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81.ロクの狂気−1
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サワサワと、優しく髪を撫でられている。
ゆっくりとした動きでくすぐるように、悪戯な風のように、からかうように指が動く。
(なんだよ。可愛いことをしやがって。そんなに俺が好きかよ)
俺は胸が柔らかくて甘いものでいっぱいになって、自然に唇が笑みを形作る。
「チヤ? 眠れないのか?」
ロクが優しい声でそう囁き、ついでに耳の後ろやうなじに鼻を押し付けてくるので、くすぐったくて今度は声を出して笑う。
「ロクが邪魔するんだろ」
「邪魔などしていない。チヤが可愛いのがいけない」
ロクってば、大真面目に何を言ってんだよ。
俺はちょっと呆れかけ、それから次の言葉を聞いてしんみりとしてしまった。
「それに目を離したら、消えてしまいそうでな」
「ロク……」
そうだよね。何日も姿を消していたんだ、戻ってきたからって直ぐに安心できる筈がない。
俺だって、神様と対価を払う約束をしているとはいえ、全く不安がない訳じゃない。
神は気まぐれで、人とはかけ離れた倫理観やルールで動いているからな。
「でも、ロクにあんなことをされても戻らなかっただろ」
「あんなこととは?」
「だからっ、奥にグリグリって……」
俺はロクに散々抱かれているのにそれを口にするのは恥ずかしかった。
なんか、やっぱりナカで出されるって特別なことだよ。うん。
「すっかり意識がないと思っていたのに、覚えているのか?」
「……うん」
何故だかロクに期待されるような甘ったるい目で見られている。
なんだよ、何を言わせようってんだよ。
「ではあれも覚えているか?」
「あれ?」
「熱いと首を振っただろう?」
「え?」
俺はあの時のことを思い返して、身体の奥を濡らされた時の感触を生々しく思い出した。
ロクのは熱くて硬くてドクドクと脈打っていたし、誰にも触れられない身体の奥まで容赦なく押し上げて擦ってくるので怖くなってしまった。
だってあんなところに熱いのを掛けられて、溶けてしまいそうで……。
「私は『溶けろ』と言っただろう?」
ロクに楽しそうに囁かれて俺は熱くなった頬を顎を引いて隠し、誤魔化すように言った。
「そ、そういえば、光を感じたんだよな」
「光? 確かにそんなことを言っていたが――どういうものか思い出せるか?」
「えーっと……」
あの時は泣いて嫌がってもロクが奥にグリグリするから怖くなっちゃって、追い詰められた先に光を感じた。
「気絶すんのかなって思ったんだけど……実際に意識は失くしたんだけど、でも違うんだ。なんかわかりそうな気がしたっていうか、ロクから何か貰ったような感じで……」
「む、子が出来たのではないか?」
「ばっ、んなの、出来る訳がないだろう!?」
神同士ならばともかく、俺たち程度じゃ新しい命なんて創り出せない。
或いは自分の分身だけならそのうちに作れるかもしれないけどね。
「ならば神格が上がったのではないか? チヤは私を甘いと言っただろう?」
素足にロクの毛に覆われた脚が絡んできてゾクリと背中が痺れた。
あれだけヤッたのに脚が絡んだだけでその気になる自分がチョロ過ぎて恥ずかしい。
「確かに、俺にとってロクは甘くて美味しい存在だけど……それで神格は上がらないんじゃないかな」
ロクが俺を食べて元気になるのは、俺が神の加護を受けてこの世界では甘味と認識されているからだ。
(あれ? でも、俺という甘味の対価がロクという甘味なら、同じ効果があってもおかしくないのか? いや、それはないな。ロクとは中出しをしないってだけで行為は最後までしてたのに、それでも俺は神格が上がったり強くなってないんだから)
そう結論づけてフリフリと首を横に振っていたら、ロクが別の問題も持ち出した。
「だが鱗が大きくなり、光った。それにすっかりチヤの身体の一部になっていただろう」
「そういえばそうだったな……」
鱗が光ったことが無関係だとは思えない。
しかもめちゃくちゃ気持ちよかったんだ。
「向こうで神に竜神にしてやると言われたんだ。俺は断ったんだけど、もしかしたら諦めずに何か仕掛けてきたって可能性はある」
それか俺は元々竜になる素質があったから、異世界転移が何らかの刺激になって竜化が進んだのかもしれない。
「でも竜になるには千年かかる筈なんだけどなぁ~」
俺は竜になりかけてはいるけれど、千年くらい修行しなくちゃ成体になれないと言われた。
千年も修行するくらいなら、あと五十年くらいの人生で良いから遊び暮らすよね。
「お前が千年かけて竜になるなら、私はお前の隣で天を駆け雲を登ろう」
「いやあんたはどこを目指してんだよ」
