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Side レオポルト(本編)

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 妖精の森からの帰宅後。 

 夕食を取り、風呂から上がってさっぱりした俺は、バフンと勢いよく自室のベッドに倒れ込んだ。激しい疲労度にそのままボンヤリしていると、しばらくして、風呂を済ませたカイルが、ノックもなしに俺の部屋へと入ってきた。

 実は俺とカイル、カローリナが亡くなった時に寂しさから一緒に寝るようになって以来、今もずっと同じベッドでの就寝を続けている。俺の部屋は、もうノックをする必要がないくらいカイルの部屋とも化していた。

 もちろん、俺は何回もカイルに進言した。そろそろ自分の部屋で寝た方がいいんじゃないかって。その度に「でも、寂しくて……」と、捨てられた子犬みたいな目で見られてしまい、強い態度を貫き通せなかった。

 俺としても、どうしても別々に寝たいってわけでもなかったしね。
 カイルは寝言もイビキもうるさくないし、寝相だって悪くないから、同じベッドで寝ても邪魔にならないし、なんの問題もない。
 それでつい、ズルズルと一緒に眠り続けているというわけだ。

 所詮は男同士だし、そう気にする程のこともないと思って今まで放っておいたんだけど、ただ、もうそろそろ同じ部屋での就寝は限界な気もしている。

 夜眠る時、俺たちはベッドの上ですぐ隣り合って横になるんだけど、でも、体が触れる程には近寄っていない。寝返りした時にぶつかるのが嫌だからだ。

 けれど朝になって目を覚ますと、なぜか俺はカイルに抱きしめられて眠っていることが多い。正面から抱えられている時もあるし、背中から抱きしめられている時もある。

 まあそれはいい。少しテレくさいけど、元々カイルが寂しがるから一緒に寝ているわけだし、傍にいる人の体温を感じ取り、無意識に抱き枕にしてしまうこともあるだろう。

 ただ、問題が一つある。
 それがなにかと言うと、朝、目覚めた時の話だ。

 アレが……当たってるんだ。

 ここのところ毎朝、そう毎朝! 俺の股間やお尻にカイルの勃起ペニスが、もうゴリゴリと押し当てられていて、目が覚めた時にうひゃーってなる。

 いや、いい、いいんだ。だってこれは朝勃ちっていう男の生理現象なんだから仕方がない。

 俺は前世では高校生だったし、そこら辺のことは十分に理解できている。潔癖症ってわけでもないし、嫌悪感でもうこれ以上我慢できないって感じでもない。
 ただ少し気まずいってだけの話で。

 しかし、それで思ったわけだ。カイルもそろそろ自室で寝た方がいいんじゃないか、ってね。

 既にカイルが精通しているのかは分からない。けれど、もしまだだとしてもいずれはする。俺だって今はまだだけど、いつかは必ず精通する。精通したら、当然自慰をするようになる。一人の空間が欲しくなる。

 前世の俺は大変だった。貧乏だったせいで、狭くてボロいアパートにお袋と二人暮らしだったから、壁が薄くて音がすごく気になったし、おかずにするような本やDVDを隠す所さえなくて困った。

 せっかく友達にエロ系のアレコレを貸してもらっても、お袋にうっかり見つかった時の気まずさを想像するだけで俺のアレは萎えてしまい、結局、ほとんど自慰をしなくなったんだ。
 するとしたら風呂に入った時くらいだけど、それだって声とか音が漏れたらどうしようと思うとやる気が失せ、本当にどうしようもなく我慢がきかない時以外、自分のアレを触ろうとも思わなくなった。

 現世の俺はせっかく侯爵子息なんていうお金持ちに生まれ、部屋にしても広い個人のものがあるんだから、自慰くらい誰に気兼ねすることなく好き勝手にやりたいと思ってしまう。
 そのためには、カイルに同じ部屋にいてもらっては困るんだ。そしてそれは、カイルも同じ気持ちのはず。

 そう思った俺は、直球勝負でカイルに直接尋ねてみることにした。
 もしかすると、カイルも俺と同じようなことを思っていて、でも言い出し辛くて困っているところなのかもしれない。

 うん、そうだよ。カイルだって絶対に困っているはずだ!
 だったら、精神年齢が上の大人な俺の方から話をふってあげないとな。

 俺はベッドの上で横たわっていた体を起こすと、ソファーに座って本を読んでいたカイルに話しかけた。

「カイル、ちょっと質問があるんだけど、今いい?」
「なんだ? ロルフのことか? それとも精霊王のこと?」
「いや、そういうこととは全然関係なくて……あのさ、カイルってもう、せ、せせ、せ、精通した?」
「…………」

