26 / 181
⑩見えないからってそこに無い訳ではない-3
しおりを挟む
「悪い、やり過ぎた」
「急にどうした――」
俺は自分の格好を改めて見下ろして真っ青になった。
どう見たってヤッた後じゃねえかよっ!
「リッド、てめぇ――」
「本当に悪かった。反省しているから着替えて来てくれ」
「……チッ!」
俺は思い切り舌を鳴らしてから着替えを持って風呂場に駆け込んだ。
この世界に家庭用の風呂が普及していて本当に良かったぜ。
(こっちは……このままじゃ治まりそうにねえな)
可哀想にリッドに貶されて放置された俺の息子はそれでも芯を失っていない。
俺は手早く解放してから全てを水に流した。
言っておくけど、リッドの悪ふざけは水に流してやらないからな?
俺に分からせる為だったとしても、流石にこれはやり過ぎだ。
(さてどんな報復をしてやろう?)
そう思いつつも、俺はこの家を出て行くという選択肢は全く考えていない事に気付いてなかった。
あれだけの事をされても出て行ってやろうなんて微塵も思っていないのだった。
そして――。
「反省したか?」
俺はリッドに三日ぶりに声を掛けてやり、存在を無視するという罰に少しは効果があったかと聞いた。
「した。したから俺を見えないフリなんてしないでくれ」
捨て犬のような目で見られて俺は噴き出しそうになったのを寸でで堪えた。
肉食獣みたいに光っていなければ金色の瞳もなかなか可愛い。
けれど俺が優位だったのはそこまでで、三日も無視されてすっかり拗ねてしまったリッドは俺がリッドに優しくしてやらないと、あの時に見てしまった可愛らしいモノを忘れてやらないと言い出しやがった。
「てめ、俺を脅す気か!」
「反省した褒美でもいい」
こいつは本当に図々しいな、と思いつつどれだけ声を掛けられても完璧に黙殺した俺の所業もちょっと酷かったと思うのでここは折れてやる事にした。
「優しくって、どうしたらいいんだ?」
「ユウからキスをしてくれ」
俺からキス。
こいつは本当に図々しい。
「屈んで目を閉じろ」
俺はリッドに膝を付かせ、強過ぎる視線を瞑って貰う事で遮ってその顔をまじまじと見た。
意外と整ってるんだよな。
どうしても強面のイメージが強いが、少しだけ垂れ下がった目尻も笑うと皴の寄る口元も良く見れば愛嬌があるし長い睫毛は色っぽかった。
鼻もスッと通っているし唇の形もいい。
金も地位も持ってるんだから、俺なんかにちょっかいを出さなくても幾らでも女が寄って来るだろうに。
変わった奴だよな。
そう思っていたらいつまでもアクションがない事に焦れたのか、リッドが口を尖らせてまだかと言って来た。
俺はその待ちきれない様子がちょっと可愛くなって、唇の端に口を押し当ててからスーッと横になぞった。
何度も輪郭を唇でなぞっていたら焦れったくなったのか、口をグワッと開けて噛み付いてきやがった。
「ンッ……」
口腔内を舐られながら、俺は見えない事と見られない事のどっちが辛いだろうかと考えた。
「ユウト、考え事か?」
「怒んなよ。ちょっとあんたに見て貰えないのは寂しいなって思ってた」
「……煽るな。久し振りで抑えが利かない」
「抑えろよ。獣じゃないんだから」
「無理だ」
あっさりと理性を放棄したリッドに悪態を吐いてから目を閉じて口付けに集中する。
見て貰えないのは寂しいけれど、俺を目にした時のリッドのあの面が見れなくなる方が辛いなと思った。
「やっぱり、あんたの姿を見られない方がつまんない」
「だから煽るなっ!」
ガーッと牙を剥かれて俺は笑った。
最初は図体が怖くてそれを隠す為にかニヤニヤしてるだけの男だったけれど、今は慌てたり拗ねたり柔らかくほほ笑む顔を知っている。
鬼みたいに強い癖に、意外と可愛い所があるのも知った。
「リッド、やっぱり俺は優しくするよりされる方がいい」
「ユウ、お前こそ抑える気が無いな?」
「うん。だってリッドの事を信用してるからな」
「……狡い奴だ」
溜め息を吐いたリッドに腹いせのように噛み付かれて俺は悲鳴をあげた。
「急にどうした――」
俺は自分の格好を改めて見下ろして真っ青になった。
どう見たってヤッた後じゃねえかよっ!
「リッド、てめぇ――」
「本当に悪かった。反省しているから着替えて来てくれ」
「……チッ!」
俺は思い切り舌を鳴らしてから着替えを持って風呂場に駆け込んだ。
この世界に家庭用の風呂が普及していて本当に良かったぜ。
(こっちは……このままじゃ治まりそうにねえな)
可哀想にリッドに貶されて放置された俺の息子はそれでも芯を失っていない。
俺は手早く解放してから全てを水に流した。
言っておくけど、リッドの悪ふざけは水に流してやらないからな?
俺に分からせる為だったとしても、流石にこれはやり過ぎだ。
(さてどんな報復をしてやろう?)
そう思いつつも、俺はこの家を出て行くという選択肢は全く考えていない事に気付いてなかった。
あれだけの事をされても出て行ってやろうなんて微塵も思っていないのだった。
そして――。
「反省したか?」
俺はリッドに三日ぶりに声を掛けてやり、存在を無視するという罰に少しは効果があったかと聞いた。
「した。したから俺を見えないフリなんてしないでくれ」
捨て犬のような目で見られて俺は噴き出しそうになったのを寸でで堪えた。
肉食獣みたいに光っていなければ金色の瞳もなかなか可愛い。
けれど俺が優位だったのはそこまでで、三日も無視されてすっかり拗ねてしまったリッドは俺がリッドに優しくしてやらないと、あの時に見てしまった可愛らしいモノを忘れてやらないと言い出しやがった。
「てめ、俺を脅す気か!」
「反省した褒美でもいい」
こいつは本当に図々しいな、と思いつつどれだけ声を掛けられても完璧に黙殺した俺の所業もちょっと酷かったと思うのでここは折れてやる事にした。
「優しくって、どうしたらいいんだ?」
「ユウからキスをしてくれ」
俺からキス。
こいつは本当に図々しい。
「屈んで目を閉じろ」
俺はリッドに膝を付かせ、強過ぎる視線を瞑って貰う事で遮ってその顔をまじまじと見た。
意外と整ってるんだよな。
どうしても強面のイメージが強いが、少しだけ垂れ下がった目尻も笑うと皴の寄る口元も良く見れば愛嬌があるし長い睫毛は色っぽかった。
鼻もスッと通っているし唇の形もいい。
金も地位も持ってるんだから、俺なんかにちょっかいを出さなくても幾らでも女が寄って来るだろうに。
変わった奴だよな。
そう思っていたらいつまでもアクションがない事に焦れたのか、リッドが口を尖らせてまだかと言って来た。
俺はその待ちきれない様子がちょっと可愛くなって、唇の端に口を押し当ててからスーッと横になぞった。
何度も輪郭を唇でなぞっていたら焦れったくなったのか、口をグワッと開けて噛み付いてきやがった。
「ンッ……」
口腔内を舐られながら、俺は見えない事と見られない事のどっちが辛いだろうかと考えた。
「ユウト、考え事か?」
「怒んなよ。ちょっとあんたに見て貰えないのは寂しいなって思ってた」
「……煽るな。久し振りで抑えが利かない」
「抑えろよ。獣じゃないんだから」
「無理だ」
あっさりと理性を放棄したリッドに悪態を吐いてから目を閉じて口付けに集中する。
見て貰えないのは寂しいけれど、俺を目にした時のリッドのあの面が見れなくなる方が辛いなと思った。
「やっぱり、あんたの姿を見られない方がつまんない」
「だから煽るなっ!」
ガーッと牙を剥かれて俺は笑った。
最初は図体が怖くてそれを隠す為にかニヤニヤしてるだけの男だったけれど、今は慌てたり拗ねたり柔らかくほほ笑む顔を知っている。
鬼みたいに強い癖に、意外と可愛い所があるのも知った。
「リッド、やっぱり俺は優しくするよりされる方がいい」
「ユウ、お前こそ抑える気が無いな?」
「うん。だってリッドの事を信用してるからな」
「……狡い奴だ」
溜め息を吐いたリッドに腹いせのように噛み付かれて俺は悲鳴をあげた。
37
お気に入りに追加
1,959
あなたにおすすめの小説
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
転生したらいつの間にかフェンリルになってた〜しかも美醜逆転だったみたいだけど俺には全く関係ない〜
春色悠
BL
俺、人間だった筈だけなんだけどなぁ………。ルイスは自分の腹に顔を埋めて眠る主を見ながら考える。ルイスの種族は今、フェンリルであった。
人間として転生したはずが、いつの間にかフェンリルになってしまったルイス。
その後なんやかんやで、ラインハルトと呼ばれる人間に拾われ、暮らしていくうちにフェンリルも悪くないなと思い始めた。
そんな時、この世界の価値観と自分の価値観がズレている事に気づく。
最終的に人間に戻ります。同性婚や男性妊娠も出来る世界ですが、基本的にR展開は無い予定です。
美醜逆転+髪の毛と瞳の色で美醜が決まる世界です。
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる