいと言うまで俺たち以外、誰も部屋に入れるな。お前も妖精も同様だ」
『承知』

 え、ロルフって結界が張れるのか! すごいな、全然知らなかったよ!
 流石は聖獣、すごいんだな、などと思っていたが、いやいや、そんな場合じゃない。結界まで張って他の人が入ってこれないようにするなんて、カイルはどういうつもりなんだろう。

 ま、まさかとは思うけど、閉じ込めてお説教とか?
 いやいや、それはあんまりじゃない?

 そもそも、俺がちょっと人前で泣いてしまっただけなのに、どうしてこんなに大袈裟なことになっているのか分からない。

 いや、迷惑をかけたことは分かっている。それにしたって、カイルだけではなく、執事や他の使用人たちまで、あんな風に悲愴な顔をすることはないだろうと思うんだ。
 涙なんて、できれば見て見ぬふりをして欲しかったよ、恥ずかしい。……まあ、俺が悪いんだけどさ。

 とにかく、この変な感じの雰囲気を元に戻すにはどうしたらいいんだろう。俺が土下座して謝ればいいのか? だったら今すぐやるけども。

 でもなんか、そんな感じの空気でもないんだよね、うーん。

 どうしたらいいのか分からず、嫌な汗をダラダラ流している俺の横にカイルが腰を下ろした。相変わらず、辛くて苦しそうな顔をしている。

「カイル?」
「話してくれ、一体なにがあったんだ?」

 突然の質問に、俺はなにがなんだか分からない。

「な、なにがって?」
「ここ一年くらい、レオがずっとなにかに思い悩んでいることには気付いてた。時々考え込んだり、ふと悲し気な顔をしたり。いつも明るく無邪気な笑顔を見せていたレオが、少しずつ笑わなくなっていった。平静を装っていても、どこか心ここにあらずで、いつも悲しみを内に秘めていることに、俺だけじゃなく皆気付いてた」
「…………」

 そうか、俺は最近笑っていなかったのか。自分じゃ気付いていなかったな。
 っていうか、そんなことよりも。

「み…皆って?」
「皆は皆だよ。館の使用人たちや自衛団の人たち、孤児院の子供たちに教会のシスター、町の住人たちもそうだし、俺やロルフにレオの妖精。レオの元気のない様子に皆が心配して心を痛めてた。けれど、気付かないフリをしてた。レオから話してくれるのを、助けを求めてくれるのを待っていたからだ」

 ぎゅっとカイルが俺を抱きしめた。

「でも、いくら待っても全然話してくれない。レオはどんどん元気がなくなっていく。食事の量も減って随分痩せた。ついにはさっき、皆の前で泣きだしたじゃないか。しかも、そのことに自分でも気づいてなかったんだろう? もう待てない。どうしたんだ、なにがあったんだよ?!」

 真剣な顔で俺を見つめるカイル。こんなに心配してもらえて、申し訳ないながらもすごく嬉しい。

 しかし……困ってしまった。
 ここ最近俺が笑えていなかったのだとしたら、その理由は一つしかない。近く訪れるであろうカイルとの別れを悲しんでいたせいだ。

 自分でも情けないと思う。共に過ごせる残された貴重な時間を、カイルと一緒に最大限に楽しもうと思ってた。素晴らしい思い出を山ほど作ろうと思ってた。たくさん一緒に笑おうと思ってた。

 それなのに……。

 離れることがカイルのためになると分かっていても、それでもやっぱり別れは辛いし悲しくて、心が痛くてたまらない。考えただけで胸が苦しくなり、涙が溢れそうになってしまう。いや、実際に泣いてしまったか。

 けれど、これはどうすることもできないし、我慢するしかないってことを、俺はちゃんと理解している。

 でも、それをどうやってカイルに説明したらいいんだろう。

 無理だ。なぜなら説明しようとすると、前世のことや、読んだ本の内容まで話さなくてはならなくなる。

 話したところで信じてもらえるか分からない。いや、カイルなら信じてくれるかもしれないけれど、話すとカイルの未来が変わってしまうかもしれない。それだけは絶対に許されない。