 カイルが無言でじっと俺を見つめてくる。
 俺はなんだか恥ずかしくて、顔が真っ赤になってしまった。

「ごっ、ごめんね、変なこと聞いて」
「別にいいけど……でもなんで? レオのことだから、ただ気になって聞いたわけじゃないんだろう?」
「うん、あ、あのね、前に閨の授業の時に習っただろう? せ、精通したら、じ、じじ、自慰するようになるって。僕はまだ精通してないけど、カイルは体も大きいし、もしかしたら精通してるんじゃないかって思って。もしそうなら、じっ、自慰するなら、これからは自分の部屋で寝た方がいいんじゃないかなって思ったんだ。それで、聞いてみたんだけど……」

 言いながら俺の顔はどんどん赤くなり、身体もなんだか縮こまってしまう。羞恥でカイルの顔を見ることができず、しまいには目をぎゅっと瞑って俯いてしまった。

 みしり、と俺の座っていたベッドの右側が揺れた。恐る恐る顔をそっちに向けると、思った通りカイルがすぐ横に移動してきていた。

「俺のこと、心配して聞いてくれたのか? ありがとな」
「いや、その……うん。でも、ごめんなさい、答え辛いことを聞いて」

 涙目になり、また俯いてしまった俺の頭を、カイルは優しくポンポンしてくれる。

「気にしなくていい。でも……そうか、レオは精通はまだだったんだな。様子を見る限り、そうだろうとは思ってたけど」
「カ、カイルは? もう精通した?」
「俺は一年くらい前にしたよ。けど、そうか、レオはまだなのか。それは……うーん」

 なんだか含みのあるカイルの物言いに、俺はちょっと不安になってしまう。

「え、な、なに? 僕なにか変かな?」
「ちょっと遅すぎるんじゃないかと思って」
「精通が? そ、そうかな……遅すぎると思う?」
「閨の授業してくれた先生も、十才過ぎたらいつなってもおかしくないって、そう言ってたよな」
「そ、そう言えば、そうだったかも」

 俺は前世で精通したのは十三才だったけど、多分それは普通くらいで、遅くも早くもなかったんじゃないかと思う。だから現世、まだ精通してないことを気にしたこともなかったんだ。

 でもそうか、前世と現世の人間の身体の成長具合が同じとは限らないのか。そのことにたった今気が付いた。

 なにせこの世界の成人は十五才なわけで、前世の成人年齢よりかなり早い。その分、身体の成熟も早いのかもしれない。その可能性は十分にある。

 実際、平民は早いと十五才になった途端に結婚するし、それは別段珍しいことではない。それを踏まえて考えると、精通する時期も、前世より早いと考える方が当たり前なのだ。むしろ、それが自然とも言える。

 確かに先生は言っていた。十才過ぎたらいつなってもって……あ、どうしよう。なんだか本気で不安になってきた。俺の体、もしかしてどこか変なのかな、大丈夫かな。

 自分の身体の成長の遅さ気付き、不安のあまり青褪めて俯いてしまった俺を、心配そうにカイルが覗き込んだ。

「大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫……」

 いや、多分大丈夫じゃない。俺、今死ぬほど不安。
 そんな俺の心境に気付いているであろうカイルが、少しなにかを考えた後、俺に質問してきた。

「レオ、レオは自慰はしてるのか?」

 驚いて俺は顔を上げた。

「え? あ、ぼ、僕、やったことない。っていうか、アレって精通前からするものなの?!」
「俺はしてたよ。で、無事に精通した。もしかすると、そうすることで促していたのかもしれない。レオもやってみたらどうだ?」
「え、で、でもぉ……」

 それをするにしても、カイルが自分の部屋で寝てくれないことには無理なワケなんですけど……。とか思っていた俺に、カイルがとんでもないことを言い出した。

「もしかして、やり方がよく分からないとか? だったら俺が手伝ってやる」
「えっ! いやいやいやいやいや、いいよっ、多分、自分でやれるから!」
「遠慮しなくていいよ。俺たち乳兄弟じゃないか」

 乳兄弟だから? それがカイルに自慰を手伝わせることの何の免罪符になるのか分からない。

 いや、絶対ならないよね! 俺の勝手な思い込みか? いやいやいや、そんなことないと思うけど。

 でも、それにしてはカイルのあの、まるでなんてことのないような、当然であるかのような物言いと態度はなんだ? 

 あれ? あれれれ?? 

 この世界ではもしかして、兄弟同士で精通を促すために自慰を手伝うことは普通なの?
 いや、まさか……えぇぇ?????

 な……なんだかよく分からなくなってきた。

 混乱気味の俺が呆然としている内に、なにをやるにも器用に動くカイルの手が、あっと言う間に俺の下半身を丸裸にしていた。

 うぎゃっ、い、いつの間に?!

