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64.誰が一番強いのか? なんて試すまでも無かった-1
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先輩の聖剣を持たせて貰い、修練場の真ん中でバーナビー卿と対峙した。
「やはりユートには聖剣が持てるんだな。持ち主が信用しているからか?」
バーナビー卿の言葉に俺はカイト先輩の顔をじっと見つめた。
「確かにユートに対して好意はあるが、同じ異世界人だからかもしれないし……まだ理由はわかならいだろ」
弁解するようにカイト先輩はそう言ったが、過去の文献では聖剣は勇者以外の異世界人には使えなかったと書かれている。
だから異世界人同士が理由ではないと思うんだけどね。
それに使えると言っても勇者補正は掛かっていないので、身体強化を使ってもバーナビー卿の剣を受けるので精一杯だ。
俺がバーナビー卿の剣戟に弾き飛ばされて後ろに下がったあと、リッドが乱入してきて俺の手ごと聖剣を掴んでバーナビー卿の追い打ちを凌いだ。
そしてそのままスルリとリッドの手に剣が移り、俺は間合いから放り出されて二人だけの打ち合いが始まってしまう。
「相変わらずやることが無茶苦茶だな」
カイト先輩は呆れたようにそう言ったが、俺が怪我をしなくて良かったとも付け足した。
「なぁ、リッドにも聖剣が使えているって事は、先輩はリッドのことを信用しているのか?」
「……まだそうと決まった訳じゃないだろ。でも、あいつの事は認めてるよ」
先輩も素直じゃないなぁ。
「まあいいや。それよりバーナビー卿は結構強いんだな。しかも力で押してくるタイプだ」
「風の魔剣がそういう性質だしな。見ろよ、風って言うよりも圧を掛けてきやがる」
「ははぁ」
元々の馬鹿力に魔剣の風圧が加わって、バーナビー卿の一撃は相当に重い。
俺はこれでもなんとか上手く受け流していたから後ろに飛ばされるだけで済んだけど、まともに受け止めたら腕が痺れて使い物にならなくなっていただろう。
リッドがガッチリと斬り結べているのは、力負けしていないからだ。
「でもバーナビー卿が負けるのは時間の問題だね。何と言っても踏んできた実戦の数が違う。リッドの方が何枚も上だ」
力はほぼ互角でも、剣の技量と戦うスキルが圧倒的にリッドの方が上だった。素人の俺にだってわかる。
「あの男も相当に強い方なんだがな」
「聖剣を持った先輩でもバーナビー卿に勝てない?」
「全く相手にならない。A級にどれだけ手加減をされていたのか、悲しくなるな」
カイト先輩は自嘲気味にそう笑ったけれど、義務感から勇者をやっていた先輩と根っからの戦闘職じゃ比べる方が間違ってるって。
しかも先輩なんて鍛え始めてまだ一年弱だからな。
「あ、決着が付きそう。へぇ、リッドも汗を掻いてるじゃん」
軽く汗を拭うリッドの前で、バーナビー卿は片膝を地面に付いて荒い息を吐いていた。
「それ、でっ……聖剣、は……」
「使えなくはないが手に馴染まない。恐らく魔力が通らないんだろう」
「じゃあ、聖剣を使いこなせるのはやはり――」
「勇者だけだろうな。ユウも最後の一撃以外は攻撃が通らなかった可能性が高い」
「そう、か……やはり聖剣は勇者の加護なんだな」
面白い、と呟いてバーナビー卿が笑った。
それを見て先輩がつくづくと嫌そうな顔をする。
これで付き纏われる理由がまた増えたとでも思っているんだろう。
「ユウ、シャワーを浴びて戻ろう」
「え、俺は汗を掻いてないからいいよ」
「後ろに倒れて汚れただろう?」
「あ~、これくらい平気だけど……このあと、王子に会うしな。わかった、俺も行く。先輩は――」
「ついでだからカイトともやっていく」
もう立ち上がったバーナビー卿にそう言われ、先輩はブンブンと首を横に振っていたが俺はお手柔らかにと言うに留めた。だってバーナビー卿を止めるのは大変そうだし、どうせ捕まるなら逃げたって無駄だし? まあ、既にリッドと手合わせをした後だから、練習もそんなにハードでもないだろう。恐らく多分きっと。