 カイルには、本来彼が手に入れるべき幸せを絶対に掴んでもらいたい。俺のためにカイルの未来をダメにしたくない。するわけにはいかないんだ。

 そう思って黙っていると、カイルが傷ついた顔をした。

「俺じゃ頼りにならないか? レオの助けにはなれない?」
「! カイル、違っ……」
「そう判断したからなにも言ってくれないんだろう? でももういい。これ以上は黙って見てはいられない」

 カイルの美しい碧い瞳に燃えるような熱が宿った。ぞくり、と俺の背中に震えが走る。

「な、なにするつもり……?」
「自分からしゃべりたくなるようにしてやる」

 トン、と俺の体は押されてベッドに倒された。驚く俺の上からカイルの体が圧し掛かってくるのと同時に、貪るような激しいキスをされて驚きに目を見開いた。

 え、なっ、どういうこと?!

 身をよじって逃げようとしても、俺に覆いかぶさっているカイルの体はびくともしない。

 口内の至る所をカイルの舌に舐めまわされる。くちゅくちゅといやらしい水音が聞こえ、触れ合う舌から甘い痺れるような快感が次々と生まれてくる。口端からはどちらのものか分からない唾液が流れ落ちた。

 舌を絡められると、ぞわぞわと腰が震えた。あまりの気持ち良さに頭がボーッとしてきてしまう。服の上から乳首を摘ままれ、俺の身体はピクリと跳ねた。

「あっ、んむ……ん、ああ……」

 舌を吸いながら、カイルは俺の乳首を指を使って愛撫する。摘まみ、クリクリとこね回し、爪で引っ掻いたかと思うと指の腹で圧し潰す。乳首が熱くてジンジンし始めた。

「いやらしいな。服の上からでも乳首が硬くなったのが分かる」

 薄く笑いながらそう言われ、俺は羞恥で赤くなった。

「だって、そこは……あっ、ダメ……ああ……やっ」
「うん、知ってる。ここはレオの一番弱いところだもんな。触るとすぐに発情してしまう。ああほら、もうコリコリだ」

 カイルは服の上から俺の乳首を舐め始めた。かと思うと、強めに舌でグリグリ押し潰す。快感に体が震える。気持ちい。体が勝手にもっと舐めて欲しがって、俺の身体が勝手に乳首をカイルに突き出してしまう。

 カイルは俺の服を剥ぎとると、露わになった赤く腫れた突起を口に含み、ジュルルルッと音をたてて強く吸った。

「んあ……ああっ!」
「こうやって音をたてて吸われるのが好きだよな?」
「あっ、好き……好きぃ……んんっ」

 こうなってはもう俺はカイルに逆らえない。
 なにせ俺の身体のことは、俺以上にカイルの方が知り尽くしているのだから。


 数年前、俺の精通を促すことを目的に、俺とカイルは夜な夜なお互いのアレを触りっこしていた。その後、俺は無事に精通したため、触りっこはする必要がなくなった。けれど、俺たちはエッチな触れ合いをやめようとはせず、むしろその内容を濃くしていった。

 なぜかって?
 そんなの決まってる。

 それは俺たちが健全な十代半ばの男子だったからだ。性的なことに興味があり、そこから得られる快感に従順で、更なる悦びを貪欲に求めていった。

 そんなワケで、俺とカイルはお互いの体を使い、性的な好奇心と欲求を満足させるため、夜な夜なエッチなことに励んでいたわけだ。若いんだもん、仕方ないよね。

 どちらかと言うと、率先してやっていたのはカイルの方で、まあ確かに俺も気持ち良いことは嫌いじゃないから、あえて反対はせず、二人で夢中になって快楽と快感に浸っていた。

 でも流石に事がセックスに及ぼうとした時は抵抗した。嫌だったわけじゃないけれど、やっぱりセックスは好きな相手とするべきだと思っていたし。

 カイルにはこの先、心から愛する人ができることを俺は知っている。だから俺なんかとしてはダメだというつもりで、カイルからの誘いを何度か拒絶したんだけれど……。

「ああ、レオ、すごく綺麗だ。かわいい。もう我慢できない。レオに入れたい。お願いだよ、ね、レオ。絶対レオのことも気持ち良くする。俺、レオと一緒に気持ち良くなりたい。ねえ、レオ、レオに入れさせて? もっとレオを感じたいんだ。頼むよ、レオ」

