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60.たまには休暇も必要です-2(R-18)
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林の中にある宿は宿と言うよりもリゾートホテルみたいだった。
もしかして、遺跡って異世界人絡みなのか?
「さあな。そういう話は聞いていないが、遺跡を宿泊施設として使い始めたのは異世界人らしい」
「やっぱりね。ウェルカムドリンクとか発想が異世界人っぽいもん」
俺は元の世界で南国に旅した事があるが、その時に泊ったホテルと受ける印象が似ている。
スタッフがアロハっぽいシャツを着ているのも、掃除用具を手にうろついているのもいかにもそれっぽい。
「今日はここの敷地内を見て回って、遺跡に行くのは明日でもいいか?」
「構わない。夕食の時間にシタールの演奏もあると聞いた」
おお、楽器がある事は知っていたけど、ちゃんと聴くのは初めてかもしれない。
折角異世界に来たのに、俺はこの世界のほんの一面しか知らなかったんだと改めて実感する。やっぱり外には出てみるべきだよ。うん。
部屋に案内され、ベッドに天井から布が張られている事にも中庭と専用風呂が付いている事にも感嘆する。
女の人が身支度をするような、でっかい鏡が付いているのも高級感があって良い。
「おっ、見ろよ。アメニティもある!」
「あめにてぃ?」
「快適に過ごせる宿の設備品。イイ匂いのする石鹸とか、使い捨ての歯ブラシなんかが置いてある事が多いな。ここはふわふわのタオルとオイル? ああ、オイルは使い途が多いからな」
こちらの世界では整髪料や美容クリーム代わりに、或いは武器の手入れなんかにも広くオイルが利用されている。
用途によって品質に違いはあるけど、最高級品は全てに使用できるので冒険者なんかは必ず一瓶は持ち歩いている。
俺は冒険者じゃないけど、出掛ける機会が多いのでちゃんと一つは持っている。
「ん~、レモンみたいな匂いがする。あとバニラミント? 清涼感があって使いやすそう。こっちのは女性がターゲットなのか甘い匂いがする」
俺が三種類のオイルをクンクンと嗅いでいたら肩の後ろから手が伸びて来て、俺の手のひらごとリッドの馬鹿でかい手が包み込んだ。
「甘い匂いは麝香とアンバーだ」
「ん? 聞いた事があるな。それって――」
「その気にさせたい時の匂いだ。薬屋で売られている軟膏ほどじゃないが、媚薬効果もある」
「……カップル向けかよぅ」
そう言えばベッドも巨大だけど一つしかないし、もしかしてこの部屋ってハネムーンスイートみたいな感じ?
「リッド、予約の手配をしたのはギルドの駐在員だろう? お前、駐在員に俺たちの事をなんて説明したんだ?」
「それは勿論、愛を誓ったばかりの恋人同士だと言ったが?」
何か問題が? みたいな顔をされて俺は手のひらに顔を伏せる。
こちらは割と性に関してオープンだし同性同士に対する忌避感も少ないが、やはり男同士は珍しい。
それがリッドのような有名な冒険者が堂々と俺を連れ歩いているのだから、妙に生温い目で見られる訳だよ。
「リッド、そういう事はわざわざ言わなくていいんだ。別に隠す必要はないけど、言うと変な気遣いをされるだろ」
「嫌か?」
「嫌じゃ、ないけど……」
「俺は恥ずかしくないし、人にもそういう扱いをして欲しい」
手のひらを包み込んでいた手が俺を引き寄せ、そのままするりと抱き締められて後ろからすっぽりと包み込まれる。
(俺だってリッドのパートナーだと思われる事は嬉しいけどさ)
でもリッドと違って俺は可愛がられる方なので、やっぱり人目が気になる。
「俺が、オイルを使われる方って思われるのがやなんだよ……」
「んん? お前の可愛いところなど誰にも見せないが?」
「可愛くないし、実際に見られなくても想像されるのが恥ずかしいんだ!」
リッドにはきっとわからない気持ちだと思うけど、人にどう思われるのか俺は気になる。
「しかしお前を見た奴の目を一々刳り抜く訳にはいかないし、脳みそを抉り出す訳にもいかないからな」
「怖えぇよ! 誰がそんな事をしろって言ったよ!」
「違うのか? 不埒な輩には必要な処置だと思うんだが」
真顔で検討するリッドを見ていると、俺が諦めるしかないんだなと思う。
「ああもうわかった。知られてるならいいよ、好きにしてくれ」
そう言ったら顎を掬い取るように上を向かされ、覆い被さるように口付けられた。
そしてそのまま昼間っからひん剥かれて膝に乗せられた。
「……あんたはいいの?」
膝の上で後ろをぬくぬくと弄られながら訊ねる。
「お前が気持ちよさそうに喉を鳴らしているだけで満足だ」
そりゃあ、喉も鳴らすだろう。
羽根でくすぐるようにやわやわとあちこちを触られ、指をゆっくりと出し入れされて俺はただただ心地好いんだから。
「ユウがこうして裸体を晒し、自由に寛ぐ姿を見られるならこの建物ごと買い上げてもいい」
「でっかい檻だな。お前の発想は基本的におかしいんだよ。でも休暇中くらいは閉じ込められてやる」
そう囁くと俺はリッドの腹に分身を擦り付けた。
目を瞑ってニャアニャアと鳴いたら後ろを穿つ指が速くなったので、そのまま気持ちよく前と後ろでイッた。
それから夜の準備の為に自ら後ろに丸薬を仕込む。
「これが全部溶けたら、あんたも気持ちよくしてやるよ」
そう言って俺はリッドの腕を逃れ、部屋の探索に戻った。
もしかして、遺跡って異世界人絡みなのか?