「カ、カイル、やめて? 僕、自分でやってみるから、大丈夫だから!」
「いいから俺に任せろ」
「ち、ちょっとカイル……あっ」

 俺のペニスをカイルが握った。そこからぶわぁっと快感が溢れた。背筋がゾクゾクと痺れ、俺は体をビクビク震わせた。

「あ……やめっ、ん…あぁっ」
「触られて気持ちいいか? レオ、すごくかわいい声が出てる」

 やわやわと揉むように触られて、沸き上がる優しい快感が気持ちいい。けれど、少し物足りないと俺が思ったタイミングで、カイルの剣ダコのある大きな手が、俺のペニスを上下に素早く扱きだした。カイルの手の動きに合わせて、それまでとは違った強い快感が生まれてくる。

「んぁ……ん、ああっ」

 どうしよう、すごく気持ちいい。自分も腰を動かし、カイルの手にペニスを擦りつけたい衝動に駆られる。でも、そんな恥ずかしいことできるわけない。ああ、股間が……股間が気持ちいい……。

「あっ、ああっ、ダメだよ、カイル。もうやめ……あっ」
「なんでダメ? 気持ちいいだろ?」
「気持ち、からぁ……ダメな…あ、ああっ……はぁ……あぅンっ」

 触られて、擦られて、すごく気持ちが良くてたまらない。カイルの手が俺のペニスを扱くたび、どんどん気持ち良さが強くなる。体が快感でビクビク震え、なぜだか涙がぽろぽろと零れた。その涙をちゅっとカイルが吸い取ってくれる。

「カイル、カイルッ、僕、気持ちい……のに、イけなっ……ああ」
「まだダメか? それじゃ、もうちょっと強く……」
「ああああっ、だめっ! 強いのダメぇ……あアんっ!」


 俺の身体の発育具合は、まだ精通するに至ってないのだろう。だから、射精で快感を解放できず、気持ち良さがどんどん体の中に溜まってしまう。溜まりすぎた快感が痛いほどペニスを勃起させる。それなのに射精できなくて、苦しくてどうしたらいいか分からない。

 カイルから擦られているペニスは蕩けるほど気持ち良くて、なにかが出そうな気するのになにも出せない。もうどうしたらいいか分からずに、俺はボロボロと泣きながらカイルにしがみ付いた。

「カイル、助けてカイル……ううっ……苦し、い、あっ、ああっ、気持ちぃよお」
「はぁ、かわいいレオ……俺も、俺も一緒にいい?」

 カイルは寝衣の中から自分のペニスを取り出すと、俺のモノと一緒に両手で包み込んだ。そして、二本同時にリズムよく扱きだす。裏筋同士がこすれ合って堪らなく気持ちいい。

 カイルの勃起したペニスが熱い。次第ににニチャニチャといやらしい水音が聞こえ始めた。その滑りのおかげで、さっきまでより数倍も気持ち良さが大きくなった。もっともっとと求める気持ちが貪欲になっていく。

「あ……やぁっ、カイル……んんっ、あぁっ」
「気持ちいいな、レオ。こんなにビクビク体を震わせて……すごくかわいい」
「はぁっはぁっ、んんん……カイル……だ、だめっ、はっ、ああっ」
「俺のレオ、かわいい……はぁ、その感じすぎて辛そうな顔、たまらないな」

 気が付くと、俺はペニスを扱かれながらカイルにキスされていた。すぐにカイルの舌が口の中に入ってきて、俺の舌はねっとりと絡めとられてしまう。
 カイルの舌が気持ちいい。ずっとずっとキスしていたいと思ってしまう。

 ペニスを扱かれながら、透明な汁を零す鈴口を親指でくすぐられる。思考が停止して他のことは考えられず、ただひたすら快感を求めて、夢中で自分からもカイルの舌をくちゅくちゅと舐めまわした。そこから得られる快感に酔いしれる。



 結果として、俺はやはり精通には至れなかった。
 そして、その日以降、俺とカイルは週に何度かペニスを一緒に扱き合うようになった。俺が早く精通できるように、カイルが手伝ってくれるらしい。

 勿論、俺は申し訳ないからと断った。だけど「気にするな」とカイルの親切心に満ちた優しい笑顔を前にすると、それ以上強く断ることができず、結果として、二人で仲良く触りっこする日々が続くことになったワケなんだけど…………これっておかしくないの?! この世界では乳兄弟でこういうことをするのは、ごく普通のことなのか?!

 いや、そんなワケないか!

 きっとカイルは親切すぎるんだな。親切で優しいから、いい年して未だに精通してない俺をかわいそうに思うあまり、本当は嫌なのに自慰を手伝ってくれようとしているんだ!

 ああ、なんてことだ! 
 天使か? 
 カイルは天使の生まれ変わりなのか?!

 カイルが良い人すぎて俺は心配になってしまう。このままだといつか悪い人に騙されてしまうんじゃないだろうか。
 そんなのダメだ! 俺がなんとしてでも守ってあげないと!


 取り合えず、俺、早く精通してくれないかな。このままずっとカイルに自慰を手伝ってもらうのは、実に実に申し訳ない。っていうか、あまりにもいたたまれなくて俺が死にたくなっちゃうよ!


 ああ、もうホント、早くきてくれよ、俺の精通!!!



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