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「へ?」
石神の言葉のあまりの異常さに脳処理が追いつかず、西島はついマヌケ声を上げた。きっと顔だってマヌケ面だったはずだ。
そんな西島に、真面目な顔をした石神が続けて言った。
「俺は本気だ。お前のことが好きだ」
「???!!!!!!!?」
これ以上無理というくらい大きく口を開けた西島が、目まで点して驚くその様子を見た石神が、とても楽し気にいたずらっぽく笑った。
それに気付いた西島が、大きく安堵の息を吐く。
「な、なんだよもう、からかっただけかぁ。あー、ビックリした」
言いながら西島はテレ隠しに頭をかいた。
冷静になって考えてみれば、石神が自分なんかを好きになるはずがないのだ。どんな女だって望みのままの石神だ。そんなやつが男を好きになるワケがない。しかも、こんな平凡極まりない自分を。
一瞬でも本気にしてしまったことが恥ずかしく、西島はヘラリと石神に笑いかけた。
「あんな嘘付くなんてー、ったく、石神も人が悪いなぁ。俺、ちょっと本気にしちゃったよ」
「本気にしろよ。さっきも言ったけど、俺は本気だ。本気でおまえのことが好きだから」
やだ、イケメーン! と、女の子なら赤面して喜ぶところだろうが、生憎西島は男だし、恋愛対象は女性である。石神の言葉に赤面することも喜ぶこともなく、ただただ盛大に驚いた。
その隙をついて、石神が片腕を西島の腰に回して、その細めの身体をぐいっと自分に引き寄せた。
いきなり近距離に迫った石神の顔に驚いた西島が、そこから逃げだそうとジタバタもがく。しかし、石神の筋肉質な身体は少しも揺るがない。
「な?! ち、ちょっと石神、冗談だろ?!」
「んなワケあるか。その証拠に、今からおまえにキスするつもりだし」
「えええ?!」
それこそ冗談じゃないと西島は慌てる。
これまで誰とも付き合ったことがない西島は、当然ながらファーストキスもまだだった。ということは、もしここで石神とキスすれば、それが一生の思い出として西島の中に残ることになってしまう。
「イヤだ! ファーストキスは女の子としたい!!」
「ファーストキス、まだだったのか? はは、ラッキー♪」
嬉しそうに顔を近づけてくる石神に、顔を青褪めさせた西島が逃げようと暴れるが、やはり石神の体はビクともしない。
自分のひ弱さを情けなく思いながらも、石神の意識をキスから逸らそうとして、西島は必死に話しかける。
「そもそも、なんで俺のことなんて好きなワケ? 石神モテるよね? すごいイケメンだし、女の子だって選り取り見取りじゃん!」
「そうか、西島は俺のこと、イケメンだって思ってくれてるんだな。それは嬉しいな」
「え、あっ、いや違っ……いや、ちょっと待って! だめっ、無理っ、うわーっ!」
「おい、暴れるなよ」
「理由! 俺を好きな理由を教えて!!」
石神は自分の腕の中で暴れながら叫ぶ西島を面倒臭そうに一瞥すると、一瞬の逡巡の後にこう答えた。
「おまえが朝早く登校して、教室の鉢植えに水をやってるところを偶然見かけた。その後も何度か水やりしている姿を見てる内に、すごく優しいやつだなって思った。気が付くと好きになってた」
「い、石神……」
それを聞いた西島は、しばらく唖然とした顔で石神を見つめていた。が、すぐにこう叫んだ。
「俺、水やりなんてしたことないからっ! ってか、この教室に鉢植えなんて一つもないよね? 勝手に妙なエピソード捏造するなよっっ!!」
石神の言葉のあまりの異常さに脳処理が追いつかず、西島はついマヌケ声を上げた。きっと顔だってマヌケ面だったはずだ。
そんな西島に、真面目な顔をした石神が続けて言った。
「俺は本気だ。お前のことが好きだ」
「???!!!!!!!?」
これ以上無理というくらい大きく口を開けた西島が、目まで点して驚くその様子を見た石神が、とても楽し気にいたずらっぽく笑った。
それに気付いた西島が、大きく安堵の息を吐く。
「な、なんだよもう、からかっただけかぁ。あー、ビックリした」
言いながら西島はテレ隠しに頭をかいた。
冷静になって考えてみれば、石神が自分なんかを好きになるはずがないのだ。どんな女だって望みのままの石神だ。そんなやつが男を好きになるワケがない。しかも、こんな平凡極まりない自分を。
一瞬でも本気にしてしまったことが恥ずかしく、西島はヘラリと石神に笑いかけた。
「あんな嘘付くなんてー、ったく、石神も人が悪いなぁ。俺、ちょっと本気にしちゃったよ」
「本気にしろよ。さっきも言ったけど、俺は本気だ。本気でおまえのことが好きだから」
やだ、イケメーン! と、女の子なら赤面して喜ぶところだろうが、生憎西島は男だし、恋愛対象は女性である。石神の言葉に赤面することも喜ぶこともなく、ただただ盛大に驚いた。
その隙をついて、石神が片腕を西島の腰に回して、その細めの身体をぐいっと自分に引き寄せた。
いきなり近距離に迫った石神の顔に驚いた西島が、そこから逃げだそうとジタバタもがく。しかし、石神の筋肉質な身体は少しも揺るがない。
「な?! ち、ちょっと石神、冗談だろ?!」
「んなワケあるか。その証拠に、今からおまえにキスするつもりだし」
「えええ?!」
それこそ冗談じゃないと西島は慌てる。
これまで誰とも付き合ったことがない西島は、当然ながらファーストキスもまだだった。ということは、もしここで石神とキスすれば、それが一生の思い出として西島の中に残ることになってしまう。
「イヤだ! ファーストキスは女の子としたい!!」
「ファーストキス、まだだったのか? はは、ラッキー♪」
嬉しそうに顔を近づけてくる石神に、顔を青褪めさせた西島が逃げようと暴れるが、やはり石神の体はビクともしない。
自分のひ弱さを情けなく思いながらも、石神の意識をキスから逸らそうとして、西島は必死に話しかける。
「そもそも、なんで俺のことなんて好きなワケ? 石神モテるよね? すごいイケメンだし、女の子だって選り取り見取りじゃん!」
「そうか、西島は俺のこと、イケメンだって思ってくれてるんだな。それは嬉しいな」
「え、あっ、いや違っ……いや、ちょっと待って! だめっ、無理っ、うわーっ!」
「おい、暴れるなよ」
「理由! 俺を好きな理由を教えて!!」
石神は自分の腕の中で暴れながら叫ぶ西島を面倒臭そうに一瞥すると、一瞬の逡巡の後にこう答えた。
「おまえが朝早く登校して、教室の鉢植えに水をやってるところを偶然見かけた。その後も何度か水やりしている姿を見てる内に、すごく優しいやつだなって思った。気が付くと好きになってた」
「い、石神……」
それを聞いた西島は、しばらく唖然とした顔で石神を見つめていた。が、すぐにこう叫んだ。
「俺、水やりなんてしたことないからっ! ってか、この教室に鉢植えなんて一つもないよね? 勝手に妙なエピソード捏造するなよっっ!!」
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