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番外編⑮百年ぶりに喧騒に包まれた日
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街の中心地から少し離れた場所に、古い石造りのお屋敷があります。
昔はフェアリー・ストーンと呼ばれていたのですが、今ではその名前も忘れられて久しいです。
私は由緒あるお屋敷だというのに、独り者の冒険者に買われてろくな手入れもされず、訪ねる人もなく、このまま寂しく朽ちていくのだと思っておりました。
ところがある日、冒険者が一人の青年を連れてきました。
どうやら冒険者はその青年に恋をしているらしく、まるで盛りの付いた犬のようにまとわり付いては圧し掛かり、とうとう子まで産まれました。
産まれた子は三つ子でした。おまけに人ではなく九尾の魔物で、それはそれは姦しく静かだった家はあっという間に騒々しくなりました。
(まあ、大変そうだわ)
私がハラハラと見守っていたら、怖い顔をした男と優しげな女性がやって来て一緒に住み始めました。
(ああ、良かった。男は日曜大工も出来てなかなか働き者だし、女性はいつもニコニコと笑ってあのヤンチャな子供たちの悪戯にもめげないわ。あらあら、ユートまで甘えてる。困ったお母さんね)
そう微笑ましく見守っていたら、冒険者とユートの友人たちが次々と訪ねてきました。
「おめでとう! 名前は何にしたんだ?」
「イチ、キヨ、クロだ」
「は? それはまた、珍しい名前だな」
戸惑った顔をする男にユートが訳を説明します。
「リッドが名前を考えてくれてたんだけど、こいつらを見ていたら思い浮かんだ名前があったんで呼んでみたんだ。市松、祐清、九郎……まぁ、俺の世界の古風な名前だ。それがさ、名付けにも意味があったみたいで呼んだらこいつらが光ってさ。多分、魔物の真名って奴なんだろうな」
「俺にそれを教えちまっていいのか?」
「ルスカなら構わねぇよ。大体、異世界の名前なんて正しく発音できっこないしな」
「成る程」
ルスカと呼ばれた男が感心して子供たちを眺めます。
ユートに子供たちを膝の上に乗せられて、ちょっと慌てながらも嬉しそうに撫でていました。
次にやって来た男は要注意人物です。
小さな耳と尻尾を生やした子供たちを見るなり訳のわからぬ歓声をあげ、メロメロとその場に崩れ落ちたのです。
「イーサン、そうなるってわかってたけど、気持ち悪ぃよ……」
げんなりとしたユートの言葉を無視して、イーサンは子供たちの服を作ると息巻いています。
「あ、それなら俺の世界にある着ぐるみとか可愛いかも。フードに耳がついてて、前はファスナーで……」
ユートが絵を描いて詳しく説明し始めたら、イーサンは物凄い勢いで食い付きました。
そして目を血走らせて家から出ていき、暫くたってから山ほどの衣服を抱えて来ました。
茶色いモフモフッとした熊の着ぐるみに黒い着ぐるみ、長い耳の付いた真っ白い兎やまん丸く角の巻いた羊の着ぐるみ。リザードマンを模したものまでありましたが、赤子が身に付けるとどれも可愛らしく本当に似合っていました。
「かっ、可愛いっ! くはっ!」
何故か吐血をしながらイーサンが胸を押さえています。
「お前、芸が細かいな……。まあ、思った通りめちゃカワだわ。おまけにゴールデンシープとか魔物の素材だからか子供たちも嫌がらずに着てくれるし、ほんと助かったよ」
「そう凝った作りじゃないし、小さいし、意外と簡単だったぞ。着替えさせるのも簡単だし、売りに出したら売れるんじゃないか?」
「好きにすればぁ? 俺は作れないし、イーサンがその気ならやればいいじゃん」
「バッカ、工房にデザインと指示書を持ち込めば量産出来るんだ、お前がやれよ」
「やだよ、面倒臭い」
「儲かるぞ?」
「だったらカイト先輩に話を持ち込めよ。先輩はそういうの得意だぜ」
「勇者か……。旦那が怖いんだよな」
「ヘルムートはいい奴じゃん」
「お前は食い物をくれる奴はみんないい奴なんだろうが」
「いいや、ヘルムートは凄いいい奴だ」
「ああ、そうかよ。つまりパン作りの腕が良いんだな?」
「馬鹿にすんな! パイもキッシュも旨いぜ」
ペロリと唇を舐めたユートを見てイーサンが頬を赤くしたので、後ろから冒険者がユートを腕の中に引き入れました。
「ユウを見るな。減る」
「減らねぇよ! ったく……先輩なら後で来るぜ。待ってろよ」
「じゃあ、その間に微調整でもしてるか」
「微調整? サイズはぴったりだろ」
「フッ。ショルダーポシェットを付けたら可愛いだろう?」
「お前、天才かよ!」
生産職二人は何やら作り始めました。
私は人間ならばやれやれ、と溜め息を吐いたところです。
そうこうしているうちに勇者と山賊のようなパン職人が良い匂いを撒き散らしながら訪ねてきました。
「おめでとう。まさかお前が子供を産むとは……相変わらず、常識はずれな奴だ」
勇者がユートに沢山のパイを渡しながら、少々皮肉気な口調でそう言いましたが、祝福していることは伝わってきます。
「先輩も産む?」
「ユートッ!」
「九尾化以外にも、多分、方法はあるよ?」
「……それなら、もう……」
「ん?」
真っ赤になった勇者を見てユートが首を傾げ、ニコニコと笑っているパン職人の胸元から何かが飛び出してきました。
「あっ! カゲボウシ! ってことは、丸薬を……」
「想像するなっ!」
勇者が赤い顔をパン職人の背中に隠しました。
でもカゲボウシが周りを飛んでいるのでユートはニヤニヤ笑いを消しません。
「なんだよ、早く教えてくれたら電話したのに~」
「名前はハルカゲだ。仲良くしてくれ」
パン職人の頭にカゲボウシが止まったのを見て、子供たちが捕まえようとしてパン職人にわらわらと登り始めました。
その様子はまるで岩をよじ登るようでした。
転がり落ちてくる子供たちを、パン職人が両手で受け止めるのが微笑ましかったです。
「ん? なんかくるぞ」
不意にユートがそう言うと、家の中にゴウッと風が吹き、小さな犬がキャンキャンと吠えました。
「信じられん! 九尾を三匹も産むとは!」
「なんだ、泉の妖精か」
「わしは空駆ける風の悪魔じゃっ!」
「はいはい、それで、愛は見つかったのか?」
「……金は貯まった」
「うわぁ、侘しいね」
「うるさいっ! それよりも悪魔の契約は必要か?」
「んん~? もしかして、祝福を与えにきた?」
「何故、そうなるっ! 悪魔の契約じゃぞっ!」
「ははっ、だって困ったことは無いかって聞きにきたんだろう? 俺が心配になったんだろう?」
「……違う。勘違いするな」
「はいはい、困ったことはないよ。今はね。まぁ、定期的に確認しに来いよ」
「何故、わしがっ!」
「お前が愛を見つけたかどうか、気になるんだよ」
「……ふん」
悪魔は悔しそうに口をつぐむと消えてしまいました。
口八丁で悪魔を追い払うとは、流石はユートです。
「ユートさんはお友達がたくさんいるのねぇ」
優しそうな女性――ソフィーがのんびりとそう言いました。
「ルスカは俺の友達だ」
悔しかったのか冒険者がそんな事を言います。
それを見てユートは慈愛に満ちた笑みを浮かべて言いました。
「俺はさ、恵まれてんだよ。異世界に来て、みんなのお陰で毎日がすっごく楽しい。もう死んでいるみたいに生きなくていいんだ」
「ユウ……お前が幸せになる為なら俺はなんでもする。さあ、言ってくれ」
「ん、優しく……触って?」
そう言って軽く頤を上げたユートに冒険者が身を寄せ、人前で不埒な真似をしようとしたので思い切り床を軋ませました。