俺は胸の中で先輩に向かってそっと合掌し、修練場に併設されているシャワールームにリッドと向かった。
「やはりユートには聖剣が持てるんだな。持ち主が信用しているからか?」
バーナビー卿の言葉に俺はカイト先輩の顔をじっと見つめた。
「確かにユートに対して好意はあるが、同じ異世界人だからかもしれないし……まだ理由はわかならいだろ」
弁解するようにカイト先輩はそう言ったが、過去の文献では聖剣は勇者以外の異世界人には使えなかったと書かれている。
だから異世界人同士が理由ではないと思うんだけどね。
それに使えると言っても勇者補正は掛かっていないので、身体強化を使ってもバーナビー卿の剣を受けるので精一杯だ。
俺がバーナビー卿の剣戟に弾き飛ばされて後ろに下がったあと、リッドが乱入してきて俺の手ごと聖剣を掴んでバーナビー卿の追い打ちを凌いだ。
そしてそのままスルリとリッドの手に剣が移り、俺は間合いから放り出されて二人だけの打ち合いが始まってしまう。
「相変わらずやることが無茶苦茶だな」
カイト先輩は呆れたようにそう言ったが、俺が怪我をしなくて良かったとも付け足した。
「なぁ、リッドにも聖剣が使えているって事は、先輩はリッドのことを信用しているのか?」
「……まだそうと決まった訳じゃないだろ。でも、あいつの事は認めてるよ」
先輩も素直じゃないなぁ。
「まあいいや。それよりバーナビー卿は結構強いんだな。しかも力で押してくるタイプだ」
「風の魔剣がそういう性質だしな。見ろよ、風って言うよりも圧を掛けてきやがる」
「ははぁ」
元々の馬鹿力に魔剣の風圧が加わって、バーナビー卿の一撃は相当に重い。
俺はこれでもなんとか上手く受け流していたから後ろに飛ばされるだけで済んだけど、まともに受け止めたら腕が痺れて使い物にならなくなっていただろう。
リッドがガッチリと斬り結べているのは、力負けしていないからだ。
「でもバーナビー卿が負けるのは時間の問題だね。何と言っても踏んできた実戦の数が違う。リッドの方が何枚も上だ」
力はほぼ互角でも、剣の技量と戦うスキルが圧倒的にリッドの方が上だった。素人の俺にだってわかる。
「あの男も相当に強い方なんだがな」
「聖剣を持った先輩でもバーナビー卿に勝てない?」
「全く相手にならない。A級にどれだけ手加減をされていたのか、悲しくなるな」
カイト先輩は自嘲気味にそう笑ったけれど、義務感から勇者をやっていた先輩と根っからの戦闘職じゃ比べる方が間違ってるって。
しかも先輩なんて鍛え始めてまだ一年弱だからな。
「あ、決着が付きそう。へぇ、リッドも汗を掻いてるじゃん」
軽く汗を拭うリッドの前で、バーナビー卿は片膝を地面に付いて荒い息を吐いていた。
「それ、でっ……聖剣、は……」
「使えなくはないが手に馴染まない。恐らく魔力が通らないんだろう」
「じゃあ、聖剣を使いこなせるのはやはり――」
「勇者だけだろうな。ユウも最後の一撃以外は攻撃が通らなかった可能性が高い」
「そう、か……やはり聖剣は勇者の加護なんだな」
面白い、と呟いてバーナビー卿が笑った。
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「え、俺は汗を掻いてないからいいよ」
「後ろに倒れて汚れただろう?」
「あ~、これくらい平気だけど……このあと、王子に会うしな。わかった、俺も行く。先輩は――」
「ついでだからカイトともやっていく」
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俺は胸の中で先輩に向かってそっと合掌し、修練場に併設されているシャワールームにリッドと向かった。
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