 片手で俺のペニスをやわやわと扱き、こめかみや頬に何度もキスをしながら耳元で甘く囁かれるたび、俺の理性の糸はブチブチ切れて細くなっていった。

 基本的にカイルのお願いは、どんなことだって叶えてやりたい俺である。捨てられた犬みたいな顔で懇願され、しかも性感を刺激されながらそんなことを言われたら、もう断り続けるなんて無理な話だった。

 その時から俺たちは毎日毎晩セックスしまくった。事後には必ずカイルが俺に治癒と浄化の魔法をかけてくれるから、体が傷つくこともなかった。
 魔法のおかげで、毎日連続でセックスしても俺の体に不調はなく、俺は毎晩カイルに体中を愛撫され、挿入されることで得られる快感を教え込まされ、気持ち良さに喘ぎまくる淫らな日々を送っていた。

 ものすごく気持ち良くて、控えめに言って最高だった。

 とはいえ、流石に毎日すると俺の体力的負担は大きいわけで、どうせだったら治癒だけでなく回復魔法もかけてくれるようお願いすると、それはダメだと却下されてしまった。

 回復魔法をかけてしまうと、身体のすべてが元の状態になってしまうらしい。挿入すると俺の中はカイルのアレの形を覚えるらしく、それをカイルは元に戻したくはないのだそうだ。

 俺にはよく分からないけど、キスマークと同じで所有印がどうとかこうとか、俺専用感が半端ないとかなんとか言っていたような気がするけど……うん、正直、なにを言っているのか俺には全く分からなかった。

 けれど、カイルがすごく幸せそうだから、だったらいいかなぁと、あまり深くは考えずカイルにすべてを任せていた。

 流石に朝起き上がれないほど俺が疲れていた時は、部分的に少しだけ回復魔法をかけてくれたカイルは、やっぱり誰よりも優しいなあと、俺は増々尊敬の念を大きくしたものだ。


 そんなワケで、この数年間の内に、俺の身体は隅々までカイルに知り尽くされてしまっていた。どこが感じるだとか、どうされると弱いだとか、そういったことは全て知られている。もう数えきれないくらい体を重ねてきたのだから、それも当然だろう。

 十代男子の性への渇望と探求心は、ホント、すごいよね。

 ともかく、俺の身体をすべて知っているカイルの手にかかったら、俺がすぐに蕩けてしまい、抗えなくなるのは当然のことだった。

「あ、んうっ……乳首が、あ、きもちぃ……ああっ」
「乗り気じゃなくても、ここを俺にかわいがられたら、レオの身体はすぐに欲情しちゃうんだよな」
「だ、だってぇ……カイルが僕の身体……こん、な……にぃ、んんっ」
「そう、俺がしたんだ。俺がこんなにレオをいやらしくした。ああ、すごくかわいい。なあ、なにを悩んでたのか言う気になった? 今言えば優しくかわいがって、もっともっと気持ち良くしてあげるけど?」

 俺は首を横に振った。

「だめ、言えな……」
「だったら今からはレオを気持ち良くするためじゃなく、隠していることを言わせるために触るから。ちょっとキツイかもしれないけど、辛かったら早く話してくれよな」
「え? ……あああっ!」

 既に敏感になってる乳首をいきなり強く吸われ、俺は強い刺激に全身を硬直させた。と思ったら、次は乳輪の周りに優しくキスを繰り返す。かと思えば、細めた舌先でぷっくり膨れた乳首の先端をチロチロくすぐるように舐められた。

 種類の違う快感を、感じやすい乳首に与えられ続け、否応なしに俺の性感が高められていく。

「あ……あ、ああ……はぁ…んんっ」

 くすぐったいけど気持ちい。気持ちいけど刺激が少なくてもどかしい。身体が強い刺激を求めて疼く。

 もっと激しく舐めて欲しくて、俺はついいつものように胸をカイルに突き出した。カイルはそれを無視し、一切の愛撫をやめてしまう。昂った体を中途半端に放りだされ、俺はもどかしくて半泣きになった。