「うわっ! 床が傷んでるのか!? なんか最近、ギシギシ言い過ぎじゃね?」
「まあ、しっかりした造りではあっても古い屋敷だからな。改築するか?」
正直なところ、彼らはこの家など取り壊してもっと立派で新しいお屋敷を建てることも出来ます。
そうは見えませんが、二人は有り余る富を持っているのです。
私がしおしおと死刑判決でも待つつもりでおりましたら、ユートがきっぱりと首を横に振りました。
「修繕ならともかく、改築はしねぇよ。俺はこの家の柱の傷にまで愛着があるしさ。それに――家の方もどうやら俺らが好きみたいだしな」
「好き? それはどういう――」
「それより、ギルマスたちの家を隣に建てようぜ」
「ちょ、なにを言って――」
ユートの発言に慌てるギルドマスターを他所に、ソフィーはポンと手を叩いて喜びました。
「まあ、素敵! キヨちゃんたちにいつでも会えるわね!」
「大急ぎで建てて貰いますから、ソフィーさんの希望を出して下さいね」
「ええ、まずはクロちゃんたちが安心してコロコロすることの出来る、広いお部屋が必要ね。それから水浴びの出来る広いお風呂も、お勉強の部屋も必要だわ」
「ソフィーさん、ギルマスの執務室くらいは考えてあげましょうよ」
「あら、仕事を家庭に持ち込むのは厳禁よ。作るとしたら趣味の部屋ね」
「ソフィーさん、かっけー!」
盛り上がるソフィーとユートを呆然と見るギルドマスターの肩を、冒険者ががっしりと押さえました。
「これからも頼む。おじいちゃん」
「お、俺はまだ四十代だ~っ!」
発狂したように叫ぶギルドマスターの足元に、三つ子のうち黒っぽい毛の赤子が寄り掛かるように座りました。
「ぷゆ?」
「ああ~、クロたんは可愛いな~。よしよし、おじちゃんと遊ぼうな~」
どうやらこの家から人が減ることはなさそうです。
そして私も、家の精霊としての仕事を全うできそうです。
(どうかこの家で家族が愛と健康を育み、末永く幸せに暮らしますように)
私の百年ぶりの願いがやっと叶うかもしれません。
どうか彼らに、幸いがありますように。
昔はフェアリー・ストーンと呼ばれていたのですが、今ではその名前も忘れられて久しいです。
私は由緒あるお屋敷だというのに、独り者の冒険者に買われてろくな手入れもされず、訪ねる人もなく、このまま寂しく朽ちていくのだと思っておりました。
ところがある日、冒険者が一人の青年を連れてきました。
どうやら冒険者はその青年に恋をしているらしく、まるで盛りの付いた犬のようにまとわり付いては圧し掛かり、とうとう子まで産まれました。
産まれた子は三つ子でした。おまけに人ではなく九尾の魔物で、それはそれは姦しく静かだった家はあっという間に騒々しくなりました。
(まあ、大変そうだわ)
私がハラハラと見守っていたら、怖い顔をした男と優しげな女性がやって来て一緒に住み始めました。
(ああ、良かった。男は日曜大工も出来てなかなか働き者だし、女性はいつもニコニコと笑ってあのヤンチャな子供たちの悪戯にもめげないわ。あらあら、ユートまで甘えてる。困ったお母さんね)
そう微笑ましく見守っていたら、冒険者とユートの友人たちが次々と訪ねてきました。
「おめでとう! 名前は何にしたんだ?」
「イチ、キヨ、クロだ」
「は? それはまた、珍しい名前だな」
戸惑った顔をする男にユートが訳を説明します。
「リッドが名前を考えてくれてたんだけど、こいつらを見ていたら思い浮かんだ名前があったんで呼んでみたんだ。市松、祐清、九郎……まぁ、俺の世界の古風な名前だ。それがさ、名付けにも意味があったみたいで呼んだらこいつらが光ってさ。多分、魔物の真名って奴なんだろうな」
「俺にそれを教えちまっていいのか?」
「ルスカなら構わねぇよ。大体、異世界の名前なんて正しく発音できっこないしな」
「成る程」
ルスカと呼ばれた男が感心して子供たちを眺めます。