俺はロクの言葉に呆れたけど、でもまぁロクが隣にいるなら別になんだっていいかと思った。
竜になろうがロクと一緒ならきっと楽しいだろう。
ゆっくりとした動きでくすぐるように、悪戯な風のように、からかうように指が動く。
(なんだよ。可愛いことをしやがって。そんなに俺が好きかよ)
俺は胸が柔らかくて甘いものでいっぱいになって、自然に唇が笑みを形作る。
「チヤ? 眠れないのか?」
ロクが優しい声でそう囁き、ついでに耳の後ろやうなじに鼻を押し付けてくるので、くすぐったくて今度は声を出して笑う。
「ロクが邪魔するんだろ」
「邪魔などしていない。チヤが可愛いのがいけない」
ロクってば、大真面目に何を言ってんだよ。
俺はちょっと呆れかけ、それから次の言葉を聞いてしんみりとしてしまった。
「それに目を離したら、消えてしまいそうでな」
「ロク……」
そうだよね。何日も姿を消していたんだ、戻ってきたからって直ぐに安心できる筈がない。
俺だって、神様と対価を払う約束をしているとはいえ、全く不安がない訳じゃない。
神は気まぐれで、人とはかけ離れた倫理観やルールで動いているからな。
「でも、ロクにあんなことをされても戻らなかっただろ」
「あんなこととは?」
「だからっ、奥にグリグリって……」
俺はロクに散々抱かれているのにそれを口にするのは恥ずかしかった。
なんか、やっぱりナカで出されるって特別なことだよ。うん。
「すっかり意識がないと思っていたのに、覚えているのか?」
「……うん」
何故だかロクに期待されるような甘ったるい目で見られている。
なんだよ、何を言わせようってんだよ。
「ではあれも覚えているか?」
「あれ?」
「熱いと首を振っただろう?」
「え?」
俺はあの時のことを思い返して、身体の奥を濡らされた時の感触を生々しく思い出した。
ロクのは熱くて硬くてドクドクと脈打っていたし、誰にも触れられない身体の奥まで容赦なく押し上げて擦ってくるので怖くなってしまった。
だってあんなところに熱いのを掛けられて、溶けてしまいそうで……。
「私は『溶けろ』と言っただろう?」
ロクに楽しそうに囁かれて俺は熱くなった頬を顎を引いて隠し、誤魔化すように言った。
「そ、そういえば、光を感じたんだよな」
「光? 確かにそんなことを言っていたが――どういうものか思い出せるか?」
「えーっと……」
あの時は泣いて嫌がってもロクが奥にグリグリするから怖くなっちゃって、追い詰められた先に光を感じた。
「気絶すんのかなって思ったんだけど……実際に意識は失くしたんだけど、でも違うんだ。なんかわかりそうな気がしたっていうか、ロクから何か貰ったような感じで……」
「む、子が出来たのではないか?」
「ばっ、んなの、出来る訳がないだろう!?」
神同士ならばともかく、俺たち程度じゃ新しい命なんて創り出せない。
或いは自分の分身だけならそのうちに作れるかもしれないけどね。
「ならば神格が上がったのではないか? チヤは私を甘いと言っただろう?」
素足にロクの毛に覆われた脚が絡んできてゾクリと背中が痺れた。
あれだけヤッたのに脚が絡んだだけでその気になる自分がチョロ過ぎて恥ずかしい。
「確かに、俺にとってロクは甘くて美味しい存在だけど……それで神格は上がらないんじゃないかな」
ロクが俺を食べて元気になるのは、俺が神の加護を受けてこの世界では甘味と認識されているからだ。
(あれ? でも、俺という甘味の対価がロクという甘味なら、同じ効果があってもおかしくないのか? いや、それはないな。ロクとは中出しをしないってだけで行為は最後までしてたのに、それでも俺は神格が上がったり強くなってないんだから)
そう結論づけてフリフリと首を横に振っていたら、ロクが別の問題も持ち出した。
「だが鱗が大きくなり、光った。それにすっかりチヤの身体の一部になっていただろう」
「そういえばそうだったな……」
鱗が光ったことが無関係だとは思えない。
しかもめちゃくちゃ気持ちよかったんだ。
「向こうで神に竜神にしてやると言われたんだ。俺は断ったんだけど、もしかしたら諦めずに何か仕掛けてきたって可能性はある」
それか俺は元々竜になる素質があったから、異世界転移が何らかの刺激になって竜化が進んだのかもしれない。
「でも竜になるには千年かかる筈なんだけどなぁ~」
俺は竜になりかけてはいるけれど、千年くらい修行しなくちゃ成体になれないと言われた。
千年も修行するくらいなら、あと五十年くらいの人生で良いから遊び暮らすよね。
「お前が千年かけて竜になるなら、私はお前の隣で天を駆け雲を登ろう」
「いやあんたはどこを目指してんだよ」
俺はロクの言葉に呆れたけど、でもまぁロクが隣にいるなら別になんだっていいかと思った。
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