「あ……あ、カイル……な、なんで?」
「言う気になった?」
「……だ、だめ、言えな……」
「うん、だろうと思った」

 小さく息を吐くと、カイルがまた俺の乳首に激しくむしゃぶりついた。反対の乳首は指で強くこね回される。硬く尖った乳首がくりくりと捻られるたび、そこから甘い快感が体中に広がった。気持ち良さに腰が跳ねる。ペニスの先端からは愛蜜がトロトロと流れ出した。

「あ、きもちっ……んんっ……うあっ」

 乳輪ごと口に含まれた乳首が、温かく濡れた舌でレロレロと舐めまわされた。かと思うと今度はじゅじゅっと吸われ、腫れて真っ赤に膨れたところを前歯でカリッとかじられしまい、その刺激で俺は大きく喘ぎ声を高くあげた。

「ああっン」

 ビクビク体が震える。すごく気持ちいい。
 乳首で生まれた快感が背骨を伝い、脳とお尻とチンポに流れてビリビリと体中が敏感になる。いやらしい汁がトロトロと流れて後孔を濡らす。噛まれた乳首が痛気持ち良くってたまらない。お尻の奥がジクジク疼いた。

「ああ、もうダメ。イく……乳首でイ……んあっ、あああああっ!」

 気が高まり、射精感が膨れ上がり、今まさに精液を吐き出そうと俺の腰に力が入った瞬間、カイルが俺のペニスの根元をギュッと掴んだ。

「?!」

 本当だったら射精してすごく気持ち良くなれてたはずなのに、それを無理矢理止められて、俺の身体は欲求不満で爆発しそうになってしまう。

 苦しい。イきたい。出したい。チンポ、チンポがおかしくなる。

「あ、なんで……? カイル、やだっ、手離してっ」
「ダメだ」
「やだよ、イきたい、苦し……うう、カイル」
「しゃべるか? 俺に全て話すか?」
「そ、それは……」

 できない。イきたい。でもイけない。出したい。精子出したいよぉ……。
 俺は絶望的な顔でボロボロと涙を流し始めた。

 だって言えないんだ。カイルのために俺は言うわけにはいかない。

「だめ、言えな……ふっ……ううっ、ぐすっ」
「頑固だな」

 カイルは握った俺のペニスの先端をペロリと舐めた。
 射精出来ないのに与えられ続ける快感は拷問でしかない。鈴口をほじるようにグリグリ舐められて、俺は狂ったように善がってしまう。

「ああっ、カイルやめて! お、お願……やめてぁああーっ!」

 苦しいのに気持ちい。ビリビリと痺れるような快感に体が震える。
 いつだって射精できる状態なのに出せなくて辛い。ぺちゃぺちゃと音をたててカイルに舐められている先端が、痛いほどに気持ち良くて射精できないことが苦しくて悲しい。

「あ……ああっ、ビュービューしたい。カイル、白いの出したいよ、うううっ」
「はは、かわいいな、レオ。そうだな、ビュービューしたいよな。白いのいっぱい出したいな?」
「うん……ぐすっ、出したい、白いの……出したいよぉ」
「俺に隠していることを全部言ってみろ。そうしたら、すぐに気持ち良くしてやるから」
「そ、それは……ううう、で、できないよぉ……うう」
「これでもか?」

 俺のペニスの根元を左手で握ったまま、カイルは竿の部分を激しく自分の口内に出し入れし始めた。舌を使って裏筋を舐めまわし、先端のくびれの部分に舌を這わす。唾をいっぱい出してじゅぶじゅぶと俺に快感を与えながら、右手は尻奥の俺のイイところをピンポイントでぐりぐりと容赦なく刺激した。