ユートに子供たちを膝の上に乗せられて、ちょっと慌てながらも嬉しそうに撫でていました。
次にやって来た男は要注意人物です。
小さな耳と尻尾を生やした子供たちを見るなり訳のわからぬ歓声をあげ、メロメロとその場に崩れ落ちたのです。
「イーサン、そうなるってわかってたけど、気持ち悪ぃよ……」
げんなりとしたユートの言葉を無視して、イーサンは子供たちの服を作ると息巻いています。
「あ、それなら俺の世界にある着ぐるみとか可愛いかも。フードに耳がついてて、前はファスナーで……」
ユートが絵を描いて詳しく説明し始めたら、イーサンは物凄い勢いで食い付きました。
そして目を血走らせて家から出ていき、暫くたってから山ほどの衣服を抱えて来ました。
茶色いモフモフッとした熊の着ぐるみに黒い着ぐるみ、長い耳の付いた真っ白い兎やまん丸く角の巻いた羊の着ぐるみ。リザードマンを模したものまでありましたが、赤子が身に付けるとどれも可愛らしく本当に似合っていました。
「かっ、可愛いっ! くはっ!」
何故か吐血をしながらイーサンが胸を押さえています。
「お前、芸が細かいな……。まあ、思った通りめちゃカワだわ。おまけにゴールデンシープとか魔物の素材だからか子供たちも嫌がらずに着てくれるし、ほんと助かったよ」
「そう凝った作りじゃないし、小さいし、意外と簡単だったぞ。着替えさせるのも簡単だし、売りに出したら売れるんじゃないか?」
「好きにすればぁ? 俺は作れないし、イーサンがその気ならやればいいじゃん」
「バッカ、工房にデザインと指示書を持ち込めば量産出来るんだ、お前がやれよ」
「やだよ、面倒臭い」
「儲かるぞ?」
「だったらカイト先輩に話を持ち込めよ。先輩はそういうの得意だぜ」
「勇者か……。旦那が怖いんだよな」
「ヘルムートはいい奴じゃん」
「お前は食い物をくれる奴はみんないい奴なんだろうが」
「いいや、ヘルムートは凄いいい奴だ」
「ああ、そうかよ。つまりパン作りの腕が良いんだな?」
「馬鹿にすんな! パイもキッシュも旨いぜ」
ペロリと唇を舐めたユートを見てイーサンが頬を赤くしたので、後ろから冒険者がユートを腕の中に引き入れました。
「ユウを見るな。減る」
「減らねぇよ! ったく……先輩なら後で来るぜ。待ってろよ」
「じゃあ、その間に微調整でもしてるか」
「微調整? サイズはぴったりだろ」
「フッ。ショルダーポシェットを付けたら可愛いだろう?」
「お前、天才かよ!」
生産職二人は何やら作り始めました。
私は人間ならばやれやれ、と溜め息を吐いたところです。
そうこうしているうちに勇者と山賊のようなパン職人が良い匂いを撒き散らしながら訪ねてきました。
「おめでとう。まさかお前が子供を産むとは……相変わらず、常識はずれな奴だ」
勇者がユートに沢山のパイを渡しながら、少々皮肉気な口調でそう言いましたが、祝福していることは伝わってきます。
「先輩も産む?」
「ユートッ!」
「九尾化以外にも、多分、方法はあるよ?」
「……それなら、もう……」
「ん?」
真っ赤になった勇者を見てユートが首を傾げ、ニコニコと笑っているパン職人の胸元から何かが飛び出してきました。
「あっ! カゲボウシ! ってことは、丸薬を……」
「想像するなっ!」
勇者が赤い顔をパン職人の背中に隠しました。
でもカゲボウシが周りを飛んでいるのでユートはニヤニヤ笑いを消しません。
「なんだよ、早く教えてくれたら電話したのに~」
「名前はハルカゲだ。仲良くしてくれ」
パン職人の頭にカゲボウシが止まったのを見て、子供たちが捕まえようとしてパン職人にわらわらと登り始めました。
その様子はまるで岩をよじ登るようでした。
転がり落ちてくる子供たちを、パン職人が両手で受け止めるのが微笑ましかったです。
「ん? なんかくるぞ」
