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魔道士団長と第一王子

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 これはこれは……今1番会いたくないやつが来るとは。

 内心苦笑を浮かべつつ、シャルルは立ち止まって腰を折った。

「ヴォロワ魔道士団長。此度は迅速な対応をして頂きありがとうございました。報せを受けたときは肝を冷やしましたが、ヴォロワ魔道士団長のおかげでパトリシアも特に問題はないと聞き、安心しましたよ」

 まだ婚約すらしていないくせに、もう自分のもの扱いか。

 友好的な笑顔を浮かべるロシュディの目の奥に牽制の色がチラついているのを見ながら、シャルルは愛想良く微笑んでみせた。

「いえ、私は隊を率いる者として当然のことをしたまでです。それでは探索隊の編成会議がありますので、失礼させていただきます」

 本当は時間的余裕はまだまだあるのだが、一刻も早く立ち去りたかったシャルルは軽く会釈するとロシュディの横を通り過ぎた。

「ヴォロワ魔道士団長」

 ドアノブに手をかけたときに名前を呼ばれ、シャルルは動きを止めて顔をそちらに向けた。

「養子縁組のお返事はそろそろ頂けそうですか?」

 ゆっくりと目を細めてにこりと口元を笑みの形にしたロシュディに、シャルルは一瞬表情を消した。

 私が意図的にその話を止めていたことに気がついたか。もしくは最初から知っていたか。

 養子縁組の件をヴォロワ公爵家の現在の家長である兄に伝える役目を負っていたシャルルだが、すぐには伝えず根回しをして公爵家に話が伝わることも避けてきた。

 その話を今するということは、状況を知った上で泳がされていたということだ。

 さすが王族。いい性格をしている。


「ええ。それでは、失礼」

 涼しい顔でそれだけ言うとシャルルは部屋を出て行った。
 足音が遠のくまでドアを見ていたロシュディは肩の力を抜いた。

 パトリシアに好意を抱いているというのは本当だったようだな。

 短く溜息をつく。
 パトリシアが寝かされているベッドに歩み寄るとその傍らに座ってパトリシアの顔を見つめた。

「キミを狙う輩が多くて大変だよ、パトリシア」

 思わず苦笑をもらす。

 今日もパトリシアの件で他国からの問い合わせの手紙が何通かあった。
 その中には面会希望の旨が書かれたものもあり、断わりの言い訳を考えるのもそろそろ飽きてきた。
 居所を探られ拉致される危険もあるので下手なことは言えないし、有耶無耶にしてしまうと相手を怒らせてしまう可能性もある。

「先に子どもを作ってしまおうか」

 冗談めいた言い方をしつつ、ロシュディは初めてパトリシアを抱いた日のことを思い出した。
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