118 / 181
53.双子に気に入られた俺と呪いを解く方法-2
しおりを挟む
「罪滅ぼしという訳ではありませんが、呪いを解く鍵を差し上げましょう」
「呪いを解く鍵? なんで姫がそんなものを?」
この人は魔物にも魔法にも詳しくない筈だ。
都合が良すぎる、と怪しむ俺に姫が扇を差し向けた。
「わたくしは魔法に詳しくありません。ですがお子たちは王家の血を引いております。王家の初代は異世界勇者でした。ですから稀に魔力量の多い者が生まれますし、様々な話が言い伝えられているのです」
「それって――」
「本来なら王族しか知ることは出来ません。ですがユートには必要な部分を教えて差し上げるように手配しましょう」
う~ん、つまりはエーリリテ姫が骨を折ってくれるという事か。
「ありがたく甘えさせて頂きます。あ、ところで建国の初代が異世界人で問題にならなかったんですか?」
「ええ、当時も揉めは致しましたが、王配として受け入れられたそうです」
王配って、確か女王の配偶者のことだよね? そうか、王様にはなれなくてもお婿さんにはなれた訳だ。
「ユートも王家に名を連ねたいですか?」
扇の影でしなを作って言われて、俺はブルブルと首を横に振った。
冗談じゃない。目が全く笑ってないっての。
「そんな疑いを掛けられるんなら、教えて貰わなくていいです!」
「フフッ、ほんの戯言ですよ」
よく言うよ。悪い人じゃないんだろうけど、やっぱりお貴族様はたちが悪い。
俺は大それた野望は抱いていないからと何度も念を押し、脚に縋り付いてくるお子たちをなんとか引き剥がして部屋を後にした。
***
「……ユウ。お前、涎臭いな」
律儀に扉の外で待っていたリッドに開口一番でそう言われ、俺は袖で頬を擦りながら仕方がないだろうと言った。
「これでも頑張って避けたんだぜ? カゲボウシにも気を逸らすのを手伝って貰ってさ。あの双子、俺のことが好き過ぎだろう」
本当に魔力の所為かどうかはわからないけど、双子は最初から最後まで俺に付き纏っていた。
「全く、お前を閉じ込めておける檻はないものか」
「お前、前にもその台詞を言っただろう」
「……思い出したのか?」
「いいや、ただの勘」
いやに実感が籠っていたのでそんな事だろうと思ったよ。
俺は部屋に戻ってから、エーリリテ姫との会話の内容をリッドに伝えた。
「王家の言い伝えか……。噂は前からあったが、全く流出しないのでお伽噺の類いだろうと思われていた」
「いや、そうかもしれねぇよ? 風化して、形骸化しちまってんのかも」
「そうだな。話を聞いてみなくてはなんとも言えない」
「あ~、こんなことならミレイユさんに来て貰えば良かったかな」
「A級魔法使いがいたら、言い出さなかっただろう」
「そっか。そうかもな」
王家の秘伝は流出しては困るだろうし、研究されても困るだろう。
きっと冒険者ギルドや他国に対してのカードの一つだろうからな。
「お前に話すにも、何らかの安全対策は取られるだろう」
「それは仕方がない。多少の事は受け入れるさ」
何のリスクもなしに手に入るものなんてない。
昔の俺ならちょっとでも困難があったら諦めてしまっただろうけど、今は方法があるだけラッキーだと思う。手掛かりがあるだけ恵まれている。
「ユウ、思い出さなくても俺の気持ちは変わらないぞ?」
俺の頬を掌で包みながらそう言ったリッドに、俺は微笑みながら知っていると答える。
「知ってるよ。お前は忘れられたくらいじゃ俺を諦めない」
「そうだ」
「でも俺が思い出したいんだ。記憶がなくてもあんたの事は好きだけど、どんな風にあんたの事を受け入れたのかを知りたい。俺は今の俺の気持ちはわかるけど、昔の俺が何を思っていたのかは知らないだろ? それは誰に聞いても――例えあんたにだってわからない。そのまま葬り去っちまったら、無かったことにされたら哀しいじゃないか」
俺がどんな気持ちであんたに御守りを渡したのか、悪魔に記憶を奪われたままになんかしておけるかよ。
俺にはそれを知る権利があるんだ。絶対に取り戻して見せる。
「ユウ、無理はするな」
そう言いながらリッドの瞳に渇望の色が浮かぶのを見つけた。
「あんた、俺に思い出して欲しい約束でもあるのか?」
「いや、そんなものはない」
「嘘だな」
俺は一言で切り捨てた。そうしたらリッドが歯切れ悪く弁明してきた。
「約束はしていない。ただ夢を語っただけだ」
「いい夢?」
「俺には思い付かないような甘い夢だ」
そう言って妙に儚く笑うリッドを見て、俺は絶対にその夢を叶えてやろうと決めた。
意地でも思い出して、リッドに見させた甘い夢とやらを叶えてやるっ!