不意にユートがそう言うと、家の中にゴウッと風が吹き、小さな犬がキャンキャンと吠えました。
「信じられん! 九尾を三匹も産むとは!」
「なんだ、泉の妖精か」
「わしは空駆ける風の悪魔じゃっ!」
「はいはい、それで、愛は見つかったのか?」
「……金は貯まった」
「うわぁ、侘しいね」
「うるさいっ! それよりも悪魔の契約は必要か?」
「んん~? もしかして、祝福を与えにきた?」
「何故、そうなるっ! 悪魔の契約じゃぞっ!」
「ははっ、だって困ったことは無いかって聞きにきたんだろう? 俺が心配になったんだろう?」
「……違う。勘違いするな」
「はいはい、困ったことはないよ。今はね。まぁ、定期的に確認しに来いよ」
「何故、わしがっ!」
「お前が愛を見つけたかどうか、気になるんだよ」
「……ふん」
悪魔は悔しそうに口をつぐむと消えてしまいました。
口八丁で悪魔を追い払うとは、流石はユートです。
「ユートさんはお友達がたくさんいるのねぇ」
優しそうな女性――ソフィーがのんびりとそう言いました。
「ルスカは俺の友達だ」
悔しかったのか冒険者がそんな事を言います。
それを見てユートは慈愛に満ちた笑みを浮かべて言いました。
「俺はさ、恵まれてんだよ。異世界に来て、みんなのお陰で毎日がすっごく楽しい。もう死んでいるみたいに生きなくていいんだ」
「ユウ……お前が幸せになる為なら俺はなんでもする。さあ、言ってくれ」
「ん、優しく……触って?」
そう言って軽く頤を上げたユートに冒険者が身を寄せ、人前で不埒な真似をしようとしたので思い切り床を軋ませました。
「うわっ! 床が傷んでるのか!? なんか最近、ギシギシ言い過ぎじゃね?」
「まあ、しっかりした造りではあっても古い屋敷だからな。改築するか?」
正直なところ、彼らはこの家など取り壊してもっと立派で新しいお屋敷を建てることも出来ます。
そうは見えませんが、二人は有り余る富を持っているのです。
私がしおしおと死刑判決でも待つつもりでおりましたら、ユートがきっぱりと首を横に振りました。
「修繕ならともかく、改築はしねぇよ。俺はこの家の柱の傷にまで愛着があるしさ。それに――家の方もどうやら俺らが好きみたいだしな」
「好き? それはどういう――」
「それより、ギルマスたちの家を隣に建てようぜ」
「ちょ、なにを言って――」
ユートの発言に慌てるギルドマスターを他所に、ソフィーはポンと手を叩いて喜びました。
「まあ、素敵! キヨちゃんたちにいつでも会えるわね!」
「大急ぎで建てて貰いますから、ソフィーさんの希望を出して下さいね」
「ええ、まずはクロちゃんたちが安心してコロコロすることの出来る、広いお部屋が必要ね。それから水浴びの出来る広いお風呂も、お勉強の部屋も必要だわ」
「ソフィーさん、ギルマスの執務室くらいは考えてあげましょうよ」
「あら、仕事を家庭に持ち込むのは厳禁よ。作るとしたら趣味の部屋ね」
「ソフィーさん、かっけー!」
盛り上がるソフィーとユートを呆然と見るギルドマスターの肩を、冒険者ががっしりと押さえました。
「これからも頼む。おじいちゃん」
「お、俺はまだ四十代だ~っ!」
発狂したように叫ぶギルドマスターの足元に、三つ子のうち黒っぽい毛の赤子が寄り掛かるように座りました。
「ぷゆ?」
「ああ~、クロたんは可愛いな~。よしよし、おじちゃんと遊ぼうな~」
どうやらこの家から人が減ることはなさそうです。
そして私も、家の精霊としての仕事を全うできそうです。
(どうかこの家で家族が愛と健康を育み、末永く幸せに暮らしますように)
私の百年ぶりの願いがやっと叶うかもしれません。
どうか彼らに、幸いがありますように。
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