「いやっ! だ、だめっ、だめ――――っっ!」

 度を超す激しい快楽に、見開いた瞳から涙が溢れ落ちる。

 発熱する。体中の毛穴が開き、汗が滲んで俺の白い肌をしっとりと湿らせた。
 カイルの舌が触れる部分から快楽が弾ける。指がごりごりと抉る後孔奥の感じるしこりが、たまらない快感を生み出し、チンポが熱くて苦しくてすごく気持ちよくって気が狂いそう。
 次の瞬間、身体の奥で快楽が弾けた。頭が真っ白で体はがくがく震えてしまう。

「ああああっ、はぁ、はぁ……あ……あ……あ」
「あーあ、レオ、空イキしちゃったな」
「……カイル、僕……チンポ……まだ、イッてな……」
「はあ、レオのイき顔、すごくかわいい。空イキ上手になったな、偉いぞ、レオ」

 俺の唇にちゅっとキスした後、カイルが思わず見惚れるほどかっこいい顔で優しく微笑んでくれた。

 カイルが俺に笑ってくれる。それがすごく嬉しくて幸せで、反射的に俺もカイルに微笑み返した。それを見たカイルが苦笑する。

「今どういう状況か分かってるのか? そんなかわいい笑顔を俺に見せて。もしかして、さっきの空イキで理性切れた? だったらもう全部話せる? レオ?」
「ああ、カイルすき……カイル、かっこいい……大好き」
「………………。」

 俺が思ったままを口にすると、カイルは額を片手で押さえて大きく息を吐いた。

「……はぁ、レオ、ほんっとにかわいい。今すぐ入れたい。レオの好きなとこ、俺ので突いていっぱい気持ち良くしてやりたい」
「して? 今すぐして……カイル?」
「あー…、それは俺に隠していることを全部話せたらな。どうする、ここしばらく元気なかった理由、俺に話せるか?」

 俺はしばらく考えた後、ボロボロと涙を流しながら首を振った。

「い、言えない。ううっ……だって、だって言ったらカイルが……ぐすっ、カイルが幸せになれなくなっちゃ……うっ、ううっ」
「なるほど、原因は俺か。それはもうなにがなんでも全部吐いてもらわないとな」
「!!」

 カイルは自分の服のポケットから紐を取り出すと、それまで手で握っていた俺のペニスと陰嚢の根元部分をその紐で縛った。
 自由になった両手で俺を優しく抱きしめたかと思うと、口を深く塞がれた。舌をゆっくり絡ませ合うとすごく気持ち良くて、なんだか俺はとても幸せな気持ちになった。

 なんかもうさっきからずっと、思考がちらかってまともに頭が働いてない気がする。

 あー、キスが気持ちい。紐で縛られたチンポとタマの根元がちょっと痛くて悲しい。射精できなくて泣きたくなる。

「カイル、紐やだぁ、とって、お願い」
「ダメ」
「だって、これがあると出せないんだ」
「うん、そのために結んだわけだしな。いいか、レオ。今からレオのこと何度も何度も出さずにイかせまくるから。理性が完全に焼き切れてなにも考えられなくなるまで、連続で空イキさせまくるから。気持ち良くはさせるけど、かなりキツイだろうし、なるべく早く諦めて全部話してくれ」
「ん、カイル、お口ちょうだい、きす……キスしたい」
「…………はぁ、早く普通にレオと愛し合いたい」

 カイルは大きくため息をついたかと思うと、俺に噛みつくような激しいキスをしながら、両手の指で俺の乳首をくりくりと捏ね繰り回した。途端、俺の発情スイッチがまた入り、身体が熱くなって下腹に甘い痺れが走る。


 この後、なにが起こったのか俺はあまり覚えていない。ただ気持ち良くて、苦しくて、泣きながら何度も何度もカイルに許しを請い、自分から腰を振り、尻奥の俺が一番好きなところをカイルのペニスでゴリゴリと抉られ、頭が変になりそうなほど気持ち良くなって喘ぎまくり、最後にはなにかをぺらぺらしゃべったことは、なんとなくだけれど薄っすらと覚えてる。

 その後、俺が大量の精子を吐き出して、最高に気持ち良くなって、全身白濁まみれになって恍惚となったことも。そんな俺を見て、カイルがとても満足そうにしていたことも。




 なんとなく、覚えているような、いないような……???



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