「さあな。そういう話は聞いていないが、遺跡を宿泊施設として使い始めたのは異世界人らしい」
「やっぱりね。ウェルカムドリンクとか発想が異世界人っぽいもん」
俺は元の世界で南国に旅した事があるが、その時に泊ったホテルと受ける印象が似ている。
スタッフがアロハっぽいシャツを着ているのも、掃除用具を手にうろついているのもいかにもそれっぽい。
「今日はここの敷地内を見て回って、遺跡に行くのは明日でもいいか?」
「構わない。夕食の時間にシタールの演奏もあると聞いた」
おお、楽器がある事は知っていたけど、ちゃんと聴くのは初めてかもしれない。
折角異世界に来たのに、俺はこの世界のほんの一面しか知らなかったんだと改めて実感する。やっぱり外には出てみるべきだよ。うん。
部屋に案内され、ベッドに天井から布が張られている事にも中庭と専用風呂が付いている事にも感嘆する。
女の人が身支度をするような、でっかい鏡が付いているのも高級感があって良い。
「おっ、見ろよ。アメニティもある!」
「あめにてぃ?」
「快適に過ごせる宿の設備品。イイ匂いのする石鹸とか、使い捨ての歯ブラシなんかが置いてある事が多いな。ここはふわふわのタオルとオイル? ああ、オイルは使い途が多いからな」
こちらの世界では整髪料や美容クリーム代わりに、或いは武器の手入れなんかにも広くオイルが利用されている。
用途によって品質に違いはあるけど、最高級品は全てに使用できるので冒険者なんかは必ず一瓶は持ち歩いている。
俺は冒険者じゃないけど、出掛ける機会が多いのでちゃんと一つは持っている。
「ん~、レモンみたいな匂いがする。あとバニラミント? 清涼感があって使いやすそう。こっちのは女性がターゲットなのか甘い匂いがする」
俺が三種類のオイルをクンクンと嗅いでいたら肩の後ろから手が伸びて来て、俺の手のひらごとリッドの馬鹿でかい手が包み込んだ。
「甘い匂いは麝香とアンバーだ」
「ん? 聞いた事があるな。それって――」
「その気にさせたい時の匂いだ。薬屋で売られている軟膏ほどじゃないが、媚薬効果もある」
「……カップル向けかよぅ」
そう言えばベッドも巨大だけど一つしかないし、もしかしてこの部屋ってハネムーンスイートみたいな感じ?
「リッド、予約の手配をしたのはギルドの駐在員だろう? お前、駐在員に俺たちの事をなんて説明したんだ?」
「それは勿論、愛を誓ったばかりの恋人同士だと言ったが?」
何か問題が? みたいな顔をされて俺は手のひらに顔を伏せる。
こちらは割と性に関してオープンだし同性同士に対する忌避感も少ないが、やはり男同士は珍しい。
それがリッドのような有名な冒険者が堂々と俺を連れ歩いているのだから、妙に生温い目で見られる訳だよ。
「リッド、そういう事はわざわざ言わなくていいんだ。別に隠す必要はないけど、言うと変な気遣いをされるだろ」
「嫌か?」
「嫌じゃ、ないけど……」
「俺は恥ずかしくないし、人にもそういう扱いをして欲しい」
手のひらを包み込んでいた手が俺を引き寄せ、そのままするりと抱き締められて後ろからすっぽりと包み込まれる。
(俺だってリッドのパートナーだと思われる事は嬉しいけどさ)
でもリッドと違って俺は可愛がられる方なので、やっぱり人目が気になる。
「俺が、オイルを使われる方って思われるのがやなんだよ……」
「んん? お前の可愛いところなど誰にも見せないが?」
「可愛くないし、実際に見られなくても想像されるのが恥ずかしいんだ!」
リッドにはきっとわからない気持ちだと思うけど、人にどう思われるのか俺は気になる。
「しかしお前を見た奴の目を一々刳り抜く訳にはいかないし、脳みそを抉り出す訳にもいかないからな」
「怖えぇよ! 誰がそんな事をしろって言ったよ!」
「違うのか? 不埒な輩には必要な処置だと思うんだが」
真顔で検討するリッドを見ていると、俺が諦めるしかないんだなと思う。
「ああもうわかった。知られてるならいいよ、好きにしてくれ」
そう言ったら顎を掬い取るように上を向かされ、覆い被さるように口付けられた。
そしてそのまま昼間っからひん剥かれて膝に乗せられた。
「……あんたはいいの?」
膝の上で後ろをぬくぬくと弄られながら訊ねる。
「お前が気持ちよさそうに喉を鳴らしているだけで満足だ」
そりゃあ、喉も鳴らすだろう。
羽根でくすぐるようにやわやわとあちこちを触られ、指をゆっくりと出し入れされて俺はただただ心地好いんだから。
「ユウがこうして裸体を晒し、自由に寛ぐ姿を見られるならこの建物ごと買い上げてもいい」
「でっかい檻だな。お前の発想は基本的におかしいんだよ。でも休暇中くらいは閉じ込められてやる」
そう囁くと俺はリッドの腹に分身を擦り付けた。
目を瞑ってニャアニャアと鳴いたら後ろを穿つ指が速くなったので、そのまま気持ちよく前と後ろでイッた。
それから夜の準備の為に自ら後ろに丸薬を仕込む。
「これが全部溶けたら、あんたも気持ちよくしてやるよ」
そう言って俺はリッドの腕を逃れ、部屋の探索に戻った。
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