「リッド、首を洗って待ってろよ? お前の夢は俺が叶えてやる」
「首を洗えとは、斬首刑の宣告じゃなかったか?」
「異世界じゃ違うんだよ」
俺は自信満々にそう答えて、リッドの首にするりと腕を回した。
「呪いを解く鍵? なんで姫がそんなものを?」
この人は魔物にも魔法にも詳しくない筈だ。
都合が良すぎる、と怪しむ俺に姫が扇を差し向けた。
「わたくしは魔法に詳しくありません。ですがお子たちは王家の血を引いております。王家の初代は異世界勇者でした。ですから稀に魔力量の多い者が生まれますし、様々な話が言い伝えられているのです」
「それって――」
「本来なら王族しか知ることは出来ません。ですがユートには必要な部分を教えて差し上げるように手配しましょう」
う~ん、つまりはエーリリテ姫が骨を折ってくれるという事か。
「ありがたく甘えさせて頂きます。あ、ところで建国の初代が異世界人で問題にならなかったんですか?」
「ええ、当時も揉めは致しましたが、王配として受け入れられたそうです」
王配って、確か女王の配偶者のことだよね? そうか、王様にはなれなくてもお婿さんにはなれた訳だ。
「ユートも王家に名を連ねたいですか?」
扇の影でしなを作って言われて、俺はブルブルと首を横に振った。
冗談じゃない。目が全く笑ってないっての。
「そんな疑いを掛けられるんなら、教えて貰わなくていいです!」
「フフッ、ほんの戯言ですよ」
よく言うよ。悪い人じゃないんだろうけど、やっぱりお貴族様はたちが悪い。
俺は大それた野望は抱いていないからと何度も念を押し、脚に縋り付いてくるお子たちをなんとか引き剥がして部屋を後にした。
***
「……ユウ。お前、涎臭いな」
律儀に扉の外で待っていたリッドに開口一番でそう言われ、俺は袖で頬を擦りながら仕方がないだろうと言った。
「これでも頑張って避けたんだぜ? カゲボウシにも気を逸らすのを手伝って貰ってさ。あの双子、俺のことが好き過ぎだろう」
本当に魔力の所為かどうかはわからないけど、双子は最初から最後まで俺に付き纏っていた。
「全く、お前を閉じ込めておける檻はないものか」
「お前、前にもその台詞を言っただろう」
「……思い出したのか?」
「いいや、ただの勘」
いやに実感が籠っていたのでそんな事だろうと思ったよ。
俺は部屋に戻ってから、エーリリテ姫との会話の内容をリッドに伝えた。
「王家の言い伝えか……。噂は前からあったが、全く流出しないのでお伽噺の類いだろうと思われていた」
「いや、そうかもしれねぇよ? 風化して、形骸化しちまってんのかも」
「そうだな。話を聞いてみなくてはなんとも言えない」
「あ~、こんなことならミレイユさんに来て貰えば良かったかな」
「A級魔法使いがいたら、言い出さなかっただろう」
「そっか。そうかもな」
王家の秘伝は流出しては困るだろうし、研究されても困るだろう。
きっと冒険者ギルドや他国に対してのカードの一つだろうからな。
「お前に話すにも、何らかの安全対策は取られるだろう」
「それは仕方がない。多少の事は受け入れるさ」
何のリスクもなしに手に入るものなんてない。
昔の俺ならちょっとでも困難があったら諦めてしまっただろうけど、今は方法があるだけラッキーだと思う。手掛かりがあるだけ恵まれている。
「ユウ、思い出さなくても俺の気持ちは変わらないぞ?」
俺の頬を掌で包みながらそう言ったリッドに、俺は微笑みながら知っていると答える。
「知ってるよ。お前は忘れられたくらいじゃ俺を諦めない」
「そうだ」
「でも俺が思い出したいんだ。記憶がなくてもあんたの事は好きだけど、どんな風にあんたの事を受け入れたのかを知りたい。俺は今の俺の気持ちはわかるけど、昔の俺が何を思っていたのかは知らないだろ? それは誰に聞いても――例えあんたにだってわからない。そのまま葬り去っちまったら、無かったことにされたら哀しいじゃないか」
俺がどんな気持ちであんたに御守りを渡したのか、悪魔に記憶を奪われたままになんかしておけるかよ。
俺にはそれを知る権利があるんだ。絶対に取り戻して見せる。
「ユウ、無理はするな」
そう言いながらリッドの瞳に渇望の色が浮かぶのを見つけた。
「あんた、俺に思い出して欲しい約束でもあるのか?」
「いや、そんなものはない」
「嘘だな」
俺は一言で切り捨てた。そうしたらリッドが歯切れ悪く弁明してきた。
「約束はしていない。ただ夢を語っただけだ」
「いい夢?」
「俺には思い付かないような甘い夢だ」
そう言って妙に儚く笑うリッドを見て、俺は絶対にその夢を叶えてやろうと決めた。
意地でも思い出して、リッドに見させた甘い夢とやらを叶えてやるっ!
「リッド、首を洗って待ってろよ? お前の夢は俺が叶えてやる」
「首を洗えとは、斬首刑の宣告じゃなかったか?」
「異世界じゃ違うんだよ」
俺は自信満々にそう答えて、リッドの首にするりと腕を回した。
21
お気に入りに追加
1,959
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
同僚がヴァンパイア体質だった件について
真衣 優夢
BL
「僕はヴァンパイア体質なんだ。基本は人間なんだけどね」
朝霧令一は、私立アヤザワ高校の生物教師。
人付き合い朝霧が少し気を許すのは、同い年の国語教師、小宮山桐生だった。
桐生がカミングアウトしたのは、ヴァンパイア体質という、特殊な人間の存在。
穏やかで誰にでも優しく、教師の鑑のような桐生にコンプレックスを抱きながらも、数少ない友人として接していたある日。
宿直の夜、朝霧は、桐生の秘密を目撃してしまう。
桐生(ヴァンパイア体質)×朝霧(人間)です。
ヘタレ攻に見せかけて、ここぞという時や怒りで(受ではなく怒った相手に)豹変する獣攻。
無愛想の俺様受に見せかけて、恋愛経験ゼロで初心で必死の努力家で勢い任せの猪突猛進受です。
攻身長189cm、受身長171cmです。
穏やか笑顔攻×無愛想受です。
リアル教師っぽい年齢設定にしたので、年齢高すぎ!と思った方は、脳内で25歳くらいに修正お願いいたします…。
できるだけ男同士の恋愛は男っぽく書きたい、と思っています。
頑張ります…!
時にコミカルに、時に切なく、時にシリアスな二人の物語を、あなたへ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる