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最終話
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二人が同棲を始めたのは、大学への入学と同時だった。
朝目が覚めた時、同じベッドの上、すぐ隣で眠る石神の顔に見惚れてボーッとするその時間は、西島にとって、一日の中で最も至福の時と言える。
大学生になってからも、石神は高校生の頃以上に様々な才能を発揮し、注目を集め、どこにいても誰からもモテまくっていた。それでいて、変わらず西島を大切にし続けている。
いまだに西島は、石神ほどの男がどうして自分を好きでいてくれるのか理解できないでいた。尋ねてみても、いつも笑顔でこう言われるだけ。
「いつの間にか、って感じだな」
それを聞くたびに西島は不安になった。
いつの間にか好きになったのなら、いつの間にか嫌われることもあるかもしれないからだ。
その不安が西島に更なる努力を促した。結果、日を追うごとに西島は優秀になり続けることなる。
とはいえ西島にとっての最上級はあくまで石神である。自分とは比べ物にならにほど素晴らしい人がいるという認識が常にあるため、どれだけ自分が優秀になろうが女にモテようが、それで西島が傲慢になったり天狗になったりすることはなかった。
あくまでも謙虚に、ただただ石神に愛され続けたいがために、西島は努力を続けるのである。
そんな健気な西島のことが、当然ながら石神はかわいくて仕方がない。
「石神、好き。大好き、愛してる。お願いだから捨てないで」
既に滅多に見ないほど優秀な人間となった西島。そんな彼が、涙交じりに自分にそう懇願してくる姿は、石神をこれ以上なく満ち足りた気持ちにさせた。自分に捨てられたくないからと言い、そのために必死になって努力する姿を見せられるたびに、石神の自尊心は堪らなくくすぐられてしまう。
それでなくとも愛しく思っているのだ。
その相手が、自分をこれほど気持ち良く、満ち足りた心地にさせれくれるとなれば、もはやなにがあっても手放す気になどなれるはずもなかった。
だから石神は、いつも自分の気持ちを真っすぐに西島に伝える。
「好きだよ、西島。おまえを愛してる」
「うん、分かってる。でも、それはあくまでも今日の話だろ? 明日にはどうなってるか分からないよな。もしかすると、どこかの美人に一目惚れするかもしれない」
そう言って涙目になる西島を、石神は優しく抱き寄せてキスをした。西島はすぐにその瞳を官能に蕩けさせ、リビングのソファーに座る石神に、身を預けるようにして縋りつく。
「俺、嫌だよ。石神が他の人を好きになるなんて嫌だ。いっそのこと、どこかに閉じ込めちゃいたい。他の人を見せたくない。俺だけのものにしたい」
そんな可愛いことを言いながら、西島はいやらしく淫猥に石神の首筋に舌を這わせた。そうしながら、自分の股間を石神の足に擦りつける。
すっかり発情した西島の淫らな様子を見せつけられ、石神の性欲も煽られていく。
「いいよ、西島。俺を閉じ込めたきゃ、そうするといい」
「本当? 本当にいいのか?!」
「ただし、おまえが俺という人間を超えることができたらな。そうじゃないと、閉じ込めたところで逃げ出せてしまうだろう?」
はっとした顔を西島がする。
「確かにそうだ。よしっ、俺、頑張るよ! 必ず石神を超えてみせる。そして、どこかに閉じ込めて俺だけのものにするんだ!」
「期待してるからな、頑張れよ」
「うん!」
拳を握りしめてやる気を見せる西島を見て、石神は楽し気に笑う。
「けどまあ、そう簡単には追い越される気はないけどな」
西島にいつまでも追い続けてもらうため、自分を必死になって追いかけて来る可愛い西島を見続けるため、石神は更に先を進んでいる必要がある。決して追い越されるわけにはいかないのだ。
そのための努力なら、いくらでもできると石神は思うのだった。
勿論、西島は更に懸命になって、石神を追いかけ続けることになる。いつか彼を追い越すことで、自分だけのものにする権利を得るために。
近寄られては先に進み、また離されては近づこうと努力する。それは終わりなく永遠に続く、楽しい追いかけっこのようなものだった。
「なんだか俺たち、ただ愛し合っているだけで、気が付くと世界征服くらい簡単にできるくらいの凄い人間になれてそうだな」
石神が笑いながらそう言うと、西島も笑った。
「うん。でもその前に、絶対に石神を俺だけのものにしてみせるから」
「だったら競争するか。世界征服が先か、俺がおまえに軟禁されるのが先か」
「いいけど……うーん。なんだか真面目に考えてみると、世界征服の方が早い気がしてきたよ。困るなぁ、それは」
そんなかわいいことを、ションボリしながら言う西島を抱き寄せて、石神は優しく触れるだけのキスをした。
「俺は軟禁が先のほうが嬉しいけど?」
「いっ、石神~っ!!」
感極まった西島が、今度は自分の方から石神にキスをする。二人はそのまましばらくキスを堪能し合うと、もうベッドルームに移動する間も惜しいとばかりに、その場でソファーに倒れ込んだのだった。
世界征服と石神の軟禁、どちらが先なのかは神のみぞ知る。
end
朝目が覚めた時、同じベッドの上、すぐ隣で眠る石神の顔に見惚れてボーッとするその時間は、西島にとって、一日の中で最も至福の時と言える。
大学生になってからも、石神は高校生の頃以上に様々な才能を発揮し、注目を集め、どこにいても誰からもモテまくっていた。それでいて、変わらず西島を大切にし続けている。
いまだに西島は、石神ほどの男がどうして自分を好きでいてくれるのか理解できないでいた。尋ねてみても、いつも笑顔でこう言われるだけ。
「いつの間にか、って感じだな」
それを聞くたびに西島は不安になった。
いつの間にか好きになったのなら、いつの間にか嫌われることもあるかもしれないからだ。
その不安が西島に更なる努力を促した。結果、日を追うごとに西島は優秀になり続けることなる。
とはいえ西島にとっての最上級はあくまで石神である。自分とは比べ物にならにほど素晴らしい人がいるという認識が常にあるため、どれだけ自分が優秀になろうが女にモテようが、それで西島が傲慢になったり天狗になったりすることはなかった。
あくまでも謙虚に、ただただ石神に愛され続けたいがために、西島は努力を続けるのである。
そんな健気な西島のことが、当然ながら石神はかわいくて仕方がない。
「石神、好き。大好き、愛してる。お願いだから捨てないで」
既に滅多に見ないほど優秀な人間となった西島。そんな彼が、涙交じりに自分にそう懇願してくる姿は、石神をこれ以上なく満ち足りた気持ちにさせた。自分に捨てられたくないからと言い、そのために必死になって努力する姿を見せられるたびに、石神の自尊心は堪らなくくすぐられてしまう。
それでなくとも愛しく思っているのだ。
その相手が、自分をこれほど気持ち良く、満ち足りた心地にさせれくれるとなれば、もはやなにがあっても手放す気になどなれるはずもなかった。
だから石神は、いつも自分の気持ちを真っすぐに西島に伝える。
「好きだよ、西島。おまえを愛してる」
「うん、分かってる。でも、それはあくまでも今日の話だろ? 明日にはどうなってるか分からないよな。もしかすると、どこかの美人に一目惚れするかもしれない」
そう言って涙目になる西島を、石神は優しく抱き寄せてキスをした。西島はすぐにその瞳を官能に蕩けさせ、リビングのソファーに座る石神に、身を預けるようにして縋りつく。
「俺、嫌だよ。石神が他の人を好きになるなんて嫌だ。いっそのこと、どこかに閉じ込めちゃいたい。他の人を見せたくない。俺だけのものにしたい」
そんな可愛いことを言いながら、西島はいやらしく淫猥に石神の首筋に舌を這わせた。そうしながら、自分の股間を石神の足に擦りつける。
すっかり発情した西島の淫らな様子を見せつけられ、石神の性欲も煽られていく。
「いいよ、西島。俺を閉じ込めたきゃ、そうするといい」
「本当? 本当にいいのか?!」
「ただし、おまえが俺という人間を超えることができたらな。そうじゃないと、閉じ込めたところで逃げ出せてしまうだろう?」
はっとした顔を西島がする。
「確かにそうだ。よしっ、俺、頑張るよ! 必ず石神を超えてみせる。そして、どこかに閉じ込めて俺だけのものにするんだ!」
「期待してるからな、頑張れよ」
「うん!」
拳を握りしめてやる気を見せる西島を見て、石神は楽し気に笑う。
「けどまあ、そう簡単には追い越される気はないけどな」
西島にいつまでも追い続けてもらうため、自分を必死になって追いかけて来る可愛い西島を見続けるため、石神は更に先を進んでいる必要がある。決して追い越されるわけにはいかないのだ。
そのための努力なら、いくらでもできると石神は思うのだった。
勿論、西島は更に懸命になって、石神を追いかけ続けることになる。いつか彼を追い越すことで、自分だけのものにする権利を得るために。
近寄られては先に進み、また離されては近づこうと努力する。それは終わりなく永遠に続く、楽しい追いかけっこのようなものだった。
「なんだか俺たち、ただ愛し合っているだけで、気が付くと世界征服くらい簡単にできるくらいの凄い人間になれてそうだな」
石神が笑いながらそう言うと、西島も笑った。
「うん。でもその前に、絶対に石神を俺だけのものにしてみせるから」
「だったら競争するか。世界征服が先か、俺がおまえに軟禁されるのが先か」
「いいけど……うーん。なんだか真面目に考えてみると、世界征服の方が早い気がしてきたよ。困るなぁ、それは」
そんなかわいいことを、ションボリしながら言う西島を抱き寄せて、石神は優しく触れるだけのキスをした。
「俺は軟禁が先のほうが嬉しいけど?」
「いっ、石神~っ!!」
感極まった西島が、今度は自分の方から石神にキスをする。二人はそのまましばらくキスを堪能し合うと、もうベッドルームに移動する間も惜しいとばかりに、その場でソファーに倒れ込んだのだった。
世界征服と石神の軟禁、どちらが先なのかは神のみぞ